■2012年行政書士試験・法令記述式問題

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■行政法、当事者訴訟(2012−44)【条文知識問題】

Xは、A県B市内に土地を所有していたが、B市による市道の拡張工事のために、当該土地の買収の打診を受けた。Xは、土地を手放すこと自体には異議がなかったものの、B市から提示された買収価格に不満があったため、買収に応じなかった。ところが、B市の申請を受けたA県収用委員会は、当該土地について土地収用法48条に基づく収用裁決(権利取得裁決)をした。しかし、Xは、この裁決において決定された損失補償の額についても、低額にすぎるとして、不服である。より高額な補償を求めるためには、Xは、だれを被告として、どのような訴訟を提起すべきか。また、このような訴訟を行政法学において何と呼ぶか。40字程度で記述しなさい。

■解説

【難易度】普通。

行政事件訴訟法が定める当事者訴訟は2類型ある(4条)。一つは、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」(形式的当事者訴訟)であり、他方は、「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」(実質的当事者訴訟)である。

土地収用に関する収用委員会の裁決につき損失補償に争いがある場合、土地所有者と起業者の間で訴訟を提起することは、前者の例である。この場合、紛争は土地収用裁決を契機に生じており、裁決の効力を争う点で抗告訴訟としての実質を有するものの、形式的には当事者間で補償金額を争うことになるので(土地収用法133条)、講学上形式的当事者訴訟と呼ばれている。

なお、公務員の俸給・手当の請求、公務員の地位確認、国籍の確認等の訴えは、実質的当事者訴訟の例として挙げられる。なお本問につき、塩野宏『行政法U』第4版(2005年、有斐閣)232頁以下、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)351頁以下参照。

解答としては次のようになろうか。
「B市を被告として、形式的当事者訴訟と呼ばれる補償金額の増額を求める訴訟を提起すべきである。」(45文字)

■民法、保証債務(2012−45)【条文知識問題】

AがBに金銭を貸し付けるにあたり、書面により、Cが保証人(Bと連帯して債務を負担する連帯保証人ではない。)となり、また、Dが物上保証人としてD所有の土地に抵当権を設定しその旨の登記がなされた。弁済期を徒過したので、Aは、Bに弁済を求めたところ、Bは、「CまたはDに対して請求して欲しい」と応えて弁済を渋った。そこで、Aは、Dに対しては何らの請求や担保権実行手続をとることなく、Cに対してのみ弁済を請求した。この場合において、Cは、Aの請求に対し、どのようなことを証明すれば弁済を拒むことができるか。40字程度で記述しなさい。

■解説

【難易度】普通。

Bは、連帯保証人ではなく「単なる保証人」とされているが、この両者の差異が本問では鍵となる。保証と連帯保証の差異は、前者には補充性がある(民法446条1項)が後者にはない、つまり前者に認められる検索の抗弁権(452条)と、催告の抗弁権(453条)の両者が後者には認められない、という点にある。野村−栗田−池田−永田『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)146、159頁。

なお本問では、催告の抗弁権(債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求すること)は問題にならない。債権者Aはすでに主たる債務者Bに履行の請求をしているからである。そのため本問の解答は、検索の抗弁権を記述することとなる。前掲野村他150−152頁。

「Cが、Bに弁済をする資力がありかつ執行が容易であることを証明すれば、弁済を拒み得る。」(42文字)

■民法、遺言(2012−46)【条文知識問題】

次の文章は遺言に関する相談者と回答者の会語である。( )の中に、どのような請求によって、何について遺言を失効させるかを40字程度で記述しなさい。

相談者「今日は遺言の相談に参りました。私は夫に先立たれて独りで生活しています。亡くなった夫との間には息子が一人おりますが、随分前に家を出て一切交流もありません。私には、少々の預金と夫が遺してくれた土地建物がありますが、少しでも世の中のお役に立てるよう、私が死んだらこれらの財産一切を慈善団体Aに寄付したいと思っております。このような遺言をすることはできますか。」

回答者「もちろん、そのような遺言をすることはできます。ただ「財産一切を慈善団体Aに寄付する」という内容が、必ずしもそのとおりになるとは限りません。というのも、相続人である息子さんは、( )からです。そのようにできるのは、被相続人の財産処分の自由を保障しつつも、相続人の生活の安定及び財産の公平分配をはかるためです。」

■解説

【難易度】普通。

遺言は、契約自由の原則、意思自治の原則を法主体の死後にまで及ぼすという性格を有するが、これは本来は例外的現象であるが故に、死後に実現されることが保証されたものについては色々な制限が加わる。佐藤−伊藤−右近『民法X』第2版補訂(2000年、有斐閣)191頁。

この制限の一つに遺留分制度(1028条)がある。一定の親族範疇に属する相続人には、被相続人の財産の一定部分に強い相続権を認め、被相続人がこの部分を侵害するような遺言処分をしたような場合には、これら相続人は裁判によって侵害部分を取り戻すことができる、というのがそれである。前掲佐藤他218頁。

本問に登場する息子は、相続人であり(887条1項)母たる被相続人の財産の2分の1につき遺留分を有する(1028条2号)。そして息子はこの遺留分を保全するのに遺留分減殺請求を行使し得る(1031条)。前掲佐藤他219頁以下。本問題はこれをまとめることになる。

「遺留分減殺請求権により、自己の遺留分を保全するのに必要な限度で遺言を失効させる事ができる。」(45文字)