■2015年行政書士試験・民法第4問(物権)

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■留置権(2015−30)【判例問題】

留置権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

1) Aは自己所有の建物をBに売却し登記をBに移転した上で、建物の引渡しは代金と引換えにすることを約していたが、Bが代金を支払わないうちにCに当該建物を転売し移転登記を済ませてしまった場合、Aは、Cからの建物引渡請求に対して、Bに対する代金債権を保全するために留置権を行使することができる。

2) Aが自己所有の建物をBに売却し引き渡したが、登記をBに移転する前にCに二重に売却しCが先に登記を備えた場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができる。

3) AがC所有の建物をBに売却し引き渡したが、Cから所有権を取得して移転することができなかった場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することはできない。

4) Aが自己所有の建物をBに賃貸したが、Bの賃料不払いがあったため賃貸借契約を解除したところ、その後も建物の占有をBが続け、有益費を支出したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する有益費償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない。

5) Aが自己所有の建物をBに賃貸しBからAへ敷金が交付された場合において、賃貸借契約が終了したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。

■解説

【難易度】普通。

1) 正しい。最判昭和47年11月16日。

2) 誤り。よってこれが正解である。この場合留置権の行使を否定するのが判例である(最判昭和43年11月21日)。Bの損害賠償債権を、債務者とは別人の所有者Cの犠牲において保護するのは妥当ではないと解されるからである。内田貴『民法V』初版(1996年、東大出版会)455頁。

3) 正しい。最判昭和51年6月17日。

4) 正しい。このような、「占有開始時には占有権原があったが、結果的には有益費を投下した時点では権原を失っていたとき」留置権は成立するか。判例は4)の事例についてこれを否定する(最判昭和46年7月16日。なお民法295条2項参照)。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』第2版(1994年、有斐閣)215頁。

5) 正しい。敷金返還と賃借物の返還の同時履行を否定し(賃借物の返還が先履行のため)、故に賃借人が賃貸人に対し敷金返還請求権をもって家屋つき留置権を取得することをも否定するのが判例である(最判昭和49年9月2日)。藤岡−磯村−浦河−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)125頁。