■2013年行政書士試験・民法1(総則、物権)

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■錯誤(2013−27)【判例問題】

錯誤による意思表示に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) 法律行為の要素に関する錯誤というためには、一般取引の通念にかかわりなく、当該表意者のみにとって、法律行為の主要部分につき錯誤がなければ当該意思表示をしなかったであろうということが認められれば足りる。

イ) 法律行為の相手方の誤認(人違い)の錯誤については、売買においては法律行為の要素の錯誤となるが、賃貸借や委任においては法律行為の要素の錯誤とはならない。

ウ) 動機の錯誤については、表意者が相手方にその動機を意思表示の内容に加えるものとして明示的に表示したときは法律行為の要素の錯誤となるが、動機が黙示的に表示されるにとどまるときは法律行為の要素の錯誤となることはない。

エ) 表意者が錯誤による意思表示の無効を主張しないときは、相手方または第三者は無効の主張をすることはできないが、第三者が表意者に対する債権を保全する必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めたときは、第三者たる債権者は債務者たる表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することができる。

オ) 表意者が錯誤に陥ったことについて重大な過失があったときは、表意者は、自ら意思表示の無効を主張することができない。この場合には、相手方が、表意者に重大な過失があったことについて主張・立証しなければならない。

1) ア)、イ)
2) ア)、ウ)
3) イ)、エ)
4) ウ)、オ)
5) エ)、オ)

■解説

【難易度】普通。

ア) 誤り。「要素の錯誤」は、「因果関係」と「重要性」の2要素で判断される。前者は錯誤がなければ表意者は意思表示をしなかったということである。また後者は、当該錯誤が一般取引の通念に照らし重要な部分についての錯誤であること、を意味する。内田貴『民法T』第2版(1999年、東大出版会)67頁。大判大正3年12月15日。

イ) 誤り。人違いの錯誤は、「売買」においては一般的に錯誤にならない(大判大正8年12月16日。但し不動産売買において錯誤になるとされた事案として、最判昭和29年2月12日)。一方「委任」においては相手が誰かは重要な意味を持つ。錯誤を認めた事案として大判昭和10年12月13日。山田−河内−安永−松久『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)133頁。

ウ) 誤り。動機の錯誤は、動機が相手方に表示され意思表示の内容になった場合、要素の錯誤とし得るが(大判大正3年12月15日)、動機の表示は黙示のものでもよい(最判平成1年9月14日)。前掲内田65頁。

エ) 正しい。「第三者」による錯誤無効の主張は許されないというのが判例だが(最判昭和40年9月10日)、本肢のように債権保全の必要性があり表意者が意思表示の瑕疵を認めている場合、例外として第三者からの錯誤無効の主張を認めている(最判昭和45年3月26日)。前掲内田71−73頁。

オ) 正しい。前掲内田67−68頁。大判大正7年12月3日。

よって正解は5)のエ)、オ)になろう。

■取得時効と登記(2013−28)【判例問題】

不動産の取得時効と登記に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 不動産の取得時効の完成後、占有者が登記をしないうちに、その不動産につき第三者のために抵当権設定登記がなされた場合であっても、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したときは、特段の事情がない限り、占有者はその不動産を時効により取得し、その結果、抵当権は消滅する。

2) 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成する前に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができない。

3) 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して、登記がなければ時効取得をもって対抗することができず、このことは、その占有者が、その後さらに時効取得に必要な期間、占有を継続したとしても、特段の事情がない限り、異ならない。

4) 不動産の取得時効の完成後、占有者が、その時効が完成した後に当該不動産を譲り受けた者に対して時効を主張するにあたり、起算点を自由に選択して取得時効を援用することは妨げられない。

5) 不動産を時効により取得した占有者は、取得時効が完成した後にその不動産を譲り受けて登記をした者に対して、その譲受人が背信的悪意者であるときには、登記がなくても時効取得をもって対抗することができるが、その譲受人が背信的悪意者であると認められるためには、同人が当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識していたことを要する。

■解説

【難易度】普通。

1) 正しい。最判平成24年3月16日(判決文〔最高裁。pdfファイル〕)である。

2) 誤り。時効が完成した時点における、占有者と譲受人は「当事者」という関係になるので、占有者が時効を主張するのに登記は不要である(最判昭和41年11月22日)。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』第2版(1994年、有斐閣)62頁。

3) 誤り。2)と異なり占有者は、時効完成後に不動産を譲り受けた者に対しては、登記がなければ時効完成を対抗できない(大連判大正14年7月1日)。しかしその後、さらに占有者が時効取得に必要な期間占有を継続すれば、この譲受人に対し登記なくして時効取得を主張し得るというのが判例である(最判昭和36年7月20日)。

4) 誤り。起算点を占有者が選択し得るとすると、譲受人がいつ利害関係を持つようになったかを操作することができる。つまり時効完成前に譲受人が不動産を取得したとすることも可能になり、結果2)と同じ理由で占有者は登記なくして譲受人に対抗できることになる(逆算説)が、判例はこのような考えを否定する(大判昭和14年7月19日)。前掲淡路他64頁。

5) 誤り。譲受人が背信的悪意者であれば、登記なくして時効取得を対抗できるという説明は正しいが(最判昭和43年8月2日)、譲受人が背信的悪意者であると認定するのに、「同人が当該不動産を譲り受けた時点において、少なくとも、その占有者が取得時効の成立に必要な要件を充足していることについて認識」している必要はなく、占有者が「多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識」していれば足りるとするのが判例である(平成18年1月17日。判決文〔最高裁。pdfファイル〕)。前掲淡路他72頁。

■売買契約をめぐる問題(2013−29)【判例問題】

Aが自己所有の事務機器甲(以下、「甲」という。)をBに売却する旨の売買契約(以下、「本件売買契約」という。)が締結されたが、BはAに対して売買代金を支払わないうちに甲をCに転売してしまった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) Aが甲をすでにBに引き渡しており、さらにBがこれをCに引き渡した場合であっても、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、甲につき先取特権を行使することができる。

2) Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、同時履行の抗弁権を行使してこれを拒むことができる。

3) 本件売買契約において所有権留保特約が存在し、AがBから売買代金の支払いを受けていない場合であったとしても、それらのことは、Cが甲の所有権を承継取得することを何ら妨げるものではない。

4) Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、CがAに対して所有権に基づいてその引渡しを求めたとき、Aは、Bから売買代金の支払いを受けていないときは、留置権を行使してこれを拒むことができる。

5) Aが甲をまだBに引き渡していない場合において、Bが売買代金を支払わないことを理由にAが本件売買契約を解除(債務不履行解除)したとしても、Aは、Cからの所有権に基づく甲の引渡請求を拒むことはできない。

■解説

【難易度】普通。

1) 誤り。甲がBの下にある段階は、Aは動産売買の先取特権を行使し得るが(321条)、甲は第三者Cに引き渡されているので、先取特権の追及効がなくなる(333条)。よって甲につき先取特権を行使し得ない。なおこの場合Aは、BがCに対し有する債権につき物上代位できる場合がある(304条)。内田貴『民法V』初版(1996年、東大出版会)465−466頁。

2) 誤り。同時履行の抗弁権(533条)は、留置権と異なり契約の相手方に対してのみ行使し得る。よってAは「C」に同時履行の抗弁権を行使し得ない。 前掲淡路他212頁。

3) 誤り。所有権留保特約の結果、甲についての所有権はAに留保されているので、Cが甲について即時取得をしない限り、甲の所有権を取得し得ない。前掲内田500頁以下。

4) 正しい。留置権(295条)は、同時履行の抗弁権と異なり物権であるから、誰に対してもこれを行使し得る。前掲淡路他212頁。

5) 誤り。そもそもAの解除により契約は遡及的に消滅するが(545条1項本文)、第三者の権利を害することを得ない(545条1項但書)。しかしこの場合、第三者CがAに対抗するには対抗要件を必要とするので(最判昭和33年6月14日)、甲の引渡を受けていないCはAに対抗できない。逆にいえばAはCの引渡請求を拒むことができる。前掲淡路他55頁。