■2012年行政書士試験・民法第8問(債権)

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■不法行為(2012−34)【判例問題】

不法行為に基づく損害賠償に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車と衝突して、Bの自動車の助手席に乗っていたBの妻Cを負傷させ損害を生じさせた。CがAに対して損害賠償請求をする場合には、原則としてBの過失も考慮される。

イ) Aの運転する自動車と、Bの運転する自動車が、それぞれの運転ミスにより衝突し、歩行中のCを巻き込んで負傷させ損害を生じさせた。CがBに対して損害賠償債務の一部を免除しても、原則としてAの損害賠償債務に影響はない。

ウ) A社の従業員Bが、A社所有の配達用トラックを運転中、運転操作を誤って歩行中のCをはねて負傷させ損害を生じさせた。A社がCに対して損害の全額を賠償した場合、A社は、Bに対し、事情のいかんにかかわらずCに賠償した全額を求償することができる。

エ) Aの運転する自動車が、見通しが悪く遮断機のない踏切を通過中にB鉄道会社の運行する列車と接触し、Aが負傷して損害が生じた。この場合、線路は土地工作物にはあたらないから、AがB鉄道会社に対して土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することはできない。

オ) Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車に追突してBを負傷させ損害を生じさせた。BのAに対する損害賠償請求権は、Bの負傷の程度にかかわりなく、また、症状について現実に認識できなくても、事故により直ちに発生し、3年で消滅時効にかかる。

1) ア)、イ)
2) ア)、エ)
3) イ)、オ)
4) ウ)、エ)
5) ウ)、オ)

■解説

【難易度】普通。

ア) 正しい。「A−(BC)」という関係の下で起きた事案であるが、判例はCの賠償額算定にあたり夫Bの過失による過失相殺を肯定している(最判昭和51年3月25日)。ABのCに対する連帯責任を、BCが夫婦であるが故に分割責任にしたということになる(「被害者側の過失」の法理)。内田貴『民法U』初版(1997年、東大出版会)407−408頁。

イ) 正しい。本肢のような共同不法行為から発生した賠償債務につき加害者は連帯して賠償義務を負うが、この連帯は通常の連帯債務とは異なり、免除や混同といった絶対的効力事由が認められない不真正連帯債務と考えられているので、CがBの債務を一部免除しても、Aの債務には何らの効力も及ばない。前掲内田500頁。最判平成6年11月24日参照。

ウ) 誤り。使用者責任における求償権(715条3項)の問題である。Bが故意を以てCをはねたというような場合、使用者に全面求償が認められるのは勿論であるが、一般的には通常の企業活動の過程で生じた損害については、使用者の求償権の行使には、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において制限があると考えられている(最判昭和51年7月8日)。藤岡−磯村−浦河−松本康宏他『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)312頁、内田貴『民法U』初版(1997年、東大出版会)460−461頁。

エ) 誤り。鉄道の軌道施設のように、附属施設を伴う施設全体も717条にいう「土地の工作物」に該当すると解されている。最判昭和46年4月23日参照。前掲藤岡他327頁。

オ) 誤り。724条は、賠償請求の時効期間につき「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき」と規定するが、ここで言う損害を「知った時」とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時というのが判例である(最判平成14年1月29日)。前掲藤岡他380頁。

よって正解は1)のア)、イ)となろう。