■2015年行政書士試験・民法第7問(債権)

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■贈与(2015−33)【判例問題】

Aは、自己所有の甲建物をBに贈与する旨を約した(以下、「本件贈与」という)。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 本件贈与が口頭によるものであった場合、贈与契約は諾成契約であるから契約は成立するが、書面によらない贈与につき贈与者はいつでも撤回することができるため、甲がBに引き渡されて所有権移転登記手続が終了した後であっても、Aは本件贈与を撤回することができる。

2) 本件贈与が書面によるものであるというためには、Aの贈与意思の確保を図るため、AB間において贈与契約書が作成され、作成日付、目的物、移転登記手続の期日および当事者の署名押印がされていなければならない。

3) 本件贈与につき書面が作成され、その書面でAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、遺言が撤回自由であることに準じて、Aはいつでも本件贈与を撤回することができる。

4) 本件贈与につき書面が作成され、その書面でBがAの老後の扶養を行うことが約された場合、BがAの扶養をしないときであっても、甲の引渡しおよび所有権移転登記手続が終了していれば、Aは本件贈与を解除することができない。

5) 本件贈与につき書面が作成され、その書面で、BがAの老後の扶養を行えばAが死亡した時に本件贈与の効力が生じる旨の合意がされた場合、Bが上記の負担を全部またはこれに類する程度まで履行したときであっても、特段の事情がない限り、Aは本件贈与を撤回することができる。

■解説

【難易度】普通。民法改正に伴う補足事項がある(外部ブログ)。

1) 誤り。贈与契約が諾成契約(民法549条)であり、書面によらない贈与は撤回し得る(550条本文)という点は正しい。但し「甲がBに引き渡されて所有権移転登記手続が終了した」というような「履行の終わった部分については」撤回し得ない(550条但書。大判大正9年6月17日、最判昭和40年3月26日)。藤岡−磯村−浦河−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)58頁。

2) 誤り。贈与契約を約した「書面」とは、贈与の事実が確実にみてとれる程度の記載があれば十分であり(最判昭和25年11月16日)、本肢のような詳細な約定は不要と解されよう。なお最判昭和60年11月29日参照。前掲藤岡他57頁。

3) 正しい。このような「合意」を死因贈与というが、死因贈与の撤回につき遺言の撤回に関する1022条が原則準用されるというのが判例である(最判昭和47年5月25日)。前掲藤岡他61頁。

4) 誤り。この場合、Aが給付した贈与の利益をBに無償で帰属させるのは不公平である。このような、扶養を行う旨契約されたにもかかわらずそれが行われないというような「忘恩行為」については、引渡といった履行が終わっていたとしても、信義則を適用して贈与契約の撤回を認めるべきと解されている。なお判例は、扶養義務の不履行を理由として撤回を肯定する結論を導いている(最判昭和53年2月17日)。前掲藤岡他58頁。

5) 誤り。負担付死因贈与の事案である。この事案のように、受贈者Bが「負担を全部またはこれに類する程度まで履行したとき」は、特段の事情がない限り1022、1023条の準用はないというのが判例である(最判昭和57年4月30日)。つまりAは本件贈与を撤回し得ない。前掲藤岡他62頁。