■2011年行政書士試験・行政救済法

行政書士合格講座行政書士試験の過去問分析>2011年行政書士試験・行政救済法

このサイトについて・プライバシーポリシー 憲法学の窓・公務員試験対策室 Site Map

■行政不服審査法(2011−14)【条文知識問題】

行政不服審査法に関する次の記述のうち、法令または最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか(法改正に伴い記述を改めた)。

1) 行政不服審査制度は「国民の権利利益の救済を図る」ことを目的としているので、同法に基づく不服申立てを行うことができるのは、日本国籍を有する者に限られる。

2) 行政不服審査制度は行政権自身が自己の行為を見直すしくみであるので、行政権の活動に違法な点があると知った者は誰でも、当該違法について不服申立てを行うことができる。

3) 行政不服審査の代理人となるには、法定の資格が必要とされるので、不服申立ての代理人は、当該資格を有する者であることを書面で証明しなければならない。

4) 申立人について補佐が必要とされることがあるので、審理員は、申立人から口頭意見陳述において補佐人を同行したい旨の申し出があった場合には、これを許可することができる。

5) 行政不服審査制度は「行政の適正な運営を確保する」ことを目的としているので、不服申立ての結果によって行政運営上の影響を受ける可能性のある関係行政機関には、当該手続への参加を申し立てることが認められている。

■解説

【難易度】

1) 誤り。目的についての説明は正しいが(行政不服審査法1条1項)、1条1項の「国民」は、日本国籍をもなたい外国人や、外国資本の法人を含む。宇賀克也『行政不服審査法の逐条解説』(2015年、有斐閣)13頁。

2) 誤り。このような、客観的な行政法秩序を守るための不服審査は認められておらず、不服申立の際には法律上の利益の侵害が必要である、というのが判例である(主婦連ジュース訴訟、最判昭和53年3月14日)。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)24頁、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)236−237頁。

3) 誤り。代理人に要求される「法定の資格」についての規定は、行政不服審査法にはない様に思われる。前掲宇賀75頁参照。

4) 正しい。31条3項。

5) 誤り。行政事件訴訟法23条のような訴訟参加に類する規定は、行政不服審査法にはないように思われる。

■行政不服審査法(2011−15)【判例問題】

次の文章は、行政不服審査法旧14条1項の規定する「処分があったことを知った日」の解釈が争点となった事案の最高裁判所判決の一節である。空欄(ア)−(エ)に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか(法改正に伴い記述を改めた)。

行政不服審査法14条1項本文の規定する「処分があったことを知った日」というのは、処分がその名あて人に個別に通知される場合には、その者が処分のあったことを(ア)のことをいい、(イ)というだけでは足りない…。しかし、都市計画法における都市計画事業の認可のように、処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に画一的に告知される場合には、そのような告知方法が採られている趣旨にかんがみて、上記の「処分があったことを知った日」というのは、(ウ)をいうと解するのが相当である…。以上によれば、前記のとおり、本件認可の告示がされたのは平成8年9月13日であり、被上告人がこれに対する審査請求をしたのは同年12月2日であったというのであるから、被上告人が本件認可を(ア)がいつであるかにかかわりなく、同審査請求は行政不服審査法14条1項本文の期間を(エ)にされたものであることが明らかであり、論旨は理由がある。
(最1小判平成14年10月24日民集56巻8号1903頁以下)

行政不服審査法旧14条1項(現在は18条1項) 審査請求は、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して60日以内(当該処分について異議申立てをしたときは、当該異議申立てについての決定があつたことを知つた日の翌日から起算して30日以内)に、しなければならない。ただし、天災その他審査請求をしなかつたことについてやむをえない理由があるときは、この限りでない。

行政不服審査法18条1項 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して1月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

1) ア)現実に知った日 イ)処分があったことを知り得た ウ)告示があった日 エ)経過した後

2) ア)知り得た日 イ)処分が現実にあった ウ)告示があったことを知った日 エ)経過する前

3) ア)現実に知った日 イ)処分があったことを知り得た ウ)告示があったことを知った日 エ)経過する前

4) ア)現実に知った日 イ)処分が現実にあった ウ)告示があった日 エ)経過する前

5) ア)知り得た日 イ)処分が現実にあった ウ)告示があった日 エ)経過した後

■解説

【難易度】

正解は1)である。ア)イ)とウ)が原則−例外的な対応をしている。

処分に付き、直接「個別」的に通知されている場合は、その通知を「現実に知った日」を以って旧14条1項の「処分があったことを知った日」とすることができるが、例外として「都市計画事業の認可のように…画一的に告知される場合には」、各個々人の「現実に知った日」ではなく「告示があった日」を以って、旧14条1項の「知った日」とすることができる、ということである。前掲塩野101頁。

■当事者訴訟(2011−16)【理論問題】

A県収用委員会は、起業者であるB市の申請に基づき、同市の市道の用地として、2000万円の損失補償によってX所有の土地を収用する旨の収用裁決(権利取得裁決)をなした。この場合についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) Xが土地の収用そのものを違法として争う場合には、収用裁決の取消しを求めることとなるが、この訴訟は、B市を被告とする形式的当事者訴訟となる。

2) 収用裁決が無効な場合には、Xは、その無効を前提として、B市を被告として土地の所有権の確認訴訟を提起できるが、この訴訟は、抗告訴訟である。

3) Xが収用裁決に示された損失補償の額に不服がある場合には、A県を被告として、損失補償を増額する裁決を求める義務付け訴訟を提起すべきこととなる。

4) Xが収用裁決に示された損失補償の増額を求める訴訟を提起する場合については、裁決書が送達された日から法定の期間内に提起しなければならない。

5) 収用裁決に示された損失補償の額について、高額に過ぎるとしてB市が不服であるとしても、行政機関相互の争いで、法律上の争訟には当たらないから、B市が出訴することは許されない。

■解説

【難易度】難しい。

1) 誤り。この場合、収用裁決の取消しを求めるという点は正しいが、被告はBではなくA県収用委員会が所属する「A県」である。またこの場合の訴訟は抗告訴訟である。

2) 誤り。この場合、所有権確認訴訟を提起するという点は正しいが、この訴訟は争点訴訟(行政事件訴訟法45条)と解されよう。なお争点訴訟は、民事訴訟である。前掲櫻井他357−358頁。

3) 誤り。この場合、「起業者」Bを被告として(土地収用法133条3項)、訴訟を提起することになる(土地収用法133条2項。形式的当事者訴訟)。前掲櫻井他351頁。

4) 正しい。土地収用法133条2項。

5) 誤り。この場合、BがAを訴えるのではなく、Bは「土地所有者」Xを被告として(土地収用法133条3項)、損失補償額減額のための訴訟を提起することになる(土地収用法133条2項。これも形式的当事者訴訟である)。

■内閣総理大臣の異議(2011−17)【条文知識問題】

執行停止についての内閣総理大臣の異議についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 内閣総理大臣の異議は、裁判所による執行停止決定の後に述べなければならず、決定を妨げるために決定以前に述べることは許されない。

2) 内閣総理大臣の異議は、下級裁判所による執行停止決定に対するものでも、最高裁判所に対して述べることとされている。

3) 内閣総理大臣の異議が執行停止決定に対して述べられたときは、その理由の当否について裁判所に審査権限はなく、裁判所は、必ず決定を取り消さなければならない。

4) 内閣総理大臣が異議を述べたときは、国会に承認を求めなければならず、これが国会によって否決された場合には、異議を取り消さなければならない。

5) 内閣総理大臣の異議の制度については、違憲ではないかとの疑義もあり、実際にも用いられた例が少ないため、他の抗告訴訟における仮の救済手続には準用されていない。

■解説

【難易度】普通。大問1つ内閣総理大臣の異議にあてるというのは、近年例を見ないことである。

1) 誤り。執行停止の申立(行政事件訴訟法25条2項)があった段階即ち執行停止決定前にも、異議を述べることができる(27条1項)。

2) 誤り。執行停止の決定をした裁判所に異議を申し立てるのが原則である(27条5項本文)。

3) 正しい。このように解されている。前掲塩野222頁。

4) 誤り。異議を述べた場合は、「次の常会において国会に報告しなければならない」(27条6項)のである。

5) 誤り。疑義についての説明は正しい。また内閣総理大臣の異議の制度は、過去には集団示威行進において適用例が見られたが、近年は適用例を見ない(前掲塩野222頁)。なお仮の救済手続についての準用はある(37条の5第4項)。

■実質的当事者訴訟(2011−18)【理論問題】

実質的当事者訴訟に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1) 実質的当事者訴訟は、行政主体と一般市民との間における対等当事者としての法律関係に関する訴訟のうち、公法上の法律関係に関する訴訟であり、私法上の法律関係に関する訴訟は民事訴訟となる。

2) 個別法の中に損失補償に関する規定がない場合であっても、憲法に直接基づいて損失補償を請求することが可能だと解されているが、この損失補償請求の訴訟は実質的当事者訴訟に該当する。

3) 国に対して日本国籍を有することの確認を求める訴えを提起する場合、この確認の訴えは実質的当事者訴訟に該当する。

4) 実質的当事者訴訟における原告勝訴の判決は、その事件について、被告だけでなく、関係行政機関をも拘束する。

5) 実質的当事者訴訟の対象となる行政活動については、他の法律に特別の定めがある場合を除いて、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。

■解説

【難易度】難しい。

1) 正しい。当事者訴訟(行政事件訴訟法4条)は、通常の民事訴訟と同じ類型の訴訟であるが、訴訟物が公法上のものである点で異なるに過ぎない。田中二郎『新版行政法上巻』全訂第2版(1974年、弘文堂)310頁。

2) 正しい。憲法に直接基づいた損失補償請求の可否については、最大判昭和43年11月27日。前掲塩野383−384頁。頻出の項目である。また後半部分については、前掲田中311頁括弧内。

3) 正しい。最判平成9年10月17日。前掲塩野274頁以下。

4) 正しい。41条1項、33条1項。

5) 誤り。これが正解であろう。抗告訴訟は、「行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟」(3条1項)であるので、「民事保全法に規定する仮処分をすることができない」(44条)が、実質的当事者訴訟は通常の民事訴訟と同じ類型なので、44条の拘束を免れる、と解せようか。前掲田中310頁。

■国家賠償法2条(2011−19)【理論問題】

国家賠償法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) 国家賠償法2条にいう「公の営造物」は、民法717条の「土地の工作物」を国家賠償の文脈において表現したものであるから、両者は同じ意味であり、動産はここに含まれないと解されている。

2) 国家賠償法2条は、無過失責任を定めたものであるが、無過失責任と結果責任とは異なるので、不可抗力ないし損害の回避可能性のない場合については、損害賠償責任を負うものとは解されない。

3) 外国人が被害者である場合、国家賠償法が、同法につき相互の保証があるときに限り適用されるとしているのは、公権力の行使に関する1条の責任についてのみであるから、2条の責任については、相互の保証がなくとも、被害者である外国人に対して国家賠償責任が生じる。

4) 国家賠償法2条が定める公の営造物の設置又は管理の瑕疵について、設置又は管理に当る者(設置管理者)とその費用を負担する者(費用負担者)とが異なるときは、費用負担者は、設置管理者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときに限り、被害者に対する損害賠償責任を負う。

5) 国家賠償法2条は、無過失責任を定めたものであるから、公の営造物の設置又は管理の瑕疵の判断にあたっての考慮要素は、事件当時における当該公の営造物の客観的状態に限られる。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。「公の営造物」には動産も含まれる。過去頻出の肢である。前掲塩野357頁。

2) 正しい。最判昭和50年7月25日、最判昭和50年6月26日。前掲塩野359−360頁。

3) 誤り。相互保証について定める国家賠償法6条は、「この法律は、外人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する」と規定している。よって2条の場合にも相互保証主義がはたらく。

4) 誤り。費用負担者の免責規定はない。この場合設置管理者、費用負担者ともに2条責任を負い、求償関係で賠償後の処理を行うことになる(3条)。

5) 誤り。問題文2)でもふれられているように、国家賠償法2条は結果責任を定めるものではない。これは「瑕疵を判定するについて、その物の客観的状態以外の要素をも考慮することがあるということである」。ではどんな要素をも考慮するかといえば、管理者の対応である。前掲塩野363頁。2)で「損害の回避可能性」という言葉が出てくるが、厳密には、瑕疵の判断において「管理者による損害の回避可能性」が検討される、と解されている。

■国家賠償法1条(2011−20)【判例問題】

国家賠償法1条1項の要件をみたす場合の責任の主体に関する次のア)−エ)の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) 指定確認検査機関の建築確認処分に起因する私人の損害について、当該事務の帰属する地方公共団体は、国家賠償責任を負うことはない。

イ) 都道府県の警察官の犯罪捜査が、検察官の犯罪の捜査の補助に係るものであっても、当該警察官の捜査に起因する私人の損害について、国が国家賠償責任を負うことはない。

ウ) 児童福祉法に基づいて、都道府県が要保護児童を社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所させている場合、当該施設の職員の養育監護行為に起因する児童の損害について、当該事務の帰属する都道府県が国家賠償責任を負うことがある。

エ) 都道府県の警察官が制服制帽を着用して職務行為を装い強盗した場合、被害者に対し当該都道府県が国家賠償責任を負うことがある。

1) ア)、ウ)

2) ア)、エ)

3) イ)、ウ)

4) イ)、エ)

5) ウ)、エ)

■解説

【難易度】普通。

ア) 誤り。最決平成17年6月24日。前掲櫻井他366−367頁。

イ) 誤り。最判昭和54年7月10日。都道府県警察が行う交通犯罪の捜査に付き、「検察官が自ら行う犯罪の捜査の補助に係るものであるとき(刑訴法193条3項参照)のような例外的な場合を除いて、当該都道府県の公権力の行使にほかならないものとみるべき」として、国の国家賠償責任を否定しているが、ここで述べられた「例外的な場合」国が国家賠償責任を負うことはあり得る、ということになろう。前掲塩野321頁。

ウ) 正しい。最判平成19年1月25日。前掲塩野322頁、櫻井他367頁。

エ) 正しい。最判昭和31年11月30日。頻出の肢である。前掲塩野350頁、櫻井他367頁。

よって正解は、ウとエの5)となろう。