■2011年行政書士試験・憲法

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■プライバシーの権利(2011−3)【判例問題】

プライバシーに関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 何人も、その承諾なしにみだりに容貌等を撮影されない自由を有するので、犯罪捜査のための警察官による写真撮影は、犯人以外の第三者の容貌が含まれない限度で許される。

2) 前科は、個人の名誉や信用に直接関わる事項であるから、事件それ自体を公表することに歴史的または社会的な意義が認められるような場合であっても、事件当事者の実名を明らかにすることは許されない。

3) 指紋は、性質上万人不同、終生不変とはいえ、指先の紋様にすぎず、それ自体では個人の私生活や人格、思想等個人の内心に関する情報ではないから、プライバシーとして保護されるものではない。

4) 犯罪を犯した少年に関する犯人情報、履歴情報はプライバシーとして保護されるべき情報であるから、当該少年を特定することが可能な記事を掲載した場合には、特段の事情がない限り、不法行為が成立する。

5) いわゆる住基ネットによって管理、利用等される氏名、生年月日、性別、住所からなる本人確認情報は、社会生活上は一定の範囲の他者には当然開示されることが想定され、個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。犯罪捜査のための写真撮影は、写真に第三者の要望が含まれる場合でも、@犯罪が現に行われ又は行われて間もない、A証拠保全の必要性および緊急性、B撮影方法が一般的に許容される相当性を有する、という3要件があれば、被撮影者の同意や裁判官の令状がなくとも許されるというのが判例である(京都府学連事件。最大判昭和44年12月24日)。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)119頁。

2) 誤り。ある人の前科等にかかわる事実が著作物で実名を使用して公表された場合、事件の歴史的社会的意義やその人物の事件における重要性や、当該著作における実名使用の意義等を考慮し、公表する利益が、上記前科等にかかわる事実を公表されない利益を優越する場合、実名を明らかにできるとするのが判例(ノンフィクション「逆転」判決、最判平成6年2月8日)である。佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)267頁。

3) 誤り。指紋自体は内心に関する情報ではないが、指紋は性質上万人不同、終生不変であるが故、採取された指紋の利用方法によってはプライバシー侵害の危険性があるので、みだりに指紋の押捺を強制されない、というのが判例である(最判平成7年12月15日)。前掲芦部97頁、佐藤150頁。

4) 誤り。犯罪を犯した少年を特定することが可能な犯罪情報、履歴情報がプライバシーを侵害する場合であっても、その侵害が不法行為を構成するかは、プライバシーを公表されない利益と公表する利益に関する諸事情を検討し、これらを比較衡量して決すべきというのが判例である(最判平成15年3月14日。本肢の記述はこの訴訟の原審たる名古屋高裁の判決である)。前掲芦部177頁、佐藤269−270頁。

5) 正しい。住基ネット訴訟、最判平成20年3月6日。前掲芦部124頁、佐藤185−186頁。

■外国人の参政権(2011−4)【判例問題】

Aは、日本国籍を有しない外国人であるが、出生以来日本に居住しており、永住資格を取得している。Aは、その居住する地域に密着して暮らす住民であれば、外国人であっても地方自治体の参政権を与えるべきであり、国が立法による参政権付与を怠ってきたのは違憲ではないか、と考えている。Aは、訴訟を起こして裁判所にあらためて憲法判断を求めることができないか、かつて行政書士試験を受けたことのある友人Bに相談したところ、Bは昔の受験勉強の記憶を頼りに、次の1)−5)の見解を述べた。このうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当でないものはどれか。

1) 国民の選挙権の制限は、そのような制限なしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが著しく困難であると認められる場合でない限り、憲法上許されず、これは立法の不作為による場合であっても同様であると解されている。

2) 国が立法を怠ってきたことの違憲性を裁判所に認定してもらうために、国家賠償法による国への損害賠償請求が行われることがあるが、最高裁はこれまで立法不作為を理由とした国家賠償請求は認容されないという立場をとっている。

3) 憲法の基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象とすると解されるものを除き、外国人にも等しく及ぶものと考えられており、政治活動の自由についても、外国人の地位にかんがみて相当でないものを除き外国人にも保障される。

4) 憲法93条2項で地方公共団体の長や議会議員などを選挙することとされた「住民」とは、その地方公共団体に住所を有する日本国民のみを指している。

5) 仮に立法によって外国人に対して地方参政権を認めることができるとしても、その実現は基本的に立法裁量の問題である。

■解説

【難易度】易しい。

1) 正しい。在外国民選挙権訴訟、最大判平成17年9月14日である。前掲芦部255頁、佐藤639−641頁。

2) 誤り。最高裁は、立法不作為の国家賠償請求訴訟につき許容されないとの立場をとってはいない。前記平成17年判例は、実際に立法不作為の国家賠償請求を認容した事案である。

3) 正しい。マクリーン事件性質説、最大判昭和53年10月4日)である。前掲芦部96−97頁、佐藤144頁。

4) 正しい。最判平成7年2月28日である。前掲芦部92頁、佐藤145頁。

5) 正しい。最判平成7年2月28日である。

■性表現と表現の自由(2011−5)【理論問題】

写真家Aが自らの作品集をある出版社から発売したところ、これに収録された作品のいくつかが刑法175条にいう「わいせつ」な図画に該当するとして、検察官によって起訴された。自分が無罪であることを確信するAは、裁判の場で自らの口から「表現の自由」を主張できるように、慌てて憲法の勉強を始め、努力の甲斐あって次の1)−5)のような考え方が存在することを知ることができた。このうち、本件の事案において主張するものとして、最も適しない考え方はどれか。

1) わいせつ表現についても、表現の自由の価値に比重を置いてわいせつの定義を厳格にしぼり、規制が及ぶ範囲をできるだけ限定していく必要がある。

2) 表現の自由は「公共の福祉」によって制約されると考える場合であっても、これは他人の人権との矛盾・衝突を調整するための内在的制約と解すべきである。

3) 憲法21条2項前段が「検閲の禁止」を定めているように、表現活動の事前抑制は原則として憲法上許されない。

4) 表現の自由に対する規制が過度に広汎な場合には、当事者は、仮想の第三者に法令が適用されたときに違憲となりうることを理由に、法令全体の違憲性を主張できる。

5) 文書の芸術的・思想的価値と、文書によって生じる法的利益の侵害とを衡量して、前者の重要性が後者を上回るときにまで刑罰を科するのは違憲である。

■解説

【難易度】難しい。

1) 適している。性表現、わいせつ表現であっても原則表現の自由の保障が及ぶことを前提に、わいせつの定義を絞り、この定義に抵触しない限り性表現にも表現の自由の保障及ぼそうとする「定義づけ衡量論」である。芦部信喜『憲法学U』(1994年、有斐閣)232頁。

2) 適している。「見たくないわいせつ表現を見せられる」わいせつ物陳列罪と、「見たいという人がいたからわいせつ表現物を渡す」わいせつ物頒布罪は異なる。後者の場合、人権の衝突がそもそも存在しないので、表現の自由の規制につき、「他者の人権との調整」を根拠とした内在的制約のみに服するという見解を取れば、わいせつ物頒布罪を違憲とする見解となじむ。

3) 適していない。判例は、検閲の内容につき「発表前」に表現の発表を禁止することと解している(狭義説の一種、税関検査事件〔最大判昭和59年12月12日〕)からである。Aの作品はすでに販売済=発表済みであり、これについての規制は判例では検閲に該当しない。つまり検閲禁止をもちだすことに意味がないからである。芦部信喜『憲法学V』(1998年、有斐閣)361頁以下。

4) 適している。訴訟において原則当事者が、自己と関係のない第三者への違憲行為を主張することは許されないが、「過度の広汎性のゆえに無効の理論」が問題となるような場合は、本肢のような主張も許されると解される(前記税関検査事件。前掲芦部388頁以下)。

5) 適している。「『悪徳の栄え』事件」(最大判昭和44年10月15日)参照。前掲佐藤264頁。最高裁はこの主張を認めなかったのである。

■全国民の代表(2011−6)【理論問題】

憲法43条1項は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」、と定める。この「全国民の代表」に関わる次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) これと同様の定式は近代憲法に広く見られ、大日本帝国憲法でも採用されている。

2) この定式は、近代の国民代表議会の成立に伴い、国民とその代表者との政治的意思の一致を法的に確保する目的で、命令委任の制度とともに導入されたものである。

3) 政党は国民の中の一党派であり、全国民を代表するものではないため、議員が政党の党議拘束に服することは、憲法上許されないものとされている。

4) 議員は議会で自己の信念のみに基づいて発言・表決すべきであり、選挙区など特定の選出母体の訓令に法的に拘束されない、との原則は、自由委任の原則と呼ばれる。

5) 選挙は現代では政党間の選択としての意味を持つため、現行法上、議員は所属政党から離脱した時は自動的に議員としての資格を失うものとされている。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。43条1項は、近代前における身分制議会の構成員のように、選挙母体の訓令に拘束されこれを守らないと召還される命令委任を否定したものであるが、このような趣旨を有する規定は旧憲法には見られない。なお「近代憲法に広く見られ」という記述は正しい。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)283頁。

2) 誤り。43条は先に述べた命令委任を「否定」するものである。なお命令委任を否定した自由委任の原則の下では、国民とその代表者との間に実際に一致の関係があるか否かは問題とされてこなかった(政治的代表)。前掲芦部283頁。

3) 誤り。議員は党の決定に従い行動することで、全国民の代表者としての資格を発揮できると解されており、43条との関係で党議拘束が憲法上許されないとは解されていない。前掲芦部283−284頁。

4) 正しい。その通りである。

5) 誤り。このような制度は、国会議員の要件として政党所属を要求するものであり、議員を全国民の代表ではなく政党の代表としてしまう点で違憲の疑いが強いと解される。なお衆参の比例代表選出議員が、当選後「所属政党を変更」した場合については、国会法109条の2、公職選挙法99条の2。前掲芦部283−284頁。

■議員定数不均衡訴訟(2011−7)【理論問題】

次の文章は、衆議院議員選挙の効力を争った、ある高等裁判所判決の一節である。当時の公職選挙法別表に定められた選挙区への定数配分については、先の総選挙に関し、最高裁判所が、客観的には違憲状態であるが、なお選挙時には改正に必要な合理的期間を徒過していなかったことを理由に、合憲判断を下していた。高裁判決では、こうした状態の下で解散総選挙が行われた事案に関して、憲法判断が求められている。そこで扱われた問題を論じた文章として、妥当なものはどれか。

被告は、本件選挙は内閣の衆議院解散権の行使によるものであるところ、このような選挙については、投票価値の較差を是正したうえでこれを行うかどうかは立法政策の問題である旨主張する。

本件選挙が内閣の衆議院解散権の行使に基づくものであることは公知の事実であるが、前記の較差是正を行うべき合理的期間は、選挙権の平等を害するような較差を生ぜしめる議員定数配分規定がその間において改正されることを合理的に期待しうるに足る期間なのであるから、右期間が経過した以上、右規定は憲法に違反するものといわざるをえないのであり、右期間経過後に行われる選挙の効力については、それが内閣の解散権の行使によるものであつても、法律上他の事由に基づく選挙と異なつた取扱いをすべき理由はない。その結果として内閣の解散権が事実上制約されることが起こりうるとしても、それは事柄の性質上やむをえないことであり、以上とは逆に、内閣の解散権を確保するために違憲の選挙法規の効力をあえて承認するような法解釈をとることは、本末を転倒するものとのそしりを免れないであろう。
(東京高判昭和59年10月19日行集35巻10号1693頁以下)

1) この判決は、内閣の解散権行使の前提として、衆議院での内閣不信任決議案の可決が必要的だ、という立場にたっている。

2) 内閣の解散権行使の結果行われた総選挙について、その無効を争う選挙訴訟は三審制であって、本件は控訴審判決である。

3) この判決は、政治上の必要があれば、本件のような事案で内閣が解散権を行使しても総選挙は適法だ、という立場にたっている。

4) 本件訴訟は、公職選挙法の定める選挙訴訟として行われているので、いわゆる機関訴訟の1形態と位置づけられるものである。

5) この判決は、現時点ではすでに改正に必要な合理的期間を徒過しており、判例によれば当該議員定数配分規定は違憲だ、という立場にたっている。

■解説

【難易度】普通。

1) 誤り。判決文中に問題となった選挙が「内閣の衆議院解散権の行使によるもの」との言及はあるが、衆議院による内閣不信任決議についての言及はない。

2) 誤り。選挙訴訟は第1審が高等裁判所になる(公職選挙法204条)。

3) 誤り。むしろ逆であろう。「政治上の必要」があり、その結果内閣による衆議院の解散があったとしても、そのことよりも「違憲の選挙法規の効力をあえて承認するような法解釈をとることは、本末を転倒するもの」と批判しているのが本件判決である。

4) 誤り。選挙訴訟は民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)に該当する。

5) 正しい。「右期間が経過した以上、右規定は憲法に違反するものといわざるをえ」ず、「違憲の選挙法規の効力をあえて承認するような法解釈をとることは、本末を転倒するものとのそしりを免れない」と述べているからである。