■2011年行政書士試験・行政法総論第1問

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■行政上の義務履行確保手段(2011−8)【理論問題】

行政の実効性確保の手段についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 行政上の義務履行の確保に関しては、行政代執行法が一般法とされ、別に法律で定めるところを除いては、この法律の定めるところによる。

2) 条例に基づく命令によって課された義務を相手方が履行しない場合には、代執行等の他の手段が存在しない場合に限り、地方公共団体は民事訴訟によりその履行を求めることができる、とするのが判例である。

3) 食品衛生法に基づく保健所職員による立入検査に際して、受忍義務に反してこれを拒否する相手方に対しては、職員は、実力を行使して調査を実施することが認められる。

4) 法令上の義務に違反した者について、その氏名や違反事実を公表することは、義務違反に対する制裁と解されるので、行政手続法上、聴聞の対象とされている。

5) 義務違反に対する課徴金の賦課は、一種の制裁であるから、罰金などの刑罰と併科することは二重処罰の禁止に抵触し、許されない。

■解説

【難易度】易しい。但し2)が難しかったであろう。

1) 正しい。行政代執行法1条。

2) 誤り。「国又は地方公共団体が提起した訴訟であって,財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合」ではなく、本肢のような「国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟」は、行政代執行法など特別の法律がない限り、法律上の争訟(裁判所法3条1項)に該当せず不適法なものである、とするのが判例である(最判平成14年7月9日)。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)224頁以下注3参照。

3) 誤り。「実力を行使して調査を実施する」ことは直接強制であり、食品衛生法にその定めがなければこれをすることができない。食品衛生法は、直接強制ではなく行政刑罰によって義務履行を確保しようとしている(食品衛生法11章)。

4) 誤り。氏名、違反事実の公表につき聴聞は要求されていない(行政手続法13条1項1号参照)。公表自体は不利益「処分」ではないからである。前掲塩野242頁参照。

5) 誤り。同一の行為について課徴金と刑事罰の両者を併科することは、二重処罰禁止には該当しないと解されている。前掲塩野245頁。