■2014年行政書士試験・民法第2問(総則)

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■詐欺、強迫(2014−28)【判例、条文知識問題】

Aが自己所有の甲土地をBに売却する旨の契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) AはBの強迫によって本件売買契約を締結したが、その後もBに対する畏怖の状態が続いたので取消しの意思表示をしないまま10年が経過した。このような場合であっても、AはBの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

2) AがBの詐欺を理由として本件売買契約を取り消したが、甲土地はすでにCに転売されていた。この場合において、CがAに対して甲土地の所有権の取得を主張するためには、Cは、Bの詐欺につき知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなく、また、対抗要件を備えていなければならない。

3) AがDの強迫によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときは、AはDの強迫を理由として本件売買契約を取り消すことができない。

4) AがEの詐欺によって本件売買契約を締結した場合、この事実をBが知っていたとき、または知らなかったことにつき過失があったときは、AはEの詐欺を理由として本件売買契約を取り消すことができる。

5) Aは未成年者であったが、その旨をBに告げずに本件売買契約を締結した場合、制限行為能力者であることの黙秘は詐術にあたるため、Aは未成年者であることを理由として本件売買契約を取り消すことはできない。

■解説

【難易度】普通。民法改正に伴う補足事項がある(外部ブログ)。

1) 正しい。取消権は、@追認をし得るときから5年間、A行為時より20年間経過すれば時効により消滅する。本肢の事例では、売買契約から10年経過しているもののその間畏怖状態が続いていたというのであるから、追認をし得る状態(取消の原因となっていた状況が消滅した状態〔民法124条1項〕)になかったということになる。だからAは、強迫を理由として本件売買契約を取消すことができる。山田−河内−安永−松久『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)151、153頁、内田貴『民法T』第2版(1999年、東大出版会)273−275頁。

2) 誤り。詐欺「取消前」に法律関係に入った第三者についての問題である。この第三者CがAに対抗するには、善意であれば足り無過失要件は必要でないとされている。また登記の具備も要しないと解されている(最判昭和49年9月26日)。前掲山田他137−138頁。但し無過失要件の有無と、昭和49年判例の解釈については争いがある。この点前掲内田79頁(無過失必要説にたつ)、83頁(登記必要説にたつ)参照。

3) 誤り。第三者の詐欺による意思表示については、相手方がその事実につき悪意の場合に限り取消し得る旨の規定があるが(96条2項)、強迫についてはこのような規定はないので、第三者による強迫でもAは本件売買契約を取消し得る。前掲山田他139−140頁、内田86頁。

4) 誤り。3)で述べた通り、第三者詐欺の場合相手方が悪意であれば、本人は詐欺による意思表示を取消し得るが、相手方が有過失に過ぎない場合は取消し得ない(96条2項)。

5) 誤り。このような黙秘、沈黙は21条の「詐術」に該当するか。判例は、制限能力者であるということを黙秘しただけでは詐術にはあたらないが、黙秘が制限能力者の他の言動と相まって、相手方を誤信させ又は誤信を強めた場合には詐術にあたるとする(最判昭和44年2月13日)。前掲山田他50頁。よってこの場合、Aは本件契約を取消し得る。