■2013年行政書士試験・民法2(債権)

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■詐害行為取消権(2013−30)【判例問題】

詐害行為取消権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 遺産分割協議は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であるが、相続人の意思を尊重すべき身分行為であり、詐害行為取消権の対象となる財産権を目的とする法律行為にはあたらない。

2) 相続放棄は、責任財産を積極的に減少させる行為ではなく、消極的にその増加を妨げる行為にすぎず、また、相続放棄は、身分行為であるから、他人の意思によって強制されるべきではないので、詐害行為取消権行使の対象とならない。

3) 離婚における財産分与は、身分行為にともなうものではあるが、財産権を目的とする法律行為であるから、財産分与が配偶者の生活維持のためやむをえないと認められるなど特段の事情がない限り、詐害行為取消権の対象となる。

4) 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、債権者が複数存在するときは、取消債権者は、総債権者の総債権額のうち自己が配当により弁済を受けるべき割合額でのみ取り消すことができる。

5) 詐害行為取消権は、総ての債権者の利益のために債務者の責任財産を保全する目的において行使されるべき権利であるから、取消しに基づいて返還すべき財産が金銭である場合に、取消債権者は受益者に対して直接自己への引渡しを求めることはできない。

■解説

【難易度】やや難。

1) 誤り。判例は、遺産分割は、共同相続人の間で相続財産の帰属を確定させる行為であり、財産権を目的とする法律行為にあたるとしている(最判平成11年6月11日)。つまり詐害行為取消権の対象になる。

2) 正しい。最判昭和49年9月20日である。野村−栗田−池田−永田『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)104−105頁。

3) 誤り。この場合、原則詐害行為取消権の対象にならないが、768条3項の趣旨に反し不相当に過大であり、財産分与に仮託してなされたような財産の処分と言えるような特段の事情がある場合は、対象になるというのが判例である(最判昭和58年12月19日)。前掲野村他104−105頁。

4) 誤り。詐害行為取消権の範囲は原則債権者を害する程度、即ち債権額である(大判明治36年12月7日)。しかし詐害行為の目的物が不可分の場合、その目的物が債権額を超える場合でも、詐害行為を全部取消し得る(最判昭和30年10月11日)。例えば債権額<不動産価額の場合であっても、債権保全のため当該不動産の贈与行為全部を取消し得る。前掲野村他112−113頁。

5) 誤り。詐害行為取消権を行使した債権者は、取消に基づいて返還すべき財産が動産や金銭である場合、債務者ではなく自己に引渡しを求める事ができるというのが判例である(大判大正10年6月18日)。前掲野村他114頁。

■解除(2013−31)【条文知識問題】

契約の解除に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡しまでの間にAの火の不始末により当該建物が焼失した。Bは、引渡し期日が到来した後でなければ、当該売買契約を解除することができない。

イ) Aが、その所有する建物をBに売却する契約を締結したが、その後、引渡し期日が到来してもAはBに建物を引き渡していない。Bが、期間を定めずに催告した場合、Bは改めて相当の期間を定めて催告をしなければ、当該売買契約を解除することはできない。

ウ) AとBが、その共有する建物をCに売却する契約を締結したが、その後、AとBは、引渡し期日が到来してもCに建物を引き渡していない。Cが、当該売買契約を解除するためには、Aに対してのみ解除の意思表示をするのでは足りない。

エ) Aが、その所有する土地をBに売却する契約を締結し、その後、Bが、この土地をCに転売した。Bが、代金を支払わないため、Aが、A・B間の売買契約を解除した場合、C名義への移転登記が完了しているか否かに関わらず、Cは、この土地の所有権を主張することができる。

オ) Aが、B所有の自動車をCに売却する契約を締結し、Cが、使用していたが、その後、Bが、所有権に基づいてこの自動車をCから回収したため、Cは、A・C間の売買契約を解除した。この場合、Cは、Aに対しこの自動車の使用利益(相当額)を返還する義務を負う。

1) ア)、エ)
2) イ)、ウ)
3) イ)、オ)
4) ウ)、エ)
5) ウ)、オ)

■解説

【難易度】普通。

ア) 誤り。当該建物は「Aの過失」により焼失しているので、危険負担ではなく債務不履行(履行不能)が問題となる。そして履行不能の場合、不能という性質上解除権の行使(543条)について、催告や履行期の到来は不要と解されている。藤岡−磯村−浦河−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)44頁。

イ) 誤り。引渡期限が来てもAが当該建物を引き渡していないのだから、履行遅滞(412条)が問題となり得る。履行遅滞の場合、債権者は相当期間を定めた履行の催告の後解除権を行使することになるが(541条)、相当期間を定めていない催告をした場合でも、相当期間たてば解除はできると解されている(改めての催告は不要である)。前掲藤岡他43頁。

ウ) 正しい。544条1項。

エ) 誤り。解除の結果として第三者Cの権利を害することはできないが(545条1項但書)、判例はC(解除前の第三者)がこの保護を受けるには対抗要件としての登記が必要とする(大判大正10年5月17日)。前掲藤岡他50頁。

オ) 正しい。解除権行使の結果、当事者は原状回復義務を負うことになるので(544条1項)、物(自動車)が給付されていればこれを返還しなければならず、さらに545条2項との均衡上物の使用利益も返還しなければならないからである。前掲藤岡他49頁。

よって正解は5)となろう。

■賃貸借(2013−32)【条文知識問題】

Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。この場合に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

ア) Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。

イ) Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。

ウ) Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。

エ) Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

オ) Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。

1) 1つ
2) 2つ
3) 3つ
4) 4つ
5) 5つ

■解説

【難易度】難しい。

ア) 誤り。この場合Cは、甲土地についてのAの取得時効をBに対して援用できないというのが判例である(最判昭和44年7月15日)。山田−河内−安永−松久『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)226頁。

イ) 正しい。本肢のような賃料請求の他、Cに対し解約の申し入れや解除をする場合、Bは登記を必要とするか。判例はいずれについても登記必要説をとっている(大判昭和8年5月9日、最判昭和25年11月30日、最判昭和49年3月19日)。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』第2版(1994年、有斐閣)68頁。

ウ) 誤り。「第三者の弁済」が問題となる事例である。この場合Cが弁済について利害関係のない第三者である場合、Aの意思に反してまで賃料をBに支払うことはできないが、この事例のような、借地上の建物の賃借人の地代の弁済については、法律上の利害関係があるとするのが判例である(昭和63年7月1日)。よってCはAに無断でも土地賃料の支払をBになし得る(474条1項但書に言う「反対の意思表示」の存在も読み取れない)。前掲野村他221−222頁。

エ) 正しい。借地上の建物譲渡には土地賃借権の譲渡を伴うというのが判例であり、そうである以上、612条1項規定の通り賃貸人の承諾が必要となる。前掲藤岡他128頁参照。

オ) 正しい。Cに建物退去、土地明渡を請求することを得ない(最判昭和38年2月21日)。前掲藤岡他162頁参照。

よって正解はア)、ウ)の2つとなろう。

■組合(2013−33)【判例問題】

A、B、C、D、Eの5人が、各自で出資をして共同の事業を営むことを約して組合を設立した場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

1) Aは、組合の常務について単独で行うことはできず、総組合員の過半数の賛成が必要であるから、Aのほか2人以上の組合員の賛成を得た上で行わなければならない。

2) 組合契約でA、B、Cの3人を業務執行者とした場合には、組合の業務の執行は、A、B、C全員の合意で決しなければならず、AとBだけの合意では決することはできない。

3) 組合契約で組合の存続期間を定めない場合に、Aは、やむを得ない事由があっても、組合に不利な時期に脱退することはできない。

4) やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約がある場合に、Aは、適任者を推薦しない限り当該組合を脱退することはできない。

5) 組合財産に属する特定の不動産について、第三者が不法な保存登記をした場合に、Aは、単独で当該第三者に対して抹消登記請求をすることができる。

■解説

【難易度】普通。

1) 誤り。組合の「常務」については、各組合員又は各業務執行者が単独で行うことができる(670条3項本文)。

2) 誤り。組合の業務の執行につき業務執行者が複数いる場合は、業務執行者の過半数で決する(670条2項)。よってこの場合ABの合意があれば決することは可能である。

3) 誤り。組合の存続期間を定めない場合、いつでも脱退できるのが原則である。但しこの原則は、組合が不利な時期には脱退できないという例外があるが、それでもやむを得ない事由がある場合は脱退が認められる(678条)。

4) 誤り。組合員の脱退に関する678条は強行規定であるので、本肢のような「やむを得ない事由があっても任意の脱退を許さない旨の組合契約」は無効とするのが判例である(最判平成11年2月23日)。前掲藤岡他204頁。

5) 正しい。この場合共有についての252条但書を適用し、各組合員単独による当該第三者への抹消登記請求を肯定するのが判例である(最判昭和33年7月22日)。前掲藤岡他202頁。

■不法原因給付(2013−34)【条文知識問題】

Aは、配偶者がいるにもかかわらず、配偶者以外のBと不倫関係にあり、その関係を維持する目的で、A所有の甲建物をBに贈与した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、正しいものはどれか。

1) 甲建物がAからBに引き渡されていない場合に、A・B間の贈与が書面によってなされたときには、Aは、Bからの引渡請求を拒むことはできない。

2) 甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。

3) 甲建物が未登記建物である場合において、Aが甲建物をBに引き渡した後に同建物についてA名義の保存登記をしたときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することができる。

4) A名義の登記がなされた甲建物がBに引き渡されたときには、Aは、Bからの甲建物についての移転登記請求を拒むことはできない。

5) 贈与契約のいきさつにおいて、Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱なものであっても、Aが未登記建物である甲建物をBに引き渡したときには、Aは、Bに対して甲建物の返還を請求することはできない。

■解説

【難易度】普通。

1) 誤り。「不倫関係の維持を目的」とした不動産の贈与、というのは公序良俗違反(90条)といえる。公序良俗違反は無効である以上、AはBの請求を708拒否できる。

2) 正しい。「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」(708条本文)が、如何なる場合に「給付」があったと言えるか。判例は、未登記建物は引渡があれば708条の「給付」に該当するとする(最大判昭和45年10月21日)。よってAはBに甲の返還を求めることはできない。前掲藤原412頁。

3) 誤り。2)と同様の理由でAはBに甲の返還を求めることはできない。その結果、給付した物の返還を請求できなくなったことの「反射的効果」として、所有権はBに帰属するというのが判例である(最大判昭和45年10月21日)。前掲藤原412−413頁。

4) 誤り。既登記建物が引渡されただけでは708条に言う「引渡」とは言えず、所有権移転登記手続の履践をも要するというのが判例である(最判昭和46年10月28日)。よってAはBへの移転登記請求を拒絶し得る。前掲藤原他412−413頁。

5) 誤り。708条但書の適用における「両当事者の不法性の衡量」が問題となる。判例は、「Aの不法性がBの不法性に比してきわめて微弱」である場合、708条の適用はないとする(最判昭和29年8月30日)。よってこの場合、708条但書に基づきAは返還請求をし得るということになろう。前掲藤岡他411頁。