■2012年行政書士試験・法令科目多肢選択式

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■教育権の所在(2012−41)【判例問題】

次の文章は、公教育をめぐる2つの対立する考え方に関する最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。空欄(ア)−(エ)に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1−20)から選びなさい。

一の見解は、子どもの教育は、親を含む国民全体の共通関心事であり、公教育制度は、このような国民の期待と要求に応じて形成、実施されるものであつて、そこにおいて支配し、実現されるべきものは国民全体の教育意思であるが、この国民全体の教育意思は、憲法の採用する議会制民主主義の下においては、国民全体の意思の決定の唯一のルートである国会の法律制定を通じて具体化されるべきものであるから、法律は、当然に、公教育における(ア)についても包括的にこれを定めることができ、また、教育行政機関も、法律の授権に基づく限り、広くこれらの事項について決定権限を有する、と主張する。

これに対し、他の見解は、子どもの教育は、憲法二六条の保障する子どもの教育を受ける権利に対する責務として行われるべきもので、このような責務をになう者は、親を中心とする国民全体であり、公教育としての子どもの教育は、いわば親の教育義務の共同化ともいうべき性格をもつのであつて、それ故にまた、教基法*一○条一項も、教育は、国民全体の信託の下に、これに対して直接に責任を負うように行われなければならないとしている、したがつて、権力主体としての国の子どもの教育に対するかかわり合いは、右のような国民の教育義務の遂行を側面から助成するための(イ)に限られ、子どもの(ア)については、国は原則として介入権能をもたず、教育は、その実施にあたる教師が、その(ウ)としての立場から、国民全体に対して教育的、文化的責任を負うような形で、……決定、遂行すべきものであり、このことはまた、憲法二三条における学問の自由の保障が、学問研究の自由ばかりでなく、(エ)をも含み、(エ)は、教育の本質上、高等教育のみならず、普通教育におけるそれにも及ぶと解すべきことによつても裏付けられる、と主張するのである。
(最大判昭和51年5月21日刑集30巻5号615頁)(注)*教育基本法

1) 初等教育 2) 教科書検定 3) 諸条件の整備 4) 教授の自由 5) 教育公務員 6) 第三者 7) 教科用図書 8) 学習指導要領 9) 教育専門家 10) 教育の内容及び方法 11) 研究者 12) 管理者 13) 中等教育 14) 学習権 15) 懲戒権 16) 私立学校の自治 17) 大学の自治 18) 公の支配 19) 職務命令 20) 指揮監督

■解説

【難易度】やや難しい。旭川学力テスト事件からの出題である。

ア) 10)「教育の内容及び方法」。判決文に言う「一の見解」は「国家教育権」説である。この説は、「議会制民主主義」を根拠として、学校教育内容の決定権が国家にあるものとする。佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)370頁、芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第3版(2002年、岩波書店)249頁。

イ) 3)「諸条件の整備」。「これに対し」からは「国民教育権説」についての説明である。この説は、国家機関による決定権を原則否定し、教育権は親、その信託を受けた教師を中心とする国民全体にある、とする。前掲佐藤370頁、芦部249頁。上記2説について本件判決は、どちらも「極端かつ一方的」としている。前掲佐藤370頁、芦部240頁。

ウ) 9)「教育専門家」。

エ) 4)「教授の自由」。この点は下級教育機関における「教授の自由」の是非について述べられている。この点について本件判決は、下級教育機関における教師の教授の自由を認めたが、「完全な教授の自由を認めることは、とうてい許されない」としている。前掲芦部157頁。

■行政規則(2012−42)【判例問題】

次の文章は、学校行事において教職員に国歌の起立斉唱等を義務付けることの是非が争われた最高裁判所判決の一節(一部を省略)である。空欄(ア)−(エ)に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1−20)から選びなさい。

本件(ア)は、……学習指導要領を踏まえ、上級行政機関である都教委*が関係下級行政機関である都立学校の各校長を名宛人としてその職務権限の行使を指揮するために発出したものであって、個々の教職員を名宛人とするものではなく、本件(イ)の発出を待たずに当該(ア)自体によって個々の教職員に具体的な義務を課すものではない。また、本件(ア)には、……各校長に対し、本件(イ)の発出の必要性を基礎付ける事項を示すとともに、教職員がこれに従わない場合は服務上の責任を問われることの周知を命ずる旨の文言があり、これらは国歌斉唱の際の起立斉唱又はピアノ伴奏の実施が必要に応じて(イ)により確保されるべきことを前提とする趣旨と解されるものの、本件(イ)の発出を命ずる旨及びその範囲等を示す文言は含まれておらず、具体的にどの範囲の教職員に対し本件(イ)を発するか等については個々の式典及び教職員ごとの個別的な事情に応じて各校長の(ウ)に委ねられているものと解される。

そして、本件(ア)では、上記のとおり、本件(イ)の違反について教職員の責任を問う方法も、(エ)に限定されておらず、訓告や注意等も含み得る表現が採られており、具体的にどのような問責の方法を採るかは個々の教職員ごとの個別的な事情に応じて都教委の(ウ)によることが前提とされているものと解される。原審の指摘する都教委の校長連絡会等を通じての各校長への指導の内容等を勘案しても、本件(ア)それ自体の文言や性質等に則したこれらの(ウ)の存在が否定されるものとは解されない。

したがって、本件(ア)をもって、本件(イ)と不可分一体のものとしてこれと同視することはできず、本件(イ)を受ける教職員に条件付きで(エ)を受けるという法的効果を生じさせるものとみることもできない。
(最一小判平成24年2月9日裁判所時報1549号4頁)(注)*東京都教育委員会

1) 分限処分 2) 処分基準 3) 行政罰 4) 同意 5) 行政指導 6) 指示 7) 法規命令 8) 職務命令 9) 指導指針 10) 下命 11) 懲戒処分 12) 監督処分 13) 政治的判断 14) 執行命令 15) 告示 16) 審査基準 17) 裁量 18) 勧告 19) 通達 20) 行政規則 

■解説

【難易度】やや難しい。かなり新しい判例からの出題であるが、君が代の伴奏をめぐっては他に日野市「君が代」ピアノ伴奏事件(最判平成19年2月27日)がある。前掲佐藤223頁。

ア) 19)「通達」。「本件(ア)は、−中略−個々の教職員を名宛人とするものではなく」という記述から穴埋めができよう。

イ) 8)「職務命令」。この個所は、学習指導要領→訓令、通達(下級機関の権限統制目的。行政機関の意思拘束)→職務命令(公務員個人を拘束)という関係を考えればよいと思われる。芝池義一『行政法総論講義』第4版(2001年、有斐閣)99頁参照。なお前記平成19年の判例も、君が代の伴奏についての職務命令を拒否したことによる戒告処分が問題となった事案である。

ウ) 17)「裁量」。エ)を参照することで何とか埋めることができようか。

エ) 11)「懲戒処分」。「違反について教職員の責任を問う方法も、(エ懲戒処分)に限定されておらず、訓告や注意等も含み得る表現が採られており、具体的にどのような問責の方法を採るかは個々の教職員ごとの個別的な事情に応じて都教委の(ウ裁量)によることが前提とされているものと解される」という個所を参照に穴埋めすることになろう。

■行政機関概念(2012−43)【理論問題】

次の文章の空欄(ア)−(エ)に当てはまる語句を、枠内の選択肢(1−20)から選びなさい。

(ア)法上の基礎概念である(イ)は、大きく二つの類型に分類して理解されている。一つは、行政主体とその外部との関係を基準として捉える作用法的(イ)概念である。例えば、行政処分を行う(ウ)がその権限に属する事務の一部をその(エ)である職員に委任し、またはこれに臨時に代理させて、私人に対する権限行使を行うような場合、この(ウ)と(エ)という区分は、上記の作用法的(イ)概念に基づくものである。

もう一つは、各々の(イ)が担当する事務を単位として捉える事務配分的(イ)概念である。この概念は、現行法制の下では、国家(ア)法のとる制定法上の(イ)概念であって、行政事務を外部関係・内部関係に区分することなく全体として把握するとともに、さまざまな行政の行為形式を現実に即して理解するために適している。

1) 行政指導 2) 行政訴訟 3) 損失補償 4) 公務員 5) 行政委員会 6) 諮問機関 7) 責任者 8) 賠償 9) 警察 10) 行政庁 11) 行政代執行 12) 土地収用 13) 内閣 14) 行政手続 15) 補助機関 16) 行政機関 17) 参与機関 18) 行政救済 19) 行政組織 20) 法治主義 

■解説

【難易度】普通。ややとっつきにくい感はあるが難しくはない。

行政機関の説明について「作用法的機関概念」と「事務配分的機関概念」の2つがある。

前者は、行政決定を行い外部にそれを表明する(ウ 10行政庁)を中心に据え、その周りに色々な(イ 16行政機関)即ち、(エ 15補助機関)、諮問機関、執行機関等が配置されるというものであり、外部関係に着目したものである。

一方後者は、国家(ア 19行政組織)法による機関概念であり、それによると省、委員会、庁が国の行政機関とされている(国家行政組織法3条)。

本問については、塩野宏『行政法V』第2版(有斐閣、2001年)18頁以下、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)39頁以下参照。