■2013年行政書士試験・憲法1(人権)

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■国籍法違憲判決(2013−3)【判例問題】

次の文章は、ある最高裁判所判決の意見の一節である。空欄(ア)−(ウ)に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。

一般に、立法府が違憲な(ア)状態を続けているとき、その解消は第一次的に立法府の手に委ねられるべきであって、とりわけ本件におけるように、問題が、その性質上本来立法府の広範な裁量に委ねられるべき国籍取得の要件と手続に関するものであり、かつ、問題となる違憲が(イ)原則違反であるような場合には、司法権がその(ア)に介入し得る余地は極めて限られているということ自体は否定できない。

しかし、立法府が既に一定の立法政策に立った判断を下しており、また、その判断が示している基本的な方向に沿って考えるならば、未だ具体的な立法がされていない部分においても合理的な選択の余地は極めて限られていると考えられる場合において、著しく不合理な差別を受けている者を個別的な訴訟の範囲内で救済するために、立法府が既に示している基本的判断に抵触しない範囲で、司法権が現行法の合理的(ウ)解釈により違憲状態の解消を目指すことは、全く許されないことではないと考える。
(最大判平成20年6月4日民集62巻6号1367頁以下における藤田宙靖意見)

アイウ
1) 不作為 比例 限定
2) 作為 比例 限定
3) 不作為 相互主義 有権
4) 作為 法の下の平等 拡張
5) 不作為 法の下の平等 拡張

■解説

【難易度】やや難。昨年も出題された国籍法違憲判決からの出題である。

この事件の論点は次のようなものである。即ち、法律上の婚姻関係にない日本人父と外国人母の間に生まれた子が、「出生後」父から認知を受け国籍取得届を出したものの、旧国籍法3条1項の要件(準正の要件)を具備しないという理由で当該届を受理されなかったが、これと、@ 出生後の認知があり日本人父と外国人母が婚姻した場合、子(準正子)は届け出により国籍を取得するという区別、A 外国人父と「日本人母」との間に生まれた非嫡出子については、出生により日本国籍を取得する(国籍法2条1号参照)という区別が、法の下の平等に反しないか、ということである。つまりイ)には「法の下の平等」が入る。

そして藤田意見は、国籍法は非準正子についての国籍取得を排除する趣旨でないにもかかわらず、上記のように国籍取得ができない結果を生む規定を立法の不備、つまり違憲のア)不作為」状態ととらえ、旧国籍法3条1項のウ)「拡張」解釈により、3条1項を非準正子にも適用できるようにして、救済を図るべきことを主張した。

よって正解は5)である。本問題については、芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)136−137頁、前掲佐藤166頁。佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)108頁参照。

■私人間効力論(2013−4)【判例問題】

私法上の法律関係における憲法の効力に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

1) 私人間においては、一方が他方より優越的地位にある場合には私法の一般規定を通じ憲法の効力を直接及ぼすことができるが、それ以外の場合は、私的自治の原則によって問題の解決が図られるべきである。

2) 私立学校は、建学の精神に基づく独自の教育方針を立て、学則を制定することができるが、学生の政治活動を理由に退学処分を行うことは憲法19条に反し許されない。

3) 性別による差別を禁止する憲法14条1項の効力は労働関係に直接及ぶことになるので、男女間で定年に差異を設けることについて経営上の合理性が認められるとしても、女性を不利益に扱うことは許されない。

4) 自衛隊基地建設に関連して、国が私人と対等な立場で締結する私法上の契約は、実質的に公権力の発動と同視できるような特段の事情がない限り、憲法9条の直接適用を受けない。

5) 企業者が、労働者の思想信条を理由に雇い入れを拒むことは、思想信条の自由の重要性に鑑み許されないが、いったん雇い入れた後は、思想信条を理由に不利益な取り扱いがなされてもこれを当然に違法とすることはできない。

■解説

【難易度】普通。

1) 誤り。「一方が他方より優越的地位にある場合」であっても、憲法の直接適用を認めないのが判例である(三菱樹脂事件。最大判昭和48年12月26日)。前掲芦部112−113頁、前掲佐藤166頁。

2) 誤り。私立大学が、学外での政治活動を制限する学則の細則に違反した学生を自宅謹慎処分にし、その後退学した処分にした行為につき、不合理ではなく懲戒権者の裁量の範囲内としたのが判例である(昭和女子大事件。最判昭和49年7月19日)。前掲芦部113−114頁、佐藤166頁注109。

3) 誤り。男性より若く設定された女子定年年齢と法の下の平等の関係が争われた日産自動車事件において、判例(最判昭和56年3月24日)は、憲法を直接適用したのではなく民法90条を適用し、女子定年年齢にかかわる就業規則を無効とした(間接効力説)。前掲芦部113頁、佐藤166頁。

4) 正しい。百里基地訴訟(最判平成1年6月20日)である。私法行為であれば、国が憲法の拘束力を免れる結果を是認するこの判示部分には批判が多い。なおこの事案は国が当事者である点で、私人間効力論が当てはまる事案とは異なる。前掲芦部114頁、佐藤642頁。

5) 誤り。説明が逆である。「企業者が、労働者の思想信条を理由に雇い入れを拒むこと」も許されるが、「いったん雇い入れた後は、思想信条を理由に不利益な取り扱い」をすることは許されない、というのが判例である(三菱樹脂事件)。三菱樹脂事件は、雇入れる段階ではなく仮採用後の本採用拒否(雇入れ後の解雇)が問題となったことには注意。前掲芦部112−113頁、佐藤166頁注108。