■2016年行政書士試験・民法第8問(不法行為)

行政書士合格講座2016年行政書士試験の問題解説>2016年行政書士試験・民法第8問(不法行為)

このサイトについて・プライバシーポリシー 憲法学の窓・公務員試験対策室 Site Map

■不法行為(2016−34)【条文知識問題】

不法行為に基づく損害賠償に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものの組合せはどれか。

ア) 使用者Aが、その事業の執行につき行った被用者Bの加害行為について、Cに対して使用者責任に基づき損害賠償金の全額を支払った場合には、AはBに対してその全額を求償することができる。

イ) Dの飼育する猛犬がE社製の飼育檻から逃げ出して通行人Fに噛みつき怪我を負わせる事故が生じた場合において、Dが猛犬を相当の注意をもって管理をしたことを証明できなかったとしても、犬が逃げ出した原因がE社製の飼育檻の強度不足にあることを証明したときは、Dは、Fに対する損害賠償の責任を免れることができる。

ウ) Gがその所有する庭に植栽した樹木が倒れて通行人Hに怪我を負わせる事故が生じた場合において、GがHに損害を賠償したときは、植栽工事を担当した請負業者Iの作業に瑕疵があったことが明らかな場合には、GはIに対して求償することができる。

エ) 運送業者Jの従業員Kが業務として運転するトラックとLの運転する自家用車が双方の過失により衝突して、通行人Mを受傷させ損害を与えた場合において、LがMに対して損害の全額を賠償したときは、Lは、Kがその過失割合に応じて負担すべき部分について、Jに対して求償することができる。

オ) タクシー会社Nの従業員Oが乗客Pを乗せて移動中に、Qの運転する自家用車と双方の過失により衝突して、Pを受傷させ損害を与えた場合において、NがPに対して損害の全額を賠償したときは、NはOに対して求償することはできるが、Qに求償することはできない。

1) ア)、イ)

2) ア)、ウ)

3) イ)、ウ)

4) ウ)、エ)

5) エ)、オ)

■解説

【難易度】普通。

ア) 誤り。使用者責任(民法715条)の趣旨は如何。使用者は被用者を通じ自己の活動範囲を拡大させ、使用者に利益をもたらすが同時に損害発生の危険性もそれだけ増大する。715条の根拠には、前者に注目すると「報償責任」(利益の存するところに損失もをも帰せしめる)の考えがあるということになる。そして報償責任を前提に715条を考えた場合、通常の企業活動で生じた損害につき、使用者がなし得る求償には一定の制限があると解されている(最判昭和51年7月8日。信義則上の制限があるとする)。何故なら使用者も、被用者の行動から利益を得ているので、企業活動から生じた損害を分担させる必要があるからである。藤岡−磯村−浦河−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)306、315頁。

イ) 誤り。動物占有者の責任についての問題である。Dがこれを免責されるには「動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をした」(718条1項但書)ことを要する。

ウ) 正しい。717条2、3項。

エ) 正しい。最判昭和63年7月1日。前掲藤岡他315−316頁。

オ) 誤り。Qの負担部分につき、NはQに対し求償することができるとするのが判例である(最判昭和41年11月18日)。前掲藤岡他326頁。

よって正解は4)となろう。