■2012年行政書士試験・民法第7問(債権)

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■賃貸借(2012−33)【条文知識問題】

Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し(以下、この賃貸借を「本件賃貸借」という。)、その際、BがAに対して敷金(以下、「本件敷金」という。)を交付した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 本件賃貸借において、Bが甲建物のために必要費および有益費を支出した場合、特約がない限り、Bはこれらの費用につき、直ちにAに対して償還請求することができる。

2) BがAの承諾を得て本件賃貸借に基づく賃借権をCに譲渡した場合、特段の事情がない限り、AはBに対して本件敷金を返還しなければならない。

3) BがAの承諾を得て甲建物をDに転貸したが、その後、A・B間の合意により本件賃貸借が解除された場合、B・D間の転貸借が期間満了前であっても、AはDに対して甲建物の明渡しを求めることができる。

4) BがAの承諾を得て甲建物をEに転貸したが、その後、Bの賃料不払いにより本件賃貸借が解除された場合、B・E間の転貸借が期間満了前であれば、AはEに対して甲建物の明渡しを求めることはできない。

5) AがFに甲建物を特段の留保なく売却した場合、甲建物の所有権の移転とともに賃貸人の地位もFに移転するが、現実にFがAから本件敷金の引渡しを受けていないときは、B・F間の賃貸借の終了時にFはBに対して本件敷金の返還義務を負わない。

■解説

【難易度】難しい。

1) 誤り。必要費については直ちに償還請求ができるが、有益費の償還については賃貸借終了時となる(608条)。

2) 正しい。賃借権譲渡に伴い「賃借人が交代した」場合、敷金に関する旧賃借人の権利関係は新賃借人には承継されないというのが判例である(最判昭和53年12月22日)。よってAはBに敷金を返還しなければならない。内田貴『民法U』初版(1997年、東大出版会)182頁。

3) 誤り。この合意解除は、Dに対抗できないというのが判例である(大判昭和9年3月7日)。藤岡−磯村−浦河−松本康宏他『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)130頁。

4) 誤り。「賃借人」の債務不履行による解除の場合、結果転貸人としての義務に履行不能を生じ、A−Bの賃貸借は終了と同時に転貸借も同時に終了するというのが判例である(最判昭和36年12月21日)。内田貴『民法U』初版(1997年、東大出版会)213頁。よって転貸借期間満了前であってもAはEに当該建物の明渡しを求め得る。

5) 誤り。賃借物の所有権が移転し「賃貸人が変更」になり、賃借人が新賃貸人に対抗できるときは、新旧賃貸人の間で実際に敷金が引き継がれると否とを問わず、敷金返還義務は新賃貸人に引き継がれるというのが判例である(最判昭和44年7月17日)。藤岡−磯村−浦河−松本康宏他『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)125頁。