■2012年行政書士試験・民法2(債権)

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■担保責任(2012−31)【条文知識問題】

Aは甲土地についてその売主Bとの間で売買契約を締結したが、甲土地には権利等に瑕疵があった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 甲土地の全部の所有権がCに属していたことを知りながらBがこれをAに売却した場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、甲土地の全部の所有権がCに属していたことについて善意のAは、その事実を知った時から1年以内に限り、Bに対して、契約を解除して、損害賠償を請求することができる。

2) 甲土地の全部の所有権がCに属していたことを知らずにBがこれをAに売却した場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、Bは、契約の時に甲土地の全部の所有権がCに属していたことについて善意のAに対して、単に甲土地の所有権を移転できない旨を通知して、契約の解除をすることができる。

3) 甲土地の一部の所有権がCに属していた場合において、BがCからその所有権を取得してAに移転することができないときは、Aは、甲土地の一部の所有権がCに属していたことについて善意であるか悪意であるかにかかわりなく、契約の時から1年以内に限り、Bに対して、その不足する部分の割合に応じて代金の減額請求をすることができる。

4) 契約の時に一定の面積を表示し、この数量を基礎として代金額を定めてBがAに甲土地を売却した場合において、甲土地の面積が契約時に表示された面積よりも実際には少なく、表示された面積が契約の目的を達成する上で特段の意味を有しているために実際の面積であればAがこれを買い受けなかったときは、その面積の不足について善意のAは、その事実を知った時から1年以内に限り、Bに対して、契約を解除して、損害賠償を請求することができる。

5) 甲土地についてCの抵当権が設定されていた場合において、Aがこれを知らずに買い受けたときに限り、Aは、Bに対して、契約を直ちに解除することができ、また、抵当権の行使により損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。

■解説

【難易度】難しい。

1) 誤り。この場合買主は、「善意悪意を問わず」契約を解除し得るが(561条)、この解除権の行使には、短期の期間制限(除斥期間)はない(10年の消滅時効にはかかる)。藤岡−磯村−浦河−松本康宏他『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)74頁。

2) 誤り。この場合善意の売主Bは、買主Aが「悪意」であれば「単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができる」(562条2項)のである。買主Aが「善意」の場合、Bは損害を賠償して解除する必要がある。前掲藤岡他74頁。

3) 誤り。「悪意」の場合は契約の時から1年以内に限り、Bに対して、その不足する部分の割合に応じて代金の減額請求(563条1項)をすることができるのである。善意の場合は、代金減額請求を行使できる期間の起算点が異なる(564条)。

4) 正しい。565、563、564条。

5) 誤り。当該抵当権の行使によりAが土地の所有権を失った場合、Aの「善意悪意を問わず」契約を解除できる。また損害賠償についても買主の「善意悪意を問わない」(567条1、3項)。

■無償契約(2012−32)【条文知識問題】

無償契約に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって、その効力を失う。

2) 贈与契約においては対価性を維持する必要がないため、目的物に瑕疵があったとしても、贈与者は、それについて善意であるか悪意であるかにかかわりなく担保責任を負わない。

3) 使用貸借においては、借用物の通常の必要費については借主の負担となるのに対し、有益費については貸主の負担となり、その償還の時期は使用貸借の終了時であり、貸主の請求により裁判所は相当の期限を許与することはできない。

4) 委任が無償で行われた場合、受任者は委任事務を処理するにあたり、自己の事務に対するのと同一の注意をもってこれを処理すればよい。

5) 寄託が無償で行われた場合、受寄者は他人の物を管理するにあたり、善良なる管理者の注意をもって寄託物を保管しなければならない。

■解説

【難易度】普通。

1) 正しい。552条。

2) 誤り。贈与者は、贈与の目的物についての瑕疵について責任を負わないのが原則であるが、贈与者が瑕疵の存在を知りそれを受贈者に告げなかった場合は、担保責任を負う(551条1項)。

3) 誤り。必要費、有益費の説明は正しい(前者につき595条1項、後者につき595条2項、583条2項。なお196条参照)。但し有益費の償還につき裁判所は相当の期限を付与することができる(583条2項但書)。

4) 誤り。受任者は、有償無償問わず善管注意義務を以て委任事務を処理しなければならない(644条)。

5) 誤り。無償受寄者は、寄託物につき自己の財産に対するのと同一の注意を以て寄託物を保管する義務を負う(659条)。

■賃貸借(2012−33)【条文知識問題】

Aは自己所有の甲建物をBに賃貸し(以下、この賃貸借を「本件賃貸借」という。)、その際、BがAに対して敷金(以下、「本件敷金」という。)を交付した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 本件賃貸借において、Bが甲建物のために必要費および有益費を支出した場合、特約がない限り、Bはこれらの費用につき、直ちにAに対して償還請求することができる。

2) BがAの承諾を得て本件賃貸借に基づく賃借権をCに譲渡した場合、特段の事情がない限り、AはBに対して本件敷金を返還しなければならない。

3) BがAの承諾を得て甲建物をDに転貸したが、その後、A・B間の合意により本件賃貸借が解除された場合、B・D間の転貸借が期間満了前であっても、AはDに対して甲建物の明渡しを求めることができる。

4) BがAの承諾を得て甲建物をEに転貸したが、その後、Bの賃料不払いにより本件賃貸借が解除された場合、B・E間の転貸借が期間満了前であれば、AはEに対して甲建物の明渡しを求めることはできない。

5) AがFに甲建物を特段の留保なく売却した場合、甲建物の所有権の移転とともに賃貸人の地位もFに移転するが、現実にFがAから本件敷金の引渡しを受けていないときは、B・F間の賃貸借の終了時にFはBに対して本件敷金の返還義務を負わない。

■解説

【難易度】難しい。

1) 誤り。必要費については直ちに償還請求ができるが、有益費の償還については賃貸借終了時となる(608条)。

2) 正しい。賃借権譲渡に伴い「賃借人が交代した」場合、敷金に関する旧賃借人の権利関係は新賃借人には承継されないというのが判例である(最判昭和53年12月22日)。よってAはBに敷金を返還しなければならない。内田貴『民法U』初版(1997年、東大出版会)182頁。

3) 誤り。この合意解除は、Dに対抗できないというのが判例である(大判昭和9年3月7日)。藤岡−磯村−浦河−松本康宏他『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)130頁。

4) 誤り。「賃借人」の債務不履行による解除の場合、結果転貸人としての義務に履行不能を生じ、A−Bの賃貸借は終了と同時に転貸借も同時に終了するというのが判例である(最判昭和36年12月21日)。内田貴『民法U』初版(1997年、東大出版会)213頁。よって転貸借期間満了前であってもAはEに当該建物の明渡しを求め得る。

5) 誤り。賃借物の所有権が移転し「賃貸人が変更」になり、賃借人が新賃貸人に対抗できるときは、新旧賃貸人の間で実際に敷金が引き継がれると否とを問わず、敷金返還義務は新賃貸人に引き継がれるというのが判例である(最判昭和44年7月17日)。藤岡−磯村−浦河−松本康宏他『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)125頁。

■不法行為(2012−34)【判例問題】

不法行為に基づく損害賠償に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車と衝突して、Bの自動車の助手席に乗っていたBの妻Cを負傷させ損害を生じさせた。CがAに対して損害賠償請求をする場合には、原則としてBの過失も考慮される。

イ) Aの運転する自動車と、Bの運転する自動車が、それぞれの運転ミスにより衝突し、歩行中のCを巻き込んで負傷させ損害を生じさせた。CがBに対して損害賠償債務の一部を免除しても、原則としてAの損害賠償債務に影響はない。

ウ) A社の従業員Bが、A社所有の配達用トラックを運転中、運転操作を誤って歩行中のCをはねて負傷させ損害を生じさせた。A社がCに対して損害の全額を賠償した場合、A社は、Bに対し、事情のいかんにかかわらずCに賠償した全額を求償することができる。

エ) Aの運転する自動車が、見通しが悪く遮断機のない踏切を通過中にB鉄道会社の運行する列車と接触し、Aが負傷して損害が生じた。この場合、線路は土地工作物にはあたらないから、AがB鉄道会社に対して土地工作物責任に基づく損害賠償を請求することはできない。

オ) Aの運転する自動車がAの前方不注意によりBの運転する自動車に追突してBを負傷させ損害を生じさせた。BのAに対する損害賠償請求権は、Bの負傷の程度にかかわりなく、また、症状について現実に認識できなくても、事故により直ちに発生し、3年で消滅時効にかかる。

1) ア)、イ)

2) ア)、エ)

3) イ)、オ)

4) ウ)、エ)

5) ウ)、オ)

■解説

【難易度】普通。

ア) 正しい。「A−(BC)」という関係の下で起きた事案であるが、判例はCの賠償額算定にあたり夫Bの過失による過失相殺を肯定している(最判昭和51年3月25日)。ABのCに対する連帯責任を、BCが夫婦であるが故に分割責任にしたということになる(「被害者側の過失」の法理)。内田貴『民法U』初版(1997年、東大出版会)407−408頁。

イ) 正しい。本肢のような共同不法行為から発生した賠償債務につき加害者は連帯して賠償義務を負うが、この連帯は通常の連帯債務とは異なり、免除や混同といった絶対的効力事由が認められない不真正連帯債務と考えられているので、CがBの債務を一部免除しても、Aの債務には何らの効力も及ばない。前掲内田500頁。最判平成6年11月24日参照。

ウ) 誤り。使用者責任における求償権(715条3項)の問題である。Bが故意を以てCをはねたというような場合、使用者に全面求償が認められるのは勿論であるが、一般的には通常の企業活動の過程で生じた損害については、使用者の求償権の行使には、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において制限があると考えられている(最判昭和51年7月8日)。藤岡−磯村−浦河−松本康宏他『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)312頁、内田貴『民法U』初版(1997年、東大出版会)460−461頁。

エ) 誤り。鉄道の軌道施設のように、附属施設を伴う施設全体も717条にいう「土地の工作物」に該当すると解されている。最判昭和46年4月23日参照。前掲藤岡他327頁。

オ) 誤り。724条は、賠償請求の時効期間につき「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき」と規定するが、ここで言う損害を「知った時」とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時というのが判例である(最判平成14年1月29日)。前掲藤岡他380頁。

よって正解は1)のア)、イ)となろう。