■2012年行政書士試験・民法第3問(物権)

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■相隣関係(2012−29)【判例問題】

甲土地を所有するAは、甲土地に隣接するB所有の乙土地を通行している。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 甲土地が乙土地に囲まれて公道に通じていない場合、AがBに対して囲繞地通行権を主張するためには、Aは甲土地の所有権の登記を具備していなければならない。

2) 甲土地と乙土地は元々一筆の土地であったが、分筆によって他の土地に囲まれて公道に通じていない甲土地が生じ、これによりAが乙土地に対する無償の囲繞地通行権を有するに至った場合において、その後に乙土地がCに売却されたとしても、Aは当然にCに対してこの通行権を主張することができる。

3) AがBとの間の賃貸借契約に基づいて乙土地を通行している場合において、その後に甲土地がCに売却されたときは、これによりCも当然に乙土地を通行することができる。

4) Aは、少なくとも20年にわたって、自己のためにする意思をもって、平穏、かつ、公然と乙土地の一部を通行していれば、A自らが通路を開設していなくても、乙土地上に通行地役権を時効取得することができる。

5) Aが地役権に基づいて乙土地の一部を継続的に通路として使用している場合において、その後にCが通路の存在を認識しながら、または認識可能であるにもかかわらず認識しないでBから乙土地を承継取得したときは、Cは背信的悪意者にあたるので、Aの地役権設定登記がなされていなくても、AはCに対して通行地役権を主張することができる。

(注)*囲繞地通行権とは、民法210条1項に規定されている「他の土地に囲まれて公道に通じていない土地」の通行権のことをいう。

■解説

【難易度】やや難。

1) 誤り。囲繞地通行権の取得につき、袋地の所有権取得の登記は不要である(最判昭和47年4月14日)。かなり古い文献で申し訳ないが、松坂佐一『民法提要物権法』第4版(1982年、有斐閣)150−151頁。

2) 正しい。この場合、乙地を通行する囲繞地通行権は同地について特定承継が生じた場合にも消滅するものではない、というのが判例である(213条、最判平成2年11月20日)。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』第2版(1994年、有斐閣)143頁。

3) 誤り。本肢では、Aが有していた賃借人の地位の移動について何も言及されていない以上、賃貸借契約に基づく通行権が、当然Cにも認められるとは言えない。

4) 誤り。判例は、283条の解釈において、要役地所有者自らが承役地の通路を開設した場合でなければ通行地役権の時効取得は認められないとしている(最判昭和30年12月26日)。前掲淡路他189頁。

5) 誤り。判例は、承役地が通路として用いられていることが客観的に明らかであり、承役地の譲受人がそれを認識又は認識可能であった場合、譲受人が地役権の設定を知らないとしても地役権登記欠缺を主張し得る第三者にあたらない、としている(最判平成10年2月13日)。この事案は「未登記の制限物権が、背信的悪意者以外の第三者との関係でも対抗できる場合があることを認めた」ものと解されている。内田貴『民法T』第2版(1999年、東大出版会)436頁。