■2011年行政書士試験・憲法第3問

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■性表現と表現の自由(2011−5)【理論問題】

写真家Aが自らの作品集をある出版社から発売したところ、これに収録された作品のいくつかが刑法175条にいう「わいせつ」な図画に該当するとして、検察官によって起訴された。自分が無罪であることを確信するAは、裁判の場で自らの口から「表現の自由」を主張できるように、慌てて憲法の勉強を始め、努力の甲斐あって次の1)−5)のような考え方が存在することを知ることができた。このうち、本件の事案において主張するものとして、最も適しない考え方はどれか。

1) わいせつ表現についても、表現の自由の価値に比重を置いてわいせつの定義を厳格にしぼり、規制が及ぶ範囲をできるだけ限定していく必要がある。

2) 表現の自由は「公共の福祉」によって制約されると考える場合であっても、これは他人の人権との矛盾・衝突を調整するための内在的制約と解すべきである。

3) 憲法21条2項前段が「検閲の禁止」を定めているように、表現活動の事前抑制は原則として憲法上許されない。

4) 表現の自由に対する規制が過度に広汎な場合には、当事者は、仮想の第三者に法令が適用されたときに違憲となりうることを理由に、法令全体の違憲性を主張できる。

5) 文書の芸術的・思想的価値と、文書によって生じる法的利益の侵害とを衡量して、前者の重要性が後者を上回るときにまで刑罰を科するのは違憲である。

■解説

【難易度】難しい。

1) 適している。性表現、わいせつ表現であっても原則表現の自由の保障が及ぶことを前提に、わいせつの定義を絞り、この定義に抵触しない限り性表現にも表現の自由の保障及ぼそうとする「定義づけ衡量論」である。芦部信喜『憲法学U』(1994年、有斐閣)232頁。

2) 適している。「見たくないわいせつ表現を見せられる」わいせつ物陳列罪と、「見たいという人がいたからわいせつ表現物を渡す」わいせつ物頒布罪は異なる。後者の場合、人権の衝突がそもそも存在しないので、表現の自由の規制につき、「他者の人権との調整」を根拠とした内在的制約のみに服するという見解を取れば、わいせつ物頒布罪を違憲とする見解となじむ。

3) 適していない。判例は、検閲の内容につき「発表前」に表現の発表を禁止することと解している(狭義説の一種、税関検査事件〔最大判昭和59年12月12日〕)からである。Aの作品はすでに販売済=発表済みであり、これについての規制は判例では検閲に該当しない。つまり検閲禁止をもちだすことに意味がないからである。芦部信喜『憲法学V』(1998年、有斐閣)361頁以下。

4) 適している。訴訟において原則当事者が、自己と関係のない第三者への違憲行為を主張することは許されないが、「過度の広汎性のゆえに無効の理論」が問題となるような場合は、本肢のような主張も許されると解される(前記税関検査事件。前掲芦部388頁以下)。

5) 適している。「『悪徳の栄え』事件」(最大判昭和44年10月15日)参照。佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)264頁。最高裁はこの主張を認めなかったのである。