■2015年行政書士試験・行政救済法第6問

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■国家賠償法(2015−19)【判例問題】

国家賠償法1条1項に関する最高裁判所の判例に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) 非番の警察官が、もっぱら自己の利をはかる目的で、職務を装って通行人から金品を奪おうとし、ついには、同人を撃って死亡させるに至った場合、当該警察官は主観的に権限行使の意思をもってしたわけではないから、国家賠償法1条1項の適用は否定される。

2) パトカーに追跡されたため赤信号を無視して交差点に進入した逃走車両に無関係の第三者が衝突され、その事故により当該第三者が身体に損害を被った場合であったとしても、警察官の追跡行為に必要性があり、追跡の方法も不相当といえない状況においては、当該追跡行為に国家賠償法1条1項の違法性は認められない。

3) 飲食店の中でナイフで人を脅していた者が警察署まで連れてこられた後、帰宅途中に所持していたナイフで他人の身体・生命に危害を加えた場合、対応した警察官が当該ナイフを提出させて一時保管の措置をとるべき状況に至っていたとしても、当該措置には裁量の余地が認められるから、かかる措置をとらなかったことにつき国家賠償法1条1項の違法性は認められない。

4) 旧陸軍の砲弾類が海浜に打ち上げられ、たき火の最中に爆発して人身事故が生じた場合、警察官は警察官職務執行法上の権限を適切に行使しその回収等の措置を講じて人身事故の発生を防止すべき状況に至っていたとしても、当該措置には裁量の余地が認められるから、かかる措置をとらなかったことにつき国家賠償法1条1項の違法性は認められない。

5) 都道府県警察の警察官が交通犯罪の捜査を行うにつき故意または過失によって違法に他人に損害を与えた場合、犯罪の捜査が司法警察権限の行使であることにかんがみれば、国家賠償法1条1項によりその損害の賠償の責めに任ずるのは原則として司法権の帰属する国であり、都道府県はその責めを負うものではない。

■解説

【難易度】普通。

1) 誤り。国家賠償法1条1項は、公務員が自己の利を図る目的であっても客観的に職務執行の外形を備える行為をして他人に損害を与えた場合、国又は地方公共団体に損害賠償の責を負わせる趣旨を持つというのが判例である(最判昭和31年11月30日。外形標準説)。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)350頁、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)367頁。

2) 正しい。最判昭和61年2月27日。前掲塩野343頁、櫻井他370頁。判例は、第三者との関係で追跡行為に法的義務違反があるか、追跡目的と比例関係をみたした追跡行為であったかという点から違法性を判断している。

3) 誤り。最判昭和57年1月19日である。ナイフ所持者の飲食店における行動の調査から容易に判明した事実をもとに合理的に判断すると、当該所持者がナイフを所持したまま警察署から帰宅すれば、途中で他人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれが著しい状況あったという事実関係の下では、このような調査を怠りナイフの一時保管の措置をとることなく、ナイフを携帯させたまま帰宅させたことに違法性を認めるのが判例である。前掲塩野331頁、櫻井他376頁。

4) 誤り。最判昭和59年3月23日である。島に砲弾等が毎年のように打ち上げられ、砲弾等から生じる危険を通常の手段では除去できず、放置すれば相当の蓋然性を以て島民の生命身体の安全を確保できないと予測できる状況下で、警察官がこの状況を容易に知りうる場合、警察官が、自ら又は他の機関に依頼して、右砲弾類を回収するなど砲弾類の爆発による人身事故の発生を未然に防止する措置をとらなかったことは、違法であるというのが判例である。前掲塩野331頁、櫻井他376頁。

5) 誤り。最判昭和54年7月10日である。都道府県警察の警察官が交通犯罪の捜査を行うにつき故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合、国家賠償法1条1項によりその損害の賠償の責めに任ずるのは、原則として当該都道府県であり、国は原則としてその責めを負うものではないといのが判例である。前掲塩野321頁。