■2013年行政書士試験・行政救済法第4問

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■行政事件訴訟法(2013−17)【判例問題】

A電力株式会社は、新たな原子力発電所の設置を計画し、これについて、国(原子力規制委員会)による原子炉等規制法*に基づく原子炉の設置許可を得て、その建設に着手した。これに対して、予定地の周辺に居住するXらは、重大事故による健康被害などを危惧して、その操業を阻止すべく、訴訟の提起を検討している。この場合の訴訟について、最高裁判所の判例に照らし、妥当な記述はどれか。

1) 当該原子炉の設置については、原子炉等規制法に基づく許可がなされている以上、Xらは、国を被告とする許可の取消訴訟で争うべきであり、Aを被告とする民事訴訟によってその操業の差止めなどを請求することは許されない。

2) 事故により生命身体の安全に直截的かつ重大な被害を受けることが想定される地域にXらが居住していたとしても、そうした事故発生の具体的な蓋然性が立証されなければ、原子炉設置許可の取消しを求めて出訴するXらの原告適格は認められない。

3) 原子炉設置許可の取消訴訟の係属中に原子炉の安全性についての新たな科学的知見が明らかになった場合には、こうした知見が許可処分当時には存在しなかったとしても、裁判所は、こうした新たな知見に基づいて原子炉の安全性を判断することが許される。

4) 原子炉の安全性の審査は、極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づいてなされるものであるから、そうした審査のために各分野の学識経験者等が作成した具体的な審査基準については、その合理性を裁判所が判断することは許されない。

5) 原子炉設置許可は、申請された計画上の原子炉の安全性を確認するにすぎず、実際に稼働している原子炉が計画どおりの安全性を有しているか否かは許可の有無とは無関係であるから、工事が完了して原子炉が稼働すれば、許可取消訴訟の訴えの利益は失われる。
(注)*核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律

■解説

【難易度】やや難。

1) 誤り。もんじゅ訴訟(最判平成4年9月22日)は、民事訴訟による差止請求を肯定するものと解される。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)149頁。

2) 誤り。判例は、Xの原告適格の有無につき事故発生の具体的蓋然性の証明を求めてはいない。原子炉からXが居住する地域までの距離を手掛かりに、Xの原告適格を認めているように思われる(もんじゅ訴訟)。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)136頁参照、前掲櫻井他284頁。

3) 正しい。原子炉安全性の判断は、「原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべき」であり、「現在の科学技術水準に照らし」当該調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点がある場合、原子炉設置許可処分は違法とされる(伊方原発訴訟〔最判平成4年10月29日〕、判断過程審査)。櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)119頁。

4) 誤り。「原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議」の中で用いられた「具体的審査基準に不合理な点」がある場合についても、原子炉設置許可訴訟における裁判所の判断対象となる(伊方原発訴訟)。

5) 誤り。このような訴えの利益の喪失にふれた判例はないと思われる。例えば伊方原発訴訟は、77年に稼働開始した伊方原発1号機をめぐるものであり、92年に最高裁判決が出されているが、訴えの利益がなくなるということにはふれていない。