■2011年行政書士試験・民法1(総則、物権)

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■無効、取消(2011−27)【判例、条文知識問題】

無効または取消しに関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはいくつあるか。

ア) BがAに騙されてAから金銭を借り入れ、CがBの保証人となった場合、CはAの詐欺を理由としてAB間の金銭消費貸借契約を取り消すことができる。

イ) BがAに騙されてAから絵画を購入し、これをCに転売した場合、その後になってBがAの詐欺に気がついたとしても、当該絵画を第三者に譲渡してしまった以上は、もはやBはAとの売買契約を取り消すことはできない。

ウ) BがAから絵画を購入するに際して、Bに要素の錯誤が認められる場合、無効は誰からでも主張することができるから、Bから当該絵画を譲り受けたCも当然に、AB間の売買契約につき錯誤無効を主張することができる。

エ) BがAに強迫されて絵画を購入した場合、Bが追認をすることができる時から取消権を5年間行使しないときは、追認があったものと推定される。

オ) 未成年者であるBが親権者の同意を得ずにAから金銭を借り入れたが、後に当該金銭消費貸借契約が取り消された場合、BはAに対し、受領した金銭につき現存利益のみを返還すれば足りる。

1) 1つ

2) 2つ

3) 3つ

4) 4つ

5) 5つ

■解説

【難易度】やや難しい。

ア) 誤り。条文上保証人は取消権者ではない(民法120条参照)ので、当該金銭消費貸借契約を取消すことはできない。この場合の保証人については、山田−河内−安永−松久『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)149頁参照。

イ) 誤り。詐欺に気づいた後BがCに絵画を転売したのであれば、BはAとの契約を取消すことはできないが(125条5号、法定追認)、この場合、BはCへの転売後詐欺に気づいたのであるから、取消権を失わない。

ウ) 誤り。著名な論点である。無効は誰でも主張できるのが原則だが(前掲山田他144頁)、錯誤無効については、表意者を保護するものであるから、表意者以外の者からの無効主張を認める必要はない、と解されている(最判昭和40年9月10日)。前掲山田他135頁。

エ) 誤り。強迫による意思表示は取消すことができるが(96条1項)、この取消権は、「追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する」(126条)。追認擬制なのではない。

オ) 正しい。121条但書である。

よって正解は4)の4つである。

■時効(2011−28)【判例問題】

時効等に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) A所有の甲土地につき、20年間占有を継続してきたBが取得時効を援用した場合、取得時効の成立を否定するためには、Aの側において、他主占有事情の立証では足りず、Bの占有が賃貸借など他主占有権原に基づいて開始された旨を立証しなければならない。

2) A所有の乙土地につき、Bが5年間占有した後にCがこれを相続して、さらに10年間占有を継続した時点において、CがBの占有と併合して取得時効を援用した場合、C自身が占有開始時に悪意であったときは、Bが占有開始時に善意であり、かつ無過失であったとしても時効取得は認められない。

3) Aから丙土地を購入したBが、その引渡しを受けてから10年以上が経過した後に隠れた瑕疵を発見し、Aに対して瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求した場合、Aは消滅時効を援用してこれを拒むことができる。

4) Aから甲建物を購入したBが、同建物の隠れた瑕疵を理由としてAに対して損害賠償を請求する場合には、瑕疵を発見してから1年以内にAに対して瑕疵の内容を具体的に明示しなくても、その存在を通知すれば、同請求権は時効により消滅することはない。

5) 乙建物について先順位抵当権者Aの被担保債権につき消滅時効が完成した場合、かかる債権の消滅により後順位抵当権者Bは順位上昇の利益を享受することができるため、Bもその時効を援用することができる。

■解説

【難易度】難しい。

1) 誤り。自主占有については推定されるので(186条1項)、それを破ろうとする側に他主占有であることの立証責任がある。但しこれについては、他主占有事情の立証か、Bの占有開始が他主占有権原に基づいて開始されたこと、どちらかを立証すれば良いと解されている(最判昭和58年3月24日)。前掲山田他248頁。

2) 誤り。187条の問題である。A(善意)→B→Cと占有が承継され、B又はCが悪意の場合、CがA−Cの占有の併合を主張した場合、併合された場合は善意占有か、悪意占有か。これにつき判例は、善意占有と扱っている(最判昭和53年3月6日)。この事案では、Bの5年とCの5年の占有で10年の取得時効の成立をCは主張できる。前掲山田他251頁。

3) 正しい。この場合の瑕疵担保責任の追及は、瑕疵を知った時から1年以内にしなければならないが(570条、566条3項)、瑕疵を知らないでいた場合でも、目的物の引渡しから10年経過すれば時効で消滅する(167条1項、最判平成13年11月27日)。藤岡−磯村−浦河−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)80頁。

4) 誤り。この場合、具体的な瑕疵の内容とそれにつき損害賠償請求する旨を表明し、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要があるとするのが判例である(最判平成4年10月20日)。前掲藤岡他52頁。

5) 誤り。後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用できないというのが判例である(最判平成11年10月21日)。前掲山田他228頁。

■即時取得(2011−29)【判例問題】

A所有のカメラをBが処分権限なしに占有していたところ、CがBに所有権があると誤信し、かつ、そのように信じたことに過失なくBから同カメラを買い受けた。この場合に関する次のア)−エ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものをすべて挙げた組合せはどれか。

ア) CがAのカメラを即時取得するのは、Bの占有に公信力が認められるからであり、その結果、Bがカメラの所有者であったとして扱われるので、Cの所有権はBから承継取得したものである。

イ) Cは、カメラの占有を平穏、公然、善意、無過失で始めたときにカメラの所有権を即時取得するが、その要件としての平穏、公然、善意は推定されるのに対して、無過失は推定されないので、Cは無過失の占有であることを自ら立証しなければならない。

ウ) Bは、Cにカメラを売却し、以後Cのために占有する旨の意思表示をし、引き続きカメラを所持していた場合、Cは、一応即時取得によりカメラの所有権を取得するが、現実の引渡しを受けるまでは、その所有権の取得は確定的ではなく、後に現実の引渡しを受けることによって確定的に所有権を取得する。

エ) Bは、Cにカメラを売却する前にカメラをDに寄託していたが、その後、BがCにカメラを売却するに際し、Dに対して以後Cのためにカメラを占有することを命じ、Cがこれを承諾したときは、たとえDがこれを承諾しなくても、Cは即時取得によりカメラの所有権を取得する。

1) ア)、イ)

2) ア)、イ)、ウ)

3) ア)、ウ)、エ)

4) イ)、ウ)、エ)

5) ウ)、エ)

■解説

【難易度】難しい。

ア) 誤り。即時取得による権利取得は原始取得である。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』第2版(2001年、有斐閣)98頁。

イ) 誤り。平穏、公然、善意は186条1項により推定される。また、無過失については、188条によって推定されるとするのが判例である(最判昭和41年6月9日)。前掲淡路他92頁。

ウ) 誤り。占有改定による即時取得(183条)については、肯定説、否定説、折衷説があるが、判例は本肢のような折衷説をとらず、否定説をとる(大判大正5年5月16日)。前掲淡路他93頁以下。

エ) 正しい。指図による占有移転(184条)については、占有改定と異なり即時取得の成立を認めるのが判例である(最判昭和57年9月7日)。前掲淡路他96頁。
よって正解は2)になろう。

■法定地上権(2011−30)【判例問題】

法定地上権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) Aは、自己所有の土地(更地)に抵当権を設定した後に、その土地上に建物を建築したが、抵当権の被担保債権について弁済をすることができなかった。この場合において、抵当権者が抵当権を実行して土地を競売すると、この建物のために法定地上権は成立せず建物は収去されなければならなくなることから、抵当権者は、土地とその上の建物を一括して競売しなければならない。

2) AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Bは、その土地上に甲抵当権を設定したが、Aから建物を取得した後に、さらにその土地に乙抵当権を設定した。その後、Bは、甲抵当権の被担保債権について弁済したので甲抵当権は消滅したが、乙抵当権の被担保債権については弁済できなかったので、乙抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

3) AがBから土地を借りてその土地上に建物を所有している場合において、Aは、その建物上に甲抵当権を設定したが、Bから土地を取得した後に、さらにその建物に乙抵当権を設定した。その後、Aは、甲抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、甲抵当権が実行され、その建物は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

4) Aが自己所有の土地と建物に共同抵当権を設定した後、建物が滅失したため、新たに建物を再築した場合において、Aが抵当権の被担保債権について弁済することができなかったので、土地についての抵当権が実行され、その土地は買受人Bが取得した。この場合、再築の時点での土地の抵当権が再築建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたなどの特段の事由のない限り、再築建物のために法定地上権は成立しない。

5) AとBが建物を共同で所有し、Aがその建物の敷地を単独で所有している場合において、Aがその土地上に抵当権を設定したが、抵当権の被担保債権について弁済できなかったので、その抵当権が実行され、その土地は買受人Cが取得した。この場合、この建物のために法定地上権は成立しない。

■解説

【難易度】難しい。

1) 誤り。抵当権設定当事に、土地上に建物が存在しない(388条参照)のでこの場合法定地上権は成立しない。但し一括競売はしなければならないものではない。あくまで「抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる」(389条1項)のである。

2) 誤り。法定地上権成立の要件の1つとして、抵当権設定時に土地と建物が同一人の所有であったことが要求されているが、先順位の甲抵当権設定時にはこの要件が具備されず、乙抵当権設定時には具備されていた場合、法定地上権は成立するか。この場合成立を認めるのが判例である(最判平成19年7月6日)。

3) 誤り。法定地上権成立の要件として、設定時土地建物が同一の所有に属していた、というものがあるが、本肢の様に1番抵当権の段階ではこの要件を具備せず、2番抵当権の段階でこの要件を具備するにいたり、1番抵当権者の申立による競売が行われた場合でも、法定地上権は成立する。前掲淡路他272頁。

4) 正しい。最判平成9年2月14日。前掲淡路他269頁、内田貴『民法V』初版(1996年、東大出版会)381頁、

5) 誤り。この場合Aは、Bのためにも自己の土地の利用を認めているとして、土地に法定地上権が成立するとしている(最判昭和46年12月21日)。前掲内田386頁。