■2015年行政書士試験・行政救済法第3問

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■事情判決(2015−16)【条文知識問題】

事情判決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか(本問は出題ミスのため正解なし)。

1) 事情判決は、処分取消しの請求を棄却する判決であるが、その判決理由において、処分が違法であることが宣言される。

2) 事情判決においては、公共の利益に著しい影響を与えるため、処分の取消しは認められないものの、この判決によって、損害の賠償や防止の措置が命じられる。

3) 事情判決に関する規定は、義務付け訴訟や差止訴訟にも明文で準用されており、これらの訴訟において、事情判決がなされた例がある。

4) 事情判決に関する規定は、民衆訴訟に明文では準用されていないが、その一種である選挙の無効訴訟において、これと同様の判決がなされた例がある。

5) 土地改良事業が完了し、社会通念上、原状回復が不可能となった場合、事業にかかる施行認可の取消訴訟は、訴えの利益を失って却下され、事情判決の余地はない。

■解説

【難易度】やや難しい。本問は出題ミスのため受験者全員に加点措置がされた.

1) 誤り。事情判決は処分取消の請求を棄却する判決であるが、処分の違法を宣言するのは判決理由ではなく判決主文である(行政事件訴訟法31条1項)。

2) 誤り。前半は正しいが、事情判決は損害賠償や防止の措置を命じるものではない。なお31条1項は「損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ」請求を棄却できる旨規定するが、これは「当事者間の話合いで損害賠償がなされた、また、その点に合意が成立した」事を前提に事情判決を出すとか、賠償問題が未解決の場合でもそれについての「ある程度の見通し」で事情判決を出せるという事を意味するものであり、賠償問題について紛争が生じれば、原告は改めて訴訟を提起しなければならない場合もあり得る。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)206頁、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)309頁。

3) 誤り。事情判決に関する31条は、義務付け訴訟や差止訴訟には準用されていない(38条)。

4) 誤り。事情判決に関する規定は、民衆訴訟への準用が明文で規定されている(43条1項)。なお選挙訴訟(議員定数不均衡訴訟)で事情判決がなされたという点は正しい(最大判昭和51年4月14日)。但しこの事案で最高裁は、公職選挙法219条1項が行政事件訴訟法31条の準用を否定しているにもかかわらず、事情判決を用いた(だからわざわざ主文で、事情判決の法理を「一般的な法の基本原理に基づくもの」理解した上で適用している)。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)141頁。

5) 誤り。本肢のように、訴えの利益がなくなったとして請求を却下したのが大阪高判平成2年6月28日であるが、この上告審である最判平成4年1月24日は、土地改良事業認可取消とそれに伴う換地処分の法的効力や原状回復が不可能ということは、行政事件訴訟法31条の適用に関し考慮されるべき事柄であり、原状回復が社会通念上不可能になった場合であっても、訴えの利益は消滅しないとした。前掲塩野208−209頁、前掲櫻井他292−293頁。