■2016年行政書士試験・行政救済法第8問

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■損失補償(2016−21)【条文知識問題】

損失補償に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 火災の際の消防活動において、消防長等は、消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるときは、消防対象物ないし延焼対象物以外の建築物等を破壊することができるが、当該行為は延焼を防ぐために必要な緊急の措置であるため、損害を受けた者は、消防法による損失補償を請求することができない。

2) 都市計画法上の用途地域の指定について、土地の利用規制を受けることとなった者は、当該都市計画を定める地方公共団体に対して、通常生ずべき損害の補償を求めることができる旨が同法に規定されているため、利用規制を受けたことによって被った損失の補償を求めることができる。

3) 都市計画事業のために土地が収用される場合、被収用地に都市計画決定による建築制限が課されていても、被収用者に対して土地収用法によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいう。

4) 土地収用による損失補償の額を不服として、土地所有者または関係人が訴えを提起する場合には、補償額を決定した裁決を行った収用委員会の所属する都道府県を被告として、裁決の取消しの訴えを提起する必要がある。

5) 道路管理者である地方公共団体が行った地下横断歩道の新たな設置によって自己の所有する地下埋設ガソリンタンクが消防法の規定違反となり、事業者が当該ガソリンタンクを移転した場合には、事業者は、移転に必要な費用につき道路法による損失補償を求めることができる。

■解説

【難易度】やや難しい。

1) 誤り。消防法29条3項に基づく措置(延焼の恐れのない物に対する措置)については損失補償が必要というのが判例である(最判昭和47年5月30日)。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)386頁。なお同条1項2項に基づく措置については損失補償は不要である。

2) 誤り。都市計画法上の土地利用制限については補償不要と解されている。この制限は、現状での財産の利用を固定化するだけであって、財産の本来の効用を妨げるわけではないからである。櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)395−396頁。

3) 正しい。最判昭和48年10月18日である。前掲塩野392頁、櫻井他397頁。

4) 誤り。肢にあるように本来この場合、土地所有者は収用委員会の所属する行政主体(都道府県)を被告として裁決取消の訴えを提起すべきだが、土地収用法133条3項は都道府県ではなく「起業者」を被告とする旨規定している(形式的当事者訴訟)。前掲塩野268頁、櫻井他351頁。

5) 誤り。この場合損失補償を否定するのが判例である(最判昭和58年2月18日)。ガソリンタンク自体が社会に対する危険性を有しており、規制を受ける財産の側に規制の原因があり、危険防止のための消極的規制は受忍すべき義務があるという考えに基づく(状態責任。前掲櫻井他395頁)。前掲塩野387頁。