■2010年行政書士試験・法令記述式問題

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■行政法・事情判決(2010−45)【判例問題】

Y組合の施工する土地区画整理事業の事業地内に土地を所有していたXは、Yの換地処分によって、従前の土地に変えて新たな土地を指定された。

しかし、Xは、新たに指定された土地が従前の土地と比べて狭すぎるため、換地処分は土地区画整理法に違反すると主張して、Yを被告として、換地処分の取消訴訟を提起した。審理の結果、裁判所は、Xの主張のとおり、換地処分は違法であるとの結論に達した。

しかし、審理中に、問題の土地区画整理事業による造成工事は既に終了し、新たな土地所有者らによる建物の建設も終了するなど、Xに従前の土地を返還するのは極めて困難な状況となっている。

この場合、裁判所による判決は、どのような内容の主文となり、また、このような判決は何と呼ばれるか。40字程度で記述しなさい。

■解説

【難易度】易しい。最大判平成20年9月10日が元になっていると思われるが、この判例を知らなくとも本問は正解できる。

問題文を簡単にまとめると、「換地処分は違法だが、原状回復が極めて困難という場合の判決は如何」、ということになろう。違法な処分ではあるが、それを覆せない場合の判決として、事情判決(行政事件訴訟法31条)があるということを思い出せばよい。

答えは次のようになろうか。

「本件換地処分を違法と宣言しつつ、請求を棄却する主文となり、また、事情判決と呼ばれる。」(42文字)

なお、原状回復が困難という事はそもそも「訴えの利益」を欠く、即ち事情判決ではなく請求却下判決が問題となるのではないか、という疑問が出てくる。下級審では事実そのような例があるが、この点については、塩野宏『行政法U』第4版(2005年、有斐閣)179頁参照。本問については、前掲塩野175頁以下参照。

■民法・弁済による代位(2010−47)【条文知識問題】

Aは、Bから金銭を借り受けたが、その際、A所有の甲土地に抵当権が設定されて、その旨の登記が経由され、また、Cが連帯保証人となった。その後、CはBに対してAの債務の全部を弁済し、Cの同弁済後に、甲土地はAからDに譲渡された。この場合において、Cは、Dを相手にして、どのような権利の確保のために、どのような手続きを経た上で、どのような権利を行使することができるか。40字程度で記述しなさい。

■解説

【難易度】難しい。

本問では、CがAの債務を弁済しているが、その結果生じるCのAに対する「求償権」(民法459条1項)を如何に確保するかが問題となる。

この点Cは、弁済につき正当の利益を有する連帯保証人であるから、弁済により当然に債権者を代位する(500条)。これによりCは、債権者Bの権能(抵当権)を行使し、求償権を満足させていく事になる。

但し本問題では、C弁済後甲土地に利害関係を有するDが登場している。そこで甲土地についてCD間の関係をどう調整するか問題になる。これについては、Cは「代位の付記登記」をしないと、Bを代位できないとされている(501条1号)。弁済後に抵当権が消滅したものと解して甲土地を購入したDを代位に伴う損害から保護しなければならないからである。

「Aに対し有する求償権を確保するため、代位の付記登記を経た上で抵当権を行使する事ができる。(44文字)」

本問については、野村−栗田−池田−永田『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)222頁以下参照。

■民法・相殺(2010−48)【判例問題】

以下の【相談】に対して、〔 〕の中に適切な文章を40字程度で記述して補い、最高裁判所の判例を踏まえた【回答】を完成させなさい。

【相談】
私は、X氏から200万円を借りていますが、先日自宅でその返済に関してX氏と話し合いをしているうちに口論になり、激昂したX氏が投げた灰皿が、居間にあったシャンデリア(時価150万円相当)に当たり、シャンデリアが全損してしまいました。
X氏はこの件については謝罪し、きちんと弁償するとはいっていますが、貸したお金についてはいますぐにでも現金で返してくれないと困るといっています。私としては、損害賠償額を差し引いて50万円のみ払えばよいと思っているのですが、このようなことはできるでしょうか。

【回答】
民法509条は「債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。」としています。その趣旨は、判例によれば〔 〕ことにあるとされています。ですから今回の場合のように、不法行為の被害者であるあなた自身が自ら不法行為にもとづく損害賠償債権を自働債権として、不法行為による損害賠償債権以外の債権を受動債権として相殺をすることは、禁止されていません。

■解説

【難易度】やや難。

不法行為者を甲、その被害者を乙とする。
民法509条は、「甲が乙に対して有する債権を『自働債権』として、乙が甲に対する損害賠償請求権を『受働債権』として相殺することを禁止する」。よって【回答】にあるように、この反対解釈として、乙が「損害賠償請求権」を『自働債権』として、不法行為による損害賠償債権以外の債権を『受働債権』として相殺をする事は可能である。

何故以上のように解されるか、それは509条の趣旨が、@損害賠償の支払による被害者の現実的な救済、A不法行為の誘発回避(例:Aは貸金債権をBに有しているが、Bが返済しない。そこでAがBに加害し、Bが有することになったAへの損害賠償債権を受働債権として、前記貸金債権を相殺し満足を得るという事を回避する)、の2点にあるとされている(最判昭和42年11月30日)。

「その趣旨は、判例によれば〔損害賠償を支払わせ、不法行為の被害者を現実的に救済することと、不法行為の誘発回避という〕(43文字)ことにあるとされています」

なお双方の債権が、両方とも相手方の不法行為によるというものである場合の相殺は如何。この場合は相殺は許されないと解されている(最判昭和54年9月7日)。本問については、前掲野村他247−248頁参照。