■2012年行政書士試験・行政救済法第6問

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■国家賠償法(2012−19)【判例問題】

以下の文章は、国家賠償法2条1項に言及した最高裁判所判決の一節である。次の記述のうち、この判決の内容と明らかに矛盾するものはどれか。

「国家賠償法二条一項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によつて一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性がある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿つて利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきである。すなわち、当該営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りにおいてはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によつて危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物の設置、管理には瑕疵があるというを妨げず、したがつて、右営造物の設置・管理者において、かかる危険性があるにもかかわらず、これにつき特段の措置を講ずることなく、また、適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害を生ぜしめたときは、それが右設置・管理者の予測しえない事由によるものでない限り、国家賠償法二条一項の規定による責任を免れることができないと解されるのである。」
(最大判昭和56年12月16日民集35巻10号1369頁)

1) 営造物の利用により利用者に損害が発生したとしても、それが営造物の設置・管理者の予測しえない事由による場合には、国家賠償法2条1項の責任が認められないことがある。

2) 国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵には、営造物を構成する物的施設自体に物理的・外形的な欠陥がある場合も含まれる。

3) 営造物の利用により危害を生ぜしめる危険性があり、営造物の設置・管理者が特段の措置を講ずることなくこれを利用に供した場合であっても、利用者又は第三者への損害の発生がなければ国家賠償法2条1項の責任は認められない。

4) 営造物の供用によって利用者に対して危害が生じた場合には国家賠償法2条1項の責任が認められる余地があるが、第三者に対して危害が生じた場合には同項の責任が生じる余地はない。

5) 営造物の利用により危害を生ぜしめる危険性があり、営造物がそのような利用に供されている場合には、営造物を構成する物的施設自体に物理的な瑕疵がなくても、国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵があるということができる。

■解説

【難易度】易しい。過去問のレヴェルで十分対処できる問題である。なお出典元は大阪国際空港事件判決である。

1) 矛盾しない。国家賠償法2条の責任は結果責任ではない。これは「判例、学説のほぼ一致するところである」(塩野宏『行政法U』第6版〔2019年、有斐閣〕363頁)。

2) 矛盾しない。判決文中において、「当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によつて一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性がある場合」に営造物の設置、管理の瑕疵がある、と指摘されている。

3) 矛盾しない。判決文中において、「営造物の設置・管理者において、かかる危険性があるにもかかわらず、これにつき特段の措置を講ずることなく、また、適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害を生ぜしめたときは」、「国家賠償法二条一項の規定による責任を免れることができないと解される」、と指摘されている。そもそも賠償制度というのは損害の発生要件を要求しているというのは常識であり、判決文を読まなくてもこの肢の妥当性は判断できよう。

4) 矛盾する。過去頻出の肢である。国家賠償法2条責任は、営造物の利用者にとって瑕疵がない場合でも、第三者との関係で被害を発生させる場合にも及ぶ(機能的瑕疵。判決文中にも明示されている)。前掲塩野364−365頁、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)383頁以下。

5) 矛盾しない。判決文中において、「当該営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りにおいてはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によつて危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物の設置、管理には瑕疵がある」と言い得る、と指摘されている。