■2011年行政書士試験・民法第7問(不法行為)

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■事務管理(2011−33)【判例、条文知識問題】

Aの隣人であるBは、Aの不在の間に台風によってA所有の甲建物(以下、「甲」という。)の屋根が損傷したため修繕を行った。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、強風に煽られて屋根から落下してしまい、受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができない。

2) Bは、Aから不在中における甲の管理を頼まれていたために修繕を行ったが、屋根から下りる際にBの不注意により足を滑らせて転倒し受傷した。この場合に、Bは、Aに対して損害賠償を請求することができる。

3) Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、Aのために修繕を行ったが、それがAにとって有益であるときは、Bは、Aに対して報酬を請求することができる。

4) Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせた。このようなBの行為は、Aのための事務管理にあたるから、これによりCは、Aに対して工事代金の支払いを直接に請求することができる。

5) Bは、Aからあらかじめ甲の管理を頼まれていなかったにもかかわらず、工務店を営むCに修繕を請け負わせたが、実はAがCによる修繕を望んでいないことが後になって判明した。このような場合、甲にとって必要不可欠な修繕であっても、Bは、Aに対してその費用の支払いを請求することができない。

■解説

【難易度】普通。

1) 正しい。管理者が管理にあたり過失なくしてこうむった損害については、本人に賠償請求できないと解されている(650条3項と比較せよ)。藤岡−磯村−浦河−松本他『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)388頁。

2) 誤り。この場合、自己の過失で足を滑らせた、というのであるから、受任者Bは委任者Aに損害賠償請求をできない(650条3項)。なお本肢は、事務管理ではなく準委任の事案である。民法は「事実行為」の委任を準委任として、「法律行為の委任」(643条)についての規定を準用している(656条)。前掲藤岡他182頁。

3) 誤り。事務管理者に報酬請求権はない。前掲藤原他383頁。但しこの場合、本人は管理者が支出した有益費の償還義務を負う(702条1項)。前掲藤岡他387頁。

4) 誤り。この場合、Bが「自己の名」でCに修繕を請け負わせたか、それとも「Aの名」で請け負わせたか、2通りの場合を考え得るが、前者では請負の効果はBに帰属するし、後者の場合は無権代理となる。原則どちらにしろAに工事請負契約の効果は帰属しないので、CはAに工事代金の支払いを直接求めることはできない。但し後者の場合、表見代理が成立するか、無権代理をAが追認すれば、CはAへの直接的な請求をなし得るが、本肢からはそこまでの記述は読み取れない。最判昭和36年11月30日。前掲藤岡他389頁。 。

5) 誤り。この場合、Aが「現に利益を受けている限度において」その費用を償還できる(702条3項)。前掲藤岡他388頁。