■2013年行政書士試験・行政救済法第7問

行政書士合格講座2013年行政書士試験の問題解説>2013年行政書士試験・行政救済法第7問

このサイトについて・プライバシーポリシー 憲法学の窓・公務員試験対策室 Site Map

■国家賠償法(2013−20)【判例問題】

国家賠償法に関する次のア)−オ)の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア) 経済政策の決定の当否は裁判所の司法的判断には本質的に適しないから、経済政策ないし経済見通しの過誤を理由とする国家賠償法1条に基づく請求は、そもそも法律上の争訟に当たらず、不適法な訴えとして却下される。

イ) 税務署長が行った所得税の更正が、所得金額を過大に認定したものであるとして取消訴訟で取り消されたとしても、当該税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていた場合は、国家賠償法1条1項の適用上違法とはされない。

ウ) 刑事事件において無罪の判決が確定した以上、当該公訴の提起・追行は国家賠償法1条の適用上も直ちに違法と評価されるが、国家賠償請求が認容されるためには、担当検察官に過失があったか否かが別途問題となる。

エ) 自作農創設特別措置法に基づく買収計画が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ当該買収計画につき取消し又は無効確認の判決を得る必要はない。

オ) 違法な課税処分によって本来払うべきでない税金を支払った場合において、過納金相当額を損害とする国家賠償請求訴訟を提起したとしても、かかる訴えは課税処分の公定力や不可争力を実質的に否定することになるので棄却される。

1) ア)、ウ)
2) ア)、オ)
3) イ)、エ)
4) イ)、オ)
5) ウ)、エ)

■解説

【難易度】やや難。

ア) 誤り。いわゆる郵便貯金目減り訴訟(最判昭和57年7月15日)である。政府による経済政策によりインフレが生じ、結果貯金が目減りしたことへの損害賠償を求めたのがこの事案である。判例は、訴訟要件でこの事案を処理したのではなく、物価の安定といった経済政策は政府の裁量に任せられており、経済政策がインフレを招いたとしても政治的責任はともかく、国家賠償法上の違法評価を受けることはないとして、請求を「棄却」したのである。

イ) 正しい。最判平成5年3月11日である。国家賠償法1条1項の違法性判断において、公務員の行為が結果特定の規範に違反していても、行為当時の状況を基準として当該公務員がなすべきことをしていたという観点から、違法性が否定されることがあり得るという立場である(行為不法説職務行為基準説)。前掲櫻井他370頁。つまり取消訴訟の違法と国家賠償法の違法は異なるという見解である。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)前掲塩野339頁。

ウ) 誤り。この事案でも職務行為基準説がとられている。つまり「当該公訴の提起・追行は国家賠償法1条の適用上も直ちに違法と評価されない」のである(最判昭和53年10月20日)。前掲塩野337−338頁、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)374頁。

エ) 正しい。最判昭和36年4月21日である。国家賠償の前提として行政行為を取消訴訟で取消しておく等、行政行為の違法性を確定させておくことは必要ではない。前掲櫻井他87頁。塩野宏『行政法T』第5版増補(2009年、有斐閣)147−148頁。

オ) 誤り。ある課税処分に不可争力が発生していたとする。この場合取消訴訟とは別に過納金相当額を求める国家賠償請求訴訟を提起し得るとすると、問題が生じる。即ち、過納金の取戻し手段としての処分取消訴訟はふさがれているのに、国家賠償請求訴訟を用いて過納金相当額を請求し得るとすると、不可争力を潜脱することになりはしないか、ということである。これに対しては肯定説否定説があるが、判例(最判平成22年6月3日)は、肯定説をとり、国家賠償請求訴訟の提起を可能とした。前掲櫻井他87−88頁。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)348−349頁注4。