■2013年行政書士試験・憲法2(統治機構)

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■権力分立(2013−5)【理論問題】

権力分立に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) アメリカでは、国会議員と執行府の長の双方が国民によって直接選挙されるが、権力分立の趣旨を徹底するために、大統領による議会の解散と議会による大統領の不信任のメカニズムが組み込まれている。

2) 政党が政治において主導的役割を演じる政党国家化が進むと、議院内閣制の国では議会の多数党が内閣を組織するようになり、内閣不信任案の可決という形での議会による内閣の責任追及の仕組みが、一般には、より実効的に機能するようになった。

3) 伝統的には、議会の立法権の本質は、国民に権利・利益を付与する法規範の制定であると考えられてきたが、行政国家化の進展とともに、国民の権利を制限したり義務を課したりするという側面が重視されるようになった。

4) 一般性・抽象性を欠いた個別具体的な事件についての法律(処分的法律)であっても、権力分立の核心を侵さず、社会国家にふさわしい実質的・合理的な取扱いの違いを設定する趣旨のものであれば、必ずしも権力分立や平等原則の趣旨に反するものではないとの見解も有力である。

5) 君主制の伝統が強く、近代憲法制定時に政府と裁判所とが反目したフランスやドイツでは、行政権を統制するために、民事・刑事を扱う裁判所が行政事件も担当してきた。

■解説

【難易度】やや難。

1) 誤り。アメリカの大統領は、形式的には間接選挙で選出される(合衆国憲法2条参照)。また大統領と議会の間には、日本のような解散権と不信任決議は存在しない。佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)474頁。

2) 誤り。議会の多数党が内閣を組織するようになれば、内閣不信任決議は可決されなくなるので、不信任決議による内閣への責任追及は機能しなくなる。「政党国家」の下では、「伝統的な議会と政府の関係は、政府・与党と野党の対抗関係へと機能的に変化」することに注意。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)279頁。

3) 誤り。説明が逆である。「伝統的には、議会の立法権の本質は、『国民の権利を制限したり義務を課したりする』法規範の制定であると考えられてきたが、行政国家化の進展とともに、『国民に権利・利益を付与するという側面』が重視されるようになった」、が正しい。前掲芦部270頁、佐藤432頁。

4) 正しい。前肢とも関係する項目である。

憲法41条の「立法」概念は、「法規」という特定の内容の法規範を定立することであり、この法規とは伝統的には「国民の権利を直接に制限し義務を課す規範」と解されてきたが、現在では「およそ一般的・抽象的な法規範」を意味するもの、と解されている。そしてこの一般性、抽象性は、法律が不特定多数の人事件に適用されることを意味し、法適用の平等性や予測可能性を担保してきた。

しかしこの一般性、抽象性は、個別的事項を対象とする法律、処分的法律(措置法)の出現で問題とされるに至る。処分的法律はドイツで問題となったが、それが問題文で述べられている趣旨を持つ限り、権力分立や平等原則に反しない、というのがドイツの判例、通説であり、日本でもそのように解する有力説がある。この点につき特に前掲芦部285−287頁本文及び注参照。前掲佐藤432−434頁。

5) 誤り。フランスやドイツといったヨーロッパ諸国では、は元々民事、刑事を扱う裁判所とは「別に」行政裁判所が設けられている。前掲芦部309頁、佐藤590頁。

■議院の権能(2013−6)【条文知識問題】

次のア)−オ)のうち、議院の権能として正しいものはいくつあるか。

ア) 会期の決定

イ) 議員の資格争訟

ウ) 裁判官の弾劾

エ) 議院規則の制定

オ) 国政に関する調査

1) 1つ
2) 2つ
3) 3つ
4) 4つ
5) 5つ

■解説

【難易度】普通。

ア) 議院の権能ではない。「国会」の権能である。臨時会と特別会の会期については、「両議院一致」の議決で、これを定める(国会法11条)。前掲佐藤445−446頁。

イ) 議院の権能である。「両議院」は、各々その議員の資格に関する争訟を裁判する(憲法55条本文)。

ウ) 議院の権能ではない。裁判官の弾劾は「弾劾裁判所」の権能である。なお弾劾裁判所の設置国会の権能である(64条1項)が、設置された弾劾裁判所は「それ自体独自の機関」(前掲佐藤458頁)である。

エ) 議院の権能である。「両議院」は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め」ることができる(58条2項)。

オ) 議院の権能である。「両議院」は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる(62条)。

正解はイ)、エ)、オ)の3つとなろう。

■レぺタ訴訟(2013−7)【判例問題】

次の1)−5)は、法廷内における傍聴人のメモ採取を禁止することが憲法に違反しないかが争われた事件の最高裁判所判決に関する文章である。判決の趣旨と異なるものはどれか。

1) 報道機関の取材の自由は憲法21条1項の規定の保障の下にあることはいうまでもないが、この自由は他の国民一般にも平等に保障されるものであり、司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してのみ法廷内でのメモ採取を許可することが許されるかは、それが表現の自由に関わることに鑑みても、法の下の平等との関係で慎重な審査を必要とする。

2) 憲法82条1項は、裁判の対審及び判決が公開の法廷で行われるべきことを定めているが、その趣旨は、裁判を一般に公開して裁判が公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある。

3) 憲法21条1項は表現の自由を保障しており、各人が自由にさまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会をもつことは、個人の人格発展にも民主主義社会にとっても必要不可欠であるから、情報を摂取する自由は、右規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれる。

4) さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限り、筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであるが、これは憲法21条1項の規定によって直接保障される表現の自由そのものとは異なるから、その制限又は禁止には、表現の自由に制約を加える場合に一般に必要とされる厳格な基準が要求されるものではない。

5) 傍聴人のメモを取る行為が公正かつ円滑な訴訟の運営を妨げるに至ることは通常はあり得ないのであって、特段の事情のない限り、これを傍聴人の自由に任せるべきであり、それが憲法21条1項の規定の精神に合致する。

■解説

【難易度】普通。レぺタ訴訟(最大判平成1年3月8日)からの出題である。レぺタ訴訟は行政書士試験では最頻出判例の1つなので、この際判決文全文(最高裁。pdfファイル)を読んでおくべきであろう。但し判例の理論構造は複雑なので要注意である。

1) 判例の趣旨と一致しない。よってこれが正解である。レぺタに限らず判例は、取材の自由が憲法21条1項によって保障されると言わず、「十分尊重に値する」(博多駅事件〔最大決昭和44年11月26日〕)という立場をとる。前掲芦部177頁。また司法記者クラブにのみ法廷でのメモ採取行為と認めることについては、14条との関係につき合理性を欠く措置ではない、としている。

2) 判例の趣旨と一致する。前掲芦部344頁、佐藤606頁。

3) 判例の趣旨と一致する。前掲佐藤276頁。

4) 判例の趣旨と一致する。「筆記行為の自由は、憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきである」という部分に要注意。前掲佐藤276−277頁。

5) 判例の趣旨と一致する。前掲芦部179頁、佐藤277頁。