■2015年行政書士試験・憲法第3問

行政書士合格講座2015年行政書士試験の問題解説>2015年行政書士試験・憲法第3問

このサイトについて・プライバシーポリシー 憲法学の窓・公務員試験対策室 Site Map

■百里基地訴訟(2015−5)【判例問題】

次の文章は、自衛隊基地建設のために必要な土地の売買契約を含む土地取得行為と憲法9条の関係を論じた、ある最高裁判所判決の一部である(原文を一部修正した)。ア)−オ)の本来の論理的な順序に即した並び順として、正しいものはどれか。

ア) 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序とは本来関係のない優れて公法的な性格を有する規範である。

イ) 私法的な価値秩序において、憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範が、そのままの内容で民法90条にいう「公ノ秩序」の内容を形成し、それに反する私法上の行為の効力を一律に否定する法的作用を営むということはない。

ウ) 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は、私法的な価値秩序のもとで確立された私的自治の原則、契約における信義則、取引の安全等の私法上の規範によって相対化され、民法90条にいう「公ノ秩序」の内容の一部を形成する。

エ) 憲法9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄、戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範にかかわる私法上の行為については、私法的な価値秩序のもとにおいて、社会的に許容されない反社会的な行為であるとの認識が、社会の一般的な観念として確立しているか否かが、私法上の行為の効力の有無を判断する基準になるものというべきである。

オ) 憲法9条は、人権規定と同様、国の基本的な法秩序を宣示した規定であるから、憲法より下位の法形式によるすべての法規の解釈適用に当たって、その指導原理となりうるものであることはいうまでもない。

1) アイウエオ

2) イウエオア

3) ウエオアイ

4) エオアイウ

5) オアイウエ

■解説

【難易度】難しい。

百里基地訴訟(最判平成1年6月20日)からの出題である。本件判決を要約すると、次のようになろうか。

「国の行為であつても、私人と対等の立場で行う」国の契約につき、憲法9条は、その規範の性格上「人権規定と同様」「直接適用されるものではなく、このような契約は原則私法の適用を受けるものである。憲法9条は、私法的な価値秩序において形成された私的自治の原則等により相対化された上で、民法90条の「公の秩序」の内容の一部を形成する。そして本件契約が公序良俗違反かは、このような「私法的な価値秩序のもとにおいてその効力を否定すべきほどの反社会性を有するか否か」で判断される。

この判決では、私人間効力論における「間接効力説」的な論理が示されているが、本件は当事者一方が国という点で、本来の私人間効力論とは異なる点に注意すべきである。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)116頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)641頁。
なお本件については、実質上憲法が直接適用される公権力の行使と言える事案ではなかったかとの批判(前掲芦部116頁)や、私法上の手法をとった場合でも、国家行為が憲法上の枠組にとどまるか否かを左右する決定的帰結を伴わないという立場から、「私法的行為によれば憲法規範の枠組から離れることができるという論理は、立憲主義(法の支配)という観点から納得することは難しい」という批判(前掲佐藤641−642頁)がある。

正解は5)である。