■2015年行政書士試験・民法第9問(親族、相続)

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■婚約他(2015−35)【判例問題】

婚約、婚姻および離婚に関する以下の相談に対する回答のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) <相談> 私はAとの婚約にあたりAに対して結納金100万円を贈与したのですが、結局は婚姻に至りませんでした。私はAに対して結納金100万円の返還を請求できるでしょうか。

<回答> 結納は婚姻の成立を確証し、併せて当事者間の情宜を厚くする目的で授受される一種の贈与とされています。婚姻が解消された場合には原則として返還すべきものですので、あなたには結納金の返還を請求できる権利があります。

イ) <相談> 私は事実婚状態にあったBと合意のうえ入籍することにして婚姻届を作成しましたが、提出前にBは交通事故に遭い、現在昏睡状態にあります。こうした状態でも先に作成した婚姻届を提出すれば、私はBと正式に婚姻できるのでしょうか。

<回答> 判例によれば、婚姻が有効に成立するためには、届出時点における当事者の婚姻意思が必要です。婚姻届作成後に翻意したというような特段の事情がないとしても、現在Bは意思能力を欠いた状態ですので、婚姻届を提出したとしても婚姻の効力は生じません。

ウ) <相談> 私は配偶者Cとの間に子がいますが、Cは5年前に家を出て他で生活しており、子の養育費はすべて私か負担しています。Cに対して離婚訴訟を提起するにあたり、併せてこの間の養育費の支払いを求めることができるでしょうか。

<回答> 子の監護に要する費用は、婚姻から生じる費用です。婚姻費用の請求は婚姻の継続を前提とする請求であるのに対して、離婚訴訟は婚姻の解消を目指す訴訟ですから、このように性質が異なる訴訟を一緒に行うことはできません。離婚を申し立てる前に、監護費用の支払いを求める訴えを別途提起する必要があります。

エ) <相談> 私と配偶者であるDとの婚姻関係は既に破綻しており、離婚にむけて協議を進めています。D名義のマンションを私に贈与することをDと私とは書面により合意したのですが、離婚届を提出する前日になって、Dは、この贈与契約を取り消すと言ってきました。Dの取り消しは認められるのでしょうか。

<回答> 民法の規定によれば夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消すことができますが、その趣旨は、夫婦間の約束事に法は介入すべきではなく、当事者の道義に委ねるべきだというものです。婚姻が実質的に破綻しているような場合にはこの趣旨は妥当しませんので、Dはマンションの贈与契約を取り消すことができません。

1) ア)、イ)

2) ア)、エ)

3) イ)、ウ)

4) イ)、エ)

5) ウ)、エ)

■解説

【難易度】普通。

ア) 正しい。結納の性質について「贈与の一種」と解するのが判例である(最判昭和39年9月4日)。そして婚姻解消の場合は、不当利得の法理によって結納の返還義務が生ずると解されている。佐藤−伊藤−右近『民法X』第2版補訂(2000年、有斐閣)37−38頁。

イ) 誤り。身分行為意思はどの段階で必要か、即ち書面作成時と提出時のどちらで必要か。判例は、原則両段階で必要という前提を取るが、作成時に身分行為意思があれば、特段の事情がない限り提出時に意識喪失の状態であっても意思の存在を肯定し得るとする(最判昭和44年4月3日)。前掲佐藤他7頁。つまり本肢では婚姻の効力が生じずる。

ウ) 誤り。子の監護に要する費用が婚姻費用に含まれるという点は正しい(前掲佐藤他27−28頁)。しかし離婚の訴えにおいて、別居後離婚までの子の監護費用の支払を求める申立があった場合、離婚請求の認容と共に当該費用の支払を命ずることもできるというのが判例であり(最判平成9年4月10日)、本肢のように「別途提起」の必要はない。

エ) 正しい。夫婦間契約は婚姻中いつでも取消し得るのが原則だが(754条)、夫婦関係が破綻にひんしている際結ばれた契約は取消せないというのが判例である(最判昭和33年3月6日)。前掲佐藤他26頁。

よって正解は2)のア)、エ)となろう。