■2012年行政書士試験・行政法総論

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■法の一般原理(2012−8)【判例問題】

行政法における信頼保護に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

1) 地方公共団体が、将来にわたって継続すべき一定内容の施策を決定した後に、社会情勢の変動等が生じたとしても、決定された施策に応じた特定の者の信頼を保護すべき特段の事情がある場合には、当該地方公共団体は、信義衡平の原則により一度なされた当該決定を変更できない。

2) 公務員として採用された者が有罪判決を受け、その時点で失職していたはずのところ、有罪判決の事実を秘匿して相当長期にわたり勤務し給与を受けていた場合には、そのような長期にわたり事実上勤務してきたことを理由に、信義誠実の原則に基づき、新たな任用関係ないし雇用関係が形成される。

3) 課税処分において信義則の法理の適用により当該課税処分が違法なものとして取り消されるのは、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお、当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に限られる。

4) 課税庁が課税上の取扱いを変更した場合において、それを通達の発出などにより納税者に周知する措置をとらなかったとしても、そのような事情は、過少申告加算税が課されない場合の要件として国税通則法に規定されている「正当な理由があると認められる」場合についての判断において考慮の対象とならない。

5) 従来課税の対象となっていなかった一定の物品について、課税の根拠となる法律所定の課税品目に当たるとする通達の発出により新たに課税の対象とすることは、仮に通達の内容が根拠法律の解釈として正しいものであったとしても、租税法律主義及び信義誠実の原則に照らし、違法である。

■解説

【難易度】やや難。

1) 誤り。決定を変更できないのではなく、特定の者の信頼を保護すべき特段の事情がある場合、損害を賠償しなければ変更できないのである(最判昭和56年1月27日)。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)211頁、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)31頁。

2) 誤り。「有罪判決の事実を秘匿して相当長期にわたり勤務し給与を受けて」おり「長期にわたり事実上勤務してきた」という事情に過ぎない場合では、失職の主張が信義則に反し権利濫用に該当するとは言えない、というのが判例である(最判平成19年12月13日)。

3) 正しい。最判昭和62年10月30日。前掲塩野83頁、櫻井他31−32頁。

4) 誤り。旧来の課税上の取扱が課税庁の職員が監修した公刊物で示されており、旧来の取扱が変更後、変更内容を通達で明示してこなかった等の事情がある場合には、国税通則法65条4項に言う「正当な理由があると認められる」と解されている(最判平成19年7月6日)。

5) 誤り。「通達の内容が根拠法律の解釈として正しいものであった」場合は、法による課税処分と言い得るというのが判例である(最判昭和33年3月28日)。前掲塩野61頁、櫻井他68−69頁。

■行政契約(2012−9)【判例問題】

行政契約に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。見解が分かれる場合は、最高裁判所の判例による。

1) 行政契約でも、その内容が国民に義務を課したり、その権利を制限するものについては、法律の留保の原則に関する侵害留保理論に立った場合、法律の根拠が必要であると解される。

2) 地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができない場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったとしても、かかる違法な契約は、私法上、当然に無効となるものではない。

3) 地方公共団体がごみ焼却場を建設するために、建設会社と建築請負契約を結んだ場合、ごみ焼却場の操業によって重大な損害が生ずるおそれのある周辺住民は、当該契約の締結行為について、当該地方公共団体を被告として、抗告訴訟としての差止めの訴えを提起することができる。

4) 地方公共団体の長が、指名競争入札の際に行う入札参加者の指名に当たって、法令の趣旨に反して域内の業者のみを指名する運用方針の下に、当該運用方針に該当しないことのみを理由に、継続して入札に参加してきた業者を指名競争人札に参加させない判断をしたとしても、その判断は、裁量権の逸脱、濫用には当たらず、違法ではない。

5) 地方公共団体が、産業廃棄物処理施設を操業する企業との間で、一定の期日をもって当該施設の操業を停止する旨の公害防止協定を結んだものの、所定の期日を過ぎても当該企業が操業を停止しない場合において、当該地方公共団体が当該企業を被告として操業差止めを求める訴訟は、法律上の争訟に該当せず、不適法である。

■解説

【難易度】難しい。

1) 誤り。侵害留保説によれば、行政契約を用いた場合でも法律の根拠なくして国民の権利を制限したり義務を賦課することができる(公害防止協定等)。行政契約にも一定限度で「契約自由の原則」が機能するからである。前掲櫻井他123、127−128頁。

2) 正しい。最判昭和62年5月19日。前掲櫻井他125頁。地方自治法234条、234条の2参照。

3) 誤り。最判昭和39年10月29日は、当該請負契約を私法上の契約としている。つまりこの場合訴えは処分性を欠くことになる。前掲櫻井他270頁。

4) 誤り。この事案では、一つの考慮要素たる域外業者ということのみを考慮し、考慮すべき事項を考慮しておらず極めて不合理であり、社会通念上著しく妥当性を欠く、という判断が示されている(最判平成18年10月26日)。前掲塩野190頁注2。

5) 誤り。最判平成21年7月10日であろうか。原審は当該期限、期日条項の法的効力を認めなかったが最高裁は法的効力を認めているので、差止請求も許されると解せよう。前掲櫻井他128頁。

■行政行為の附款(2012−10)【理論問題】

次の文章の空欄(ア)−(オ)に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。

許認可等の法効果について法律で規定された事項以外の内容が付加されることがある。行政法学上、これを、附款という。附款とは、行政行為の効果を制限するため、行政庁の意思表示の主たる内容に付加された従たる意思表示であると説明されている。
附款のうち、条件とは、行政行為の効力の発生・消滅を発生(ア)事実にかからしめる附款である。条件成就により効果が発生する(イ)条件と、効果が消滅する(ウ)条件とに区別される。
許認可等を行うに際し、法令により課される義務とは別に作為義務又は不作為義務を課すことがあるが、これは、負担と呼ばれ、附款の一種であるとされている。条件と負担との相違は、各々の附款に違反した場合の行政処分の効力への影響にあるとされている。すなわち、ある行政行為に付された附款を条件とみると、これが満たされない場合、本体たる行政行為の効力に影響が(エ)ことになる。一方、負担とみると、これが満たされない場合、本体たる行政行為の効力に影響が(オ)ことになる。しかし、条件と負担との区別は実際には困難であるという意見もある。

1) ア)不確実な イ)停止 ウ)解除 エ)及ばない オ)及ぶ

2) ア)確実な イ)停止 ウ)解除 エ)及ばない オ)及ぶ

3) ア)確実な イ)解除 ウ)停止 エ)及ぶ オ)及ばない

4) ア)不確実な イ)解除 ウ)停止 エ)及ばない オ)及ぶ

5) ア)不確実な イ)停止 ウ)解除 エ)及ぶ オ)及ばない

■解説

【難易度】易しい。

ア) 不確実な。条件とは、「行政行為の効力の発生・消滅を発生不確実な事実にかからしめる附款である」(前掲塩野181頁)。

イ) 停止。

ウ) 解除。条件には停止条件解除条件がある。会社の成立を条件として会社の発起人に道路の占有を許可することは、前者の例であり、一定期間内に工事に着手しなければ失効することを条件として原子炉発電施設の設置許可をすることは、後者の例である(前掲塩野181頁)。

エ) 及ぶ。相手方に特定の義務を命ずる附款を負担といい、運転免許等に付された眼鏡使用等の限定がこれに該当する。前掲櫻井他101−102頁。

オ) 及ばない。この点につき前掲塩野182−183頁、櫻井他102頁参照。

■総論横断問題(2012−24)【理論問題】

Xは、A川の河川敷においてゴルフ練習場を経営すべく、河川管理者であるY県知事に対して、河川法に基づく土地の占用許可を申請した。この占用許可についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) この占用許可は、行政法学上の「許可」であるから、Xの申請に許可を与えるか否かについて、Y県知事には、裁量の余地は認められない。

2) 申請が拒否された場合、Xは、不許可処分の取消訴訟と占用許可の義務付け訴訟を併合提起して争うべきであり、取消訴訟のみを単独で提起することは許されない。

3) Y県知事は、占用を許可するに際して、行政手続法上、同時に理由を提示しなければならず、これが不十分な許可は、違法として取り消される。

4) Xが所定の占用料を支払わない場合、Y県知事は、行政代執行法の定めによる代執行によって、その支払いを強制することができる。

5) Y県知事は、河川改修工事などのやむをえない理由があれば、許可を撤回できるが、こうした場合でも、Xに損失が生ずれば、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

■解説

【難易度】やや難。

1) 誤り。河川の占有許可は、講学上の「許可」ではなく「特許」に該当する。河川といった一般公衆の用に供される公共用物を、特定人に独占利用させる特別の権利を私人に付与するからである。また特許の場合は、許可と異なり特許を与えるか否かにつき、行政庁の広い裁量が認められる。前掲櫻井他79−80頁。

2) 誤り。(申請型)義務付け訴訟を提起する場合は、取消訴訟等を併合しなければならないが(行政事件訴訟法37条の3第3項)、取消訴訟については単独で提起ができる。前掲櫻井他337頁。

3) 誤り。「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない」(行政手続法8条)。

4) 誤り。Y県が有するXへの金銭債権を満足させる手続は代執行ではなく強制徴収である(河川法74条参照)。前掲塩野238頁。

5) 正しい。河川法76条1項。河川法の知識を必要とする肢というのは酷に思われる。なお最判昭和49年2月5日。前掲櫻井他100−101頁参照。

■情報公開法(2012−25)【理論問題】

Xは、消費者庁長官に対して、同庁が実施したA社の製品の欠陥に関する調査の記録につき、行政機関情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)に基づき、その開示を請求したが、消費者庁長官は、A社の競争上の地位を害するため同法所定の不開示事由に該当するとして、これを不開示とする決定をした。この場合についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) Xは、不開示決定に対して、内閣府におかれた情報公開・個人情報保護審査会に対して審査請求をすることができるが、これを経ることなく訴訟を提起することもできる。

2) Xは、消費者庁長官を被告として、文書の開示を求める義務付け訴訟を提起することができる。

3) Xは、仮の救済として、文書の開示を求める仮の義務付けを申立てることができるが、これには、不開示決定の執行停止の申立てを併合して申立てなければならない。

4) Xが提起した訴訟について、A社は自己の利益を守るために訴訟参加を求めることができるが、裁判所が職権で参加させることもできる。

5) Xは、不開示決定を争う訴訟の手続において、裁判所に対して、当該文書を消費者庁長官より提出させて裁判所が見分することを求めることができる。

■解説

【難易度】普通。情報公開法の問題というより行政事件訴訟法の問題という感がある。

1) 誤り。本件不開示の決定について行政不服審査法に基づく審査請求ができる(行政不服審査法6条2号)が、情報公開・個人情報保護審査会に対し審査請求をするのではない。また本件では審査請求があった場合、消費者庁長官は同審査会に対し諮問しなければならないのである(情報公開法18条)。なお情報公開法は不服申立前置主義を採用していない

2) 誤り。行政事件訴訟において被告適格を持つのは処分庁たる消費者庁長官ではなく、消費者庁長官が属するである(行政事件訴訟法11条1項1号)。

3) 誤り。本肢のような併合の申立は必要ではないと思われる。

4) 正しい。第三者の訴訟参加であるが、第三者の申立ばかりでなく裁判所の職権によっても可能である(行政事件訴訟法22条1項)。

5) 誤り。インカメラ手続の問題である。情報公開・個人情報保護審査会にはインカメラ調査の権限があるが(情報公開・個人情報保護審査会設置法9条1、2項)、情報公開法は裁判所にこの権限を認めてはいない。前掲櫻井他225頁。

■行政裁量(2012−26)【判例問題】

行政裁量に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。

1) 建築主事は、一定の建築物に関する建築確認の申請について、周辺の土地利用や交通等の現状および将来の見通しを総合的に考慮した上で、建築主事に委ねられた都市計画上の合理的な裁量に基づいて、確認済証を交付するか否かを判断する。

2) 法務大臣は、本邦に在留する外国人から再入国の許可申請があったときは、わが国の国益を保持し出入国の公正な管理を図る観点から、申請者の在留状況、渡航目的、渡航の必要性、渡航先国とわが国との関係、内外の諸情勢等を総合的に勘案した上で、法務大臣に委ねられた出入国管理上の合理的な裁量に基づいて、その許否を判断する。

3) 公務員に対して懲戒処分を行う権限を有する者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態様、結果、影響等のほか、当該公務員の行為の前後における態度、懲戒処分等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情を考慮した上で、懲戒権者に委ねられた合理的な裁量に基づいて、処分を行うかどうか、そして処分を行う場合にいかなる種類・程度を選ぶかを判断する。

4) 行政財産の管理者は、当該財産の目的外使用許可について、許可申請に係る使用の日時・場所・目的・態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可をするに当たっての支障または許可をした場合の弊害もしくは影響の内容および程度、代替施設確保の困難性など、許可をしないことによる申請者側の不都合または影響の内容及び程度等の諸般の事情を総合考慮した上で、行政財産管理者に委ねられた合理的な裁量に基づいて、許可を行うかどうかを判断する。

5) 5 公立高等専門学校の校長は、学習態度や試験成績に関する評価などを総合的に考慮し、校長に委ねられた教育上の合理的な裁量に基づいて、必修科目を履修しない学生に対し原級留置処分または退学処分を行うかどうかを判断する。

■解説

【難易度】やや難。

1) 誤り。建築確認は準法律行為的行政行為の「確認」に分類されるが、建築確認には基本的に裁量が認められない。前掲櫻井他82頁。

2) 正しい。最判平成10年4月10日であろうか。

3) 正しい。神戸税関事件(最判昭和52年12月20日)。前掲塩野129頁、櫻井他111−112頁。

4) 正しい。学校施設の目的外使用が争われた最判平成18年2月7日である。前掲塩野136頁、櫻井他120頁。

5) 正しい。信仰を理由とした剣道の授業拒否とそれに対する原級留置、退学処分が争われた剣道実技事件(最判平成8年3月8日)。前掲塩野136頁、櫻井他119頁。