■2010年行政書士試験・民法

行政書士合格講座行政書士試験の過去問分析>2010年行政書士試験・民法

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■制限能力者制度(2010−27)【判例、条文知識問題】

AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) Aが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、Aは当然に成年被後見人であるから、制限行為能力者であることを理由として当該意思表示に基づく譲渡契約を取り消すことができる。

2) Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消すことができる。

3) この動産が骨董品であり、Aが、鑑定人の故意に行った虚偽の鑑定結果に騙された結果、Bに対して時価よりも相当程度安価で当該動産を譲渡するという意思表示をした場合、Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、Aは当該意思表示を取り消すことができない。

4) Aが、高額な動産を妻に内緒で購入したことをとがめられたため、その場を取り繕うために、その場にたまたま居合わせたAを引き合いに出し、世話になっているBに贈与するつもりで購入したものだと言って、贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効である。

5) Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡したことにしていたところ、Bが事情を知らないCに売却した場合、Cに過失があるときには、Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。

■解説

【難易度】易しい。10年の民法は難易度が高かったので、本問の様な易しい問題は取りこぼさないようにすべきであったであろう。

1) 誤り。「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」にあり、後見開始の審判を受けた者が、成年被後見人と扱われる(民法8条)。事理弁識能力欠如が常況であることをもって、当然に成年被後見人になるわけではない。

2) 誤り。当該譲渡契約が「日常生活に関する行為」に該当するものであれば、保佐人の同意なくとも被保佐人は、単独で完全かつ有効な法律行為をなし得る(13条1項本文但書、9条但書)。

3) 誤り。第三者による詐欺である。この場合、鑑定人による欺罔行為につきBが悪意であれば、AはBへの譲渡契約を取消し得る(96条2項)。

4) 正しい。心裡留保の典型例である(93条本文)。

5) 誤り。虚偽表示(94条1項)の事案であるが、虚偽表示の無効を対抗できない「第三者」(94条2項)は、善意、無過失を具備する必要があるという説もあるが(有力説)、通説、判例は条文通り善意のみで足りるとしているので、善意、有過失のCに対しAは虚偽表示の無効を対抗できない。山田−河内−安永−松久『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)126−127頁。

■時効中断(2010−28)【判例、条文知識問題】

時効中断の効力に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはどれか。

1) 債務者Aの債権者Bに対する債務の承認によって被担保債権の時効が中断した場合に、物上保証人Cは、当該被担保債権について生じた消滅時効中断の効力を否定することはできない。

2) 物上保証人Aに対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者Bに通知した場合には、被担保債権についての消滅時効は中断する。

3) 要役地である甲地をA・B・Cの3人が共有しているが、承役地である乙地の通行地役権について消滅時効が進行している場合に、Aのみが通行地役権を行使して消滅時効を中断したときは、時効中断の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。

4) 甲地の共有者A・B・Cの3人が乙地の上に通行地役権を時効取得しそうな場合に、乙地の所有者Dは、A・B・Cのうち誰か1人に対して時効の中断をすれば、時効中断の効力はA・B・Cの3人に及ぶ。

5) A所有の甲土地をB・Cの2人が占有して取得時効が完成しそうな場合に、AがBに対してだけ時効の中断をしたときは、Bの取得時効のみ中断され、Cの取得時効は中断されることはない。

■解説

【難易度】易しい。条文知識レヴェルで対処できよう。

1) 正しい。物上保証人は、担保物権の附従性や396条の趣旨から、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効中断の効力を否定することができないというのが判例である(最判平成7年3月10日)。前掲山田他244頁。

2) 正しい。最判昭和50年11月21日。前掲山田他241頁。

3) 正しい。292条。

4) 誤り。この場合、A−C全員に対し中断をしなければ時効中断の効果は生じない(284条2項)。

5) 正しい。中断の相対効(148条)である。時効が進行している権利関係の当事者が複数の場合、中断行為に関与した当事者間のみで時効は中断する。前掲山田他244頁。

■共有(2010−29)【判例、条文知識問題】

A・B・Cの3人が、甲土地、乙土地、丙土地のすべてについて、どれも3分の1ずつの持分権をもって共有している場合の共有物分割に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定及び判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるから、たとえA・B・Cの間で5年間の共有物分割禁止の契約があった場合でも同契約は無効であり、Aは、BおよびCに対して甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することができる。

イ) Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、これらを一括して分割の対象としてAが甲土地、Bが乙土地、Cが丙土地というように各土地を単独所有とする分割方法をとることができる。

ウ) Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、乙土地および丙土地については共有関係を解消せず、Aに対してのみAの持分権に相当する甲土地を取得させ、乙土地および丙土地はBとCの共有として残すとする分割方法をとることができる。

エ) Aが、BおよびCに対して、甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求した場合において、裁判所は、Aの申立てがあれば、甲土地、乙土地および丙土地をAの単独所有とし、BおよびCに対してAから各自の持分権の価格を賠償させる方法をとらなければならない。

オ) 甲土地、乙土地および丙土地についてのBおよびCの共有持分権がDに譲渡された場合には、その旨の移転登記がないときでも、Aは、BおよびCに対しては甲土地、乙土地および丙土地の分割を請求することはできない。

1) ア)、イ)

2) ア)、オ)

3) イ)、ウ)

4) ウ)、エ)

5) エ)、オ)

■解説

【難易度】難。イ)以下は従前の試験で問われなかった箇所であり、難しかったと思われる。

ア) 誤り。5年間の共有物分割禁止契約は有効である(256条1項但書)。

イ) 正しい。共有物が多数の不動産である場合、不動産のそれぞれを単独所有にするという分割方法も認められる(最大判昭和62年4月22日)。内田貴『民法T』第2版(1999年、東大出版会)376頁

ウ) 正しい。本肢の様に、分割請求者の持分の限度で現物を分割、残りを他の共有者の共有にすることも認められる(最大判昭和62年4月22日)。前掲内田376頁。

エ) 誤り。一人が単独所有になり、他の共有者は持分の賠償を受けること(全面的価格賠償)も例外的に許されるとするのが判例であるが(最判平成8年10月31日)、この方法はしなければならない義務的なものではない。前掲内田376頁。

オ) 誤り。Dは、登記を具備していないのでAに対抗できず(177条の第三者にAが該当する)、この場合持分がB、Cにいまだ帰属するという前提で共有物の分割をすべきというのが判例である(最判昭和46年6月18日)。
よって正解は3)になろうか。

■抵当権の効力(2010−30)【判例知識、理論問題】

A銀行はBに3000万円を融資し、その貸金債権を担保するために、B所有の山林(樹木の生育する山の土地。本件樹木については立木法による登記等の対抗要件を具備していない)に抵当権の設定を受け、その旨の登記を備えたところ、Bは通常の利用の範囲を超えて山林の伐採を行った。この場合に、以下のア〜オの記述のうち、次の【考え方】に適合するものをすべて挙げた場合に、妥当なものの組合せはどれか。なお、対抗要件や即時取得については判例の見解に立つことを前提とする。

【考え方】:分離物が第三者に売却されても、抵当不動産と場所的一体性を保っている限り、抵当権の公示の衣に包まれているので、抵当権を第三者に対抗できるが、搬出されてしまうと、抵当権の効力自体は分離物に及ぶが、第三者に対する対抗力は喪失する。

ア) 抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却された場合には、A銀行は第三者への木材の引渡しよりも先に抵当権の登記を備えているので、第三者の搬出行為の禁止を求めることができる。

イ) 抵当山林上に伐採木材がある段階で木材がBから第三者に売却され、占有改定による引渡しがなされたとしても、第三者のために即時取得は成立しない。

ウ) Bと取引関係にない第三者によって伐採木材が抵当山林から不当に別の場所に搬出された場合に、A銀行は第三者に対して元の場所へ戻すように請求できる。

エ) Bによって伐採木材が抵当山林から別の場所に搬出された後に、第三者がBから木材を買い引渡しを受けた場合において、当該木材が抵当山林から搬出されたものであることを第三者が知っているときは、当該第三者は木材の取得をA銀行に主張できない。

オ) 第三者がA銀行に対する個人的な嫌がらせ目的で、Bをして抵当山林から伐採木材を別の場所に搬出させた後に、Bから木材を買い引渡しを受けた場合において、A銀行は、適切な維持管理をBに期待できないなどの特別の事情のない限り、第三者に対して自己への引渡しを求めることができない。

1) ア)、イ)、ウ)、エ)

2) ア)、イ)、ウ)、オ)

3) ア)、イ)、エ)

4) ア)、ウ)、エ)

5) イ)、ウ)、オ)

■解説

【難易度】難。正直解説を書きにくい問題である。本問の解説については後の修正を留保した上でのものという点、お断りしておきたい。

ア) 適合する。伐採木材は、第三者に売却されてもそれが「抵当山林上」にある限り公示の衣に包まれるので、銀行は第三者に対抗し、搬出行為を阻止できる。内田貴『民法V』初版(1996年、東大出版会)399頁。

イ) 適合する。伐採木材が占有改定により引渡された場合、伐採木材は依然Bの元にあるが、外観上占有の変更を生じさせない−公示の衣に包まれたまま−占有改定による即時取得は認められないとするのが判例である(大判大正5年5月16日)。淡路他『民法U』第2版(2001年、有斐閣)93頁。

ウ) 適合する。第三者は当該木材について無権利者であり、178条の「第三者」に該当しないので、Aとの間で対抗関係を生じない。そして、Aは抵当権の効力としての物権的請求権に基づき、木材を元の場所に戻すよう請求し得る。

エ) 適合しない。Aと第三者(単純悪意者)は対抗関係に立つが、「考え方」によれば、伐採木材が別の場所にある以上、Aの抵当権は対抗力を失う結果、Aは第三者に対抗できない。内田貴『民法V』初版(1996年、東大出版会)399頁参照。

オ) 適合する。第三者は、「嫌がらせ目的」で木材を購入しているので背信的悪意者であり、178条の「第三者」に該当しないので、Aとの間で対抗関係を生じない。そしてAは抵当権に基づく物権的請求権として「元の場所に木材を戻す」ことを請求できるが、「自己」への引渡は原則としてできないというのが判例である(最判平成17年3月10日)。

よって正解は2)になろう。

■保証債務(2010−31)【判例、条文知識問題】

保証に関する1)−5)の「相談」のうち、民法の規定および判例に照らし、「可能です」と回答しうるものはどれか。

1) 私は、AがBとの間に締結した土地の売買契約につき、売主であるAの土地引渡等の債務につき保証人となりましたが、このたびBがAの債務不履行を理由として売買契約を解除しました。Bは、私に対して、Aが受領した代金の返還について保証債務を履行せよと主張しています。私が保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。

2) 私は、AがBから金銭の貸付を受けるにあたり、Aに頼まれて物上保証人となることにし、Bのために私の所有する不動産に抵当権を設定しました。このたびAの債務の期限が到来しましたが、最近資金繰りに窮しているAには債務を履行する様子がみられず、抵当権が実行されるのはほぼ確実です。私はAに資力があるうちにあらかじめ求償権を行使しておきたいのですが、これは可能でしょうか。

3) 私の経営する会社甲は、AがBと新たに取引関係を結ぶにあたり、取引開始時から3ヶ月間の取引に関してAがBに対して負う一切の債務を保証することとし、契約書を作成しましたが、特に極度額を定めていませんでした。このたび、この期間内のA・B間の取引によって、私が想定していた以上の債務をAが負うことになり、Bが甲に対して保証債務の履行を求めてきました。甲が保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。

4) 私は、AがB所有のアパートを賃借するにあたりAの保証人となりました。このたびA・B間の契約がAの賃料不払いを理由として解除されたところ、Bは、Aの滞納した賃料だけでなく、Aが立ち退くまでの間に生じた損害の賠償についても保証債務の履行をせよと主張しています。私は保証債務の履行を拒むことは可能でしょうか。

5) 私は、AがBから400万円の貸付を受けるにあたり、Aから依頼されてCと共に保証人となりましたが、その際、私およびCは、Aの債務の全額について責任を負うものとする特約を結びました。このたび、私はBから保証債務の履行を求められて400万円全額を弁済しましたが、私は、Cに対して200万円の求償を請求することが可能でしょうか。

■解説

【難易度】やや難。

1) 回答し得ない。この場合、特段の意思表示なき限りAの債務不履行に伴う原状回復義務についても、「私」は、保証人としての責任を負う(最大判昭和40年6月30日)。野村−池田−栗田−永田『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)150頁。

2) 回答し得ない。委託を受けた保証人に認められる事前の求償権の規定(460条)は、委託を受けた物上保証人に類推適用できない(最判平成2年12月18日)。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』 第2版(2001年、有斐閣)245頁。

3) 回答し得ない。貸金等根保証契約(継続的保証)の事案である。当該契約につき極度額を定めていない根保証契約は無効とされるが(465条の2第2項)、保証人が法人の場合はこの限りではない(465条の2第1項括弧書)ので、法人たる「甲」は保証債務を履行しなければならない。

4) 回答し得ない。「私」は、Aの損害賠償債務についても保証人としての責任を負う(447条1項)。

5) 回答し得る。この場合「私」とCは共同保証人であり、両者ともAの全債務の弁済義務を負っているから(分別の利益がない)、「私」とCは共同保証の内の保証連帯の関係にある。そして「私」はAの債務全額を弁済しているので、連帯債務者相互間と同様な求償権が認められる(465条1項、442−444条)。野村他『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)164頁。

■委任、事務管理(2010−32)【条文知識問題】

AはBのためにある事務処理を行った。これが、【1】A・B間における委任契約に基づく債務の履行である場合と、【2】Bのために行った事務管理である場合とに関する次のア)−オ)の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア) Aは、【1】の場合において、事務の処理に関して費用を要するときは、Bに対しその費用の前払いを請求することができるのに対し、【2】の場合には、Bに対し事務の管理により生じる費用の前払いを請求することができない。

イ) Aは、【1】の場合には、事務を処理するために善良なる管理者の注意をもって必要と判断した費用についてBに対し償還請求をすることができるのに対し、【2】の場合には、Bのために有益であった費用についてのみBに対し償還請求をすることができる。

ウ) Aは、【1】の場合には、Bを代理する権限が法律上当然には認められないのに対し、【2】の場合には、Bを代理する権限が法律上当然に認められる。

エ) Aは、【1】の場合には、事務を処理するにあたって受け取った金銭をBに引き渡さなければならないが、【2】の場合には、Bに対しそのような義務を負わない。

オ) Aは、【1】の場合には、委任の終了後に遅滞なくBに事務処理の経過および結果を報告しなければならないのに対し、【2】の場合には、事務管理を終了しても、Bの請求がない限り、事務処理の結果を報告する義務を負わない。

1) ア)、イ)

2) ア)、オ)

3) イ)、エ)

4) ウ)、エ)

5) ウ)、オ)

■解説

【難易度】普通。

ア) 正しい。委任の場合は事務処理費用の前払請求が可能であるが(649条)、事務管理では認められていない。

イ) 正しい。委任の場合の善管注意義務、必要費については(644、650条1項)。事務管理については702条1項。

ウ) 誤り。委任に代理権授与が常に伴うとは限らない。内田貴『民法U』初版(1997年、東大出版会)269−270頁。また事務管理は、Bを代理する権限が認められるわけではない。よってAがBの名でした契約はBに帰属しない(無権代理になる)。前掲内田515頁。

エ) 誤り。事務管理も委任の場合と同様の義務を負う(646、701条)。

オ) 誤り。事務管理も委任の場合と同様の義務を負う(645、701条)。

よって正解は1)のア)、イ)となろう。

■不当利得、不法原因給付(2010−33)【判例知識問題】

AのBに対する不当利得返還請求等に関する次のア)−オ)の記述のうち、判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。

ア) Aは、Bに対する未払い賃料はないことを知りつつ、Bから賃料不払いを理由とした賃貸建物明渡請求訴訟を提起された場合における防禦方法として支払いをなすものであることを特に表示したうえで、Bに弁済を行った。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として給付した弁済額の返還を請求することができる。

イ) Aは、賭博に負けたことによる債務の弁済として、Bに高価な骨董品を引き渡したが、その後、A・B間でBがこの骨董品をAに返還する旨の契約をした。この場合に、Aは、Bに対し、この骨董品の返還を請求することができる。

ウ) Cは、BからB所有の家屋を賃借した際に、CがBに対して権利金を支払わない代わりに、Cが当該家屋の修繕業務を負うこととする旨を合意したため、後日、当該家屋の修繕工事が必要となった際、CはAに対してこれを依頼し、Aが同工事を完了したが、CはAに修繕代金を支払う前に無資力となってしまった。この場合に、Aは、Bに対し不当利得として修繕代金相当額の返還を請求することはできない。

エ) Aは、Bとの愛人関係を維持するために、自己の有する未登記建物をBに贈与し、これを引き渡した。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得としてこの建物の返還を請求することができる。

オ) Bは、Cから強迫を受け、同人の言うままに、Aと金銭消費貸借契約を締結し、Aに指示してBとは何らの法律上または事実上の関係のないDに貸付金を交付させたところ、Bが強迫を理由にAとの当該金銭消費貸借契約を取り消した。この場合に、Aは、Bに対し、不当利得として貸付金相当額の返還を請求することができる。

1) 1つ

2) 2つ

3) 3つ

4) 4つ

5) 5つ

■解説

【難易度】やや難。ウ)が特に難解であろう。

ア) 正しい。最判昭和35年5月6日等である。前掲内田561頁。

イ) 正しい。給付が不法原因給付である場合、給付後給付物を返還するという合意が成立した場合、その効力を認めるのが判例である(最判昭和28年1月22日)。

ウ) 正しい。転用物訴権が問題となる事案である。本肢の事案について最判平成7年9月19日は、Bが法律上の原因なしで修繕工事に要した財産及び労務の提供に相当する利益を受けたということができるのは、BとCとの間の賃貸借契約を全体としてみて、Bが対価関係なしに右利益を受けたときに限られる、としている。そして判例は、権利金を受け取らないということと建物の改修による利益を対価関係があるものとし、「法律上の原因なし」ということを否定している。前掲内田540頁以下参照。

エ) 誤り。本肢の場合、未登記建物は引渡があれば、不法原因給付の「給付」と言えるとするのが判例であり(最大判昭和45年10月21日)、結果Aの返還請求は認められないことになる。前掲内田567頁以下。

オ) 誤り。最判平成10年5月26日は、BD間には事前に何らの法律上又は事実上の関係はなく、Cからの強迫により言われるままにBがDに貸付金を給付しているという状況下では、Aからの不当利得返還請求につき、Bが当該給付につき給付相当額の「利益」(703条の条文注意)を得ているとはいえないとしている。

よって正解は2)の2つとなろう。

■親子関係(2010−34)【条文、判例知識問題】

A男と、B女が出産したCとの関係に関する次の記述のうち、民法の規定または判例に照らし、誤っているものはどれか。

1) AとBの内縁関係の継続中にBがCを出産し、AによってCを嫡出子とする出生届がなされた場合において、誤ってこれが受理されたときは、この届出により認知としての効力が生ずる。

2) Bは、Aとの内縁関係の継続中に懐胎し、その後、Aと適法に婚姻をし、婚姻成立後150日を経てCを出産した場合において、AがCとの間に父子関係が存在しないことを争うには、嫡出否認の訴えではなく、親子関係不存在確認の訴えによらなければならない。

3) Bは、Aと離婚した後250日を経てCを出産したが、Aは、離婚の1年以上前から刑務所に収容されていた場合において、Aは、Cとの父子関係を争うためには嫡出否認の訴えによらなければならない。

4) Aによる嫡出否認の訴えは、AがCの出生を知った時から1年以内に提起しなければならないが、Aが成年被後見人である場合には、この期間は後見開始の審判の取消しがあった後にAがCの出生を知った時から起算する。

5) Aが嫡出否認の訴えを提起する場合において、Cが幼少で意思能力を有せず、かつ、Bがすでに死亡しているときには、Cの未成年後見人がいるときであっても、家庭裁判所が選任した特別代理人を相手方とする。

■解説

【難易度】易しい。3)等は頻出の肢である。

1) 正しい。最判昭和53年2月24日である。佐藤他『民法X』第2版補訂(2000年、有斐閣)71頁。

2) 正しい。Cは父性推定の及ばない子であるから(最判昭和41年2月15日。772条2項の「婚姻の成立」とは、婚姻の届出の日を指す)、AがCとの父子関係を争う場合嫡出否認の訴えを使うのではなく(「働いている」父子推定を「破る」制度がこの訴えである)、親子関係不存在確認の訴えによる。前掲佐藤他66頁。

3) 誤り。BはAと離婚後250日を経てCを出産しているので、CはAの子と推定されそうだが(772条参照)、Aは離婚の1年以上も前から在監しており肉体関係がない以上父性推定は機能せず(最判昭和44年5月29日)、AがCとの父子関係を争うには嫡出否認の訴えではなく親子関係不存在確認の訴えによる(人事訴訟法2条2号)。前掲佐藤他64、67頁。

4) 正しい。777、778条。

5) 正しい。775条。

■失踪宣告と相続(2010−35)【条文、判例知識問題】

Aは、海外出張に出かけたが、帰国予定の日に帰国しないまま長期間が経過した。その間、家族としては関係者および関係機関に問い合わせ、可能な限りの捜索をしたが、生死不明のまま出張から10年以上が経過した。そこで、Aについて、Aの妻Bの請求に基づき家庭裁判所によって失踪宣告がなされた。Aの相続人としては、妻Bおよび子Cの2人がいる場合に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) BがAの出張前にAから誕生日に宝石をプレゼントされていたときは、Aの相続開始とされる時においてAが有していた財産の価額に、その宝石の価額を加えたものを相続財産とみなし、Bの相続分の中からその宝石の価額を控除した残額をもってBの相続分とする。

イ) Aの相続についての限定承認は、BとCが共同してのみ家庭裁判所に申述することができる。

ウ) Aの遺言が存在した場合に、その遺言の効力は、Aの生死が不明になった時から7年の期間が満了した時からその効力を生ずる。

エ) CがAの失踪宣告前にAの無権代理人としてA所有の土地および建物をDに売却した場合に、BがCと共同して追認をしないときでも、当該無権代理行為は有効となる。

オ) Aについて失踪宣告がなされた後にBはD男と婚姻したが、その後、失踪宣告が取り消された場合に、A・B間の婚姻とB・D間の婚姻は、戸籍の上では共に存在することになるが、両者の婚姻は、当然には無効とならず、共に重婚を理由として取り消し得るにすぎない。

1) ア)、イ)

2) ア)、オ)

3) イ)、ウ)

4) ウ)、エ)

5) エ)、オ)

■解説

【難易度】普通。

ア) 誤り。要は本肢の「プレゼントされた宝石」が、特別受益の持戻(903条1項)に該当するかであるが、相続人への贈与一般がこれに該当するのではなく「生計の資本」としてなされたものが該当する。本肢の宝石はあくまで誕生日プレゼントであり、生計の資本として贈与されたとは言えないであろう。佐藤他『民法X』第2版補訂(2000年、有斐閣)177頁。

イ) 正しい。923条。

ウ) 正しい。31、985条。

エ) 誤り。無権代理人による本人相続の事案であるが、Aの追認権はCの他Bにも相続されるので、CBが共同で追認しない限り、無権代理行為は有効にならないとするのが判例である(最判平成5年1月21日。信義則説−追認不可分説)。内田貴『民法T』第2版(1999年、東大出版会)155頁以下参照。

オ) 誤り。この点は争いがあるが、BDがAの生きていることにつき善意であれば、前婚は復活せず、後婚のみが残り、BDのどちらか又は共に悪意の場合は、前婚が復活し、重婚状態が生ずる(前婚は離婚原因〔770条1項5号〕、後婚は取消原因〔744条〕となる)とするのがかつての通説である。前掲内田97頁。

よって正解はイ)、ウ)の2つになろう。