■2012年行政書士試験・行政救済法第7問

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■国家賠償法(2012−20)【判例問題】

国家賠償制度に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

1) 国家賠償法4条に定める「民法の規定」には失火責任法(失火ノ責任二関スル法律)も含まれるが、消防署職員の消火活動上の失火による国家賠償責任については、消防署職員が消火活動の専門家であることから、失火責任法の適用はない。

2) 国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動が含まれるが、課外クラブ活動中に教師が生徒に対して行う監視・指導は「公権力の行使」には当たらない。

3) 税務署長のした所得税の更正処分が、税務署長が所得金額を過大に認定したとして判決によって取り消された場合、当該更正処分は直ちに国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受ける。

4) 警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が事故を起こして第三者に損害を与えた場合、損害の直接の原因が逃走車両の運転手にあるとしても、当該追跡行為は国家賠償法1条1項の適用上違法となり得る。

5) 同一行政主体に属する数人の公務員による一連の職務上の行為の過程で他人に損害が生じた場合、被害者が国家賠償を請求するためには、損害の直接の原因となった公務員の違法行為を特定する必要がある。

■解説

【難易度】やや難。

1) 誤り。国家賠償法4条の「民法」は民法典のみを指すのか民法付属法令をも含むのか。この点につき判例は、民法709条の付属法令である失火責任法は4条の「民法」にあたるとしてその適用を認めている(最判昭和53年7月17日)。この事案は、消防職員が鎮火を確認したものの、残火を見落としておりその後再度発火したというものだが、この見落とし行為が軽過失によるものであれば、失火責任法の適用により国又は公共団体の賠償責任が否定されることになる。これに反し、学説は本肢のように失火責任法の適用を排除する説が有力である。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)315−316頁、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)390−391頁。

2) 誤り。最判昭和58年2月18日は、公立学校における課外クラブ活動についても国家賠償法1条責任が発生することを前提にしていると解されている。前掲塩野329頁注1。

3) 誤り。所得金額を過大に認定した更正処分が直ちに違法になるのではなく、当該処分をなすにあたり職務上尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正処分をしたという場合、違法の評価を受けるとするのが判例(最判平成5年3月11日)である。前掲塩野339頁、櫻井他370頁。

4) 正しい。但し、当該追跡行為が不必要な場合や、逃走車両の走行態様や道路交通状況から判断して追跡行為が不相当な場合、追跡行為は違法の評価を受けるとするのが判例である(最判昭和61年2月27日)。前掲塩野343頁、櫻井他370頁。

5) 誤り。この場合、一連の行為のうちのいずれかに行為者の故意又は過失によるのでなければ被害は生じなかったことが認められ、かつ、それがどの行為であるにせよ、これによる被害につき行為者が属する国または公共団体が損害を負うべき関係にあるときは、加害行為の不特定を理由として賠償責任を免れることはできない、というのが判例である(最判昭和57年4月1日)。前掲塩野323頁、櫻井他364頁。