■2009年行政書士試験・民法

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■代理(2009−27)【判例、条文知識問題】

代理に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) Aは留守中の財産の管理につき単に妻Bに任せるといって海外へ単身赴任したところ、BがAの現金をA名義の定期預金としたときは、代理権の範囲外の行為に当たり、その効果はAに帰属しない。

2) 未成年者Aが相続により建物を取得した後に、Aの法定代理人である母Bが、自分が金融業者Cから金銭を借りる際に、Aを代理して行ったCとの間の当該建物への抵当権設定契約は、自己契約に該当しないので、その効果はAに帰属する。

3) A所有の建物を売却する代理権をAから与えられたBが、自らその買主となった場合に、そのままBが移転登記を済ませてしまったときには、AB間の売買契約について、Aに効果が帰属する。

4) 建物を購入する代理権をAから与えられたBが、Cから建物を買った場合に、Bが未成年者であったときでも、Aは、Bの未成年であることを理由にした売買契約の取消しをCに主張することはできない。

5) Aの代理人Bが、Cを騙してC所有の建物を安い値で買った場合、AがBの欺岡行為につき善意無過失であったときには、B自身の欺岡行為なので、CはBの詐欺を理由にした売買契約の取消しをAに主張することはできない。

■解説

【難易度】普通。事例形式の出題ではあるが、問題文中には特にひっかける要素もなく、条文知識で肢の正誤判断は可能だろう。

1) 誤り。「夫が単身で長期の海外駐在に出る際、『財産の管理についてあとのことは任せた』と妻に言い残したとする」。この場合代理権の範囲は明らかではないものの、Bは103条により管理行為(保存行為、改良行為、利用行為)をなし得る。そして現金を定期預金にする行為は、利用行為に該当すると解されているので効果はAに帰属する。内田貴『民法T』第2版(1999年、東大出版会)129−130頁。

2) 誤り。当該契約は、自己契約の問題というより制度趣旨−代理行為が本人の利益を害する−を同じくする「利益相反」(826条1項)行為に該当するので、効果はAに帰属しない。山田−河内−安永−松久『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)171頁以下。

3) 誤り。代理人が本人を代理しつつ、代理人自身との間で契約を締結することを「自己契約」と言うが(前掲山田他169頁以下)、これをすることは許されていない(108条本文)。当該Bの行為は自己契約であり、Aに契約の効果は帰属せず、Bの行為は無権代理となる。

4) 正しい。代理人は行為能力者であることを要しない(102条)のだから、未成年者Bを代理人にしたAは、Bの能力制限を理由とする売買契約の取消を主張できない。前掲山田他178頁。

5) 誤り。代理行為に瑕疵が生じた場合、善意悪意等は代理人について決める(101条1項)ので、本人Aが善意無過失であっても、CはAに詐欺取消の効果を主張できる。前掲山田他177頁。

■代理(2009−28)【判例、条文知識問題】

時効に関する次のA)−E)の各相談に関して、民法の規定および判例に照らし、「できます」と回答しうるものの組合せはどれか。

Aの相談:「私は13年前、知人の債務を物上保証するため、私の所有する土地・建物に抵当権を設定しました。知人のこの債務は弁済期から11年が経過していますが、債権者は、4年前に知人が債務を承認していることを理由に、時効は完成していないと主張しています。民法によれば、時効の中断は当事者及びその承継人の間においてのみその効力を有するとありますが、私は時効の完成を主張して抵当権の抹消を請求できますか。」

Bの相談:「私は築25年のアパートを賃借して暮らしています。このアパートは賃貸人の先代が誤って甲氏の所有地を自己所有地と認識して建ててしまったものですが、これまで特に紛争になることもなく現在に至っています。このたび、甲氏の相続人である乙氏が、一連の事情説明とともにアパートからの立ち退きを求めてきました。私は賃貸人が敷地の土地を時効取得したと主張して立ち退きを拒否できますか。」

Cの相談:「30年程前に私の祖父が亡くなりました。祖父は唯一の遺産であった自宅の土地・建物を祖父の知人に遺贈したため、相続人であった私の父は直ちに遺留分を主張して、当該土地・建物についての共有持分が認められたのですが、その登記をしないまま今日に至っています。このたび父が亡くなり、父を単独相続した私が先方に共有持分についての登記への協力を求めたところ、20年以上経過しているので時効だといって応じてもらえません。私は移転登記を求めることはできますか。」

Dの相談:「私は他人にお金を貸し、その担保として債務者の所有する土地・建物に2番抵当権の設定を受けています。このたび、1番抵当権の被担保債権が消滅時効にかかったことがわかったのですが、私は、私の貸金債権の弁済期が到来していない現時点において、この事実を主張して、私の抵当権の順位を繰り上げてもらうことができますか。」

Eの相談:「叔父は7年ほど前に重度の認知症になり後見開始の審判を受けました。配偶者である叔母が後見人となっていたところ、今年2月10日にこの叔母が急逝し、同年6月10日に甥の私が後見人に選任されました。就任後調べたところ、叔父が以前に他人に貸し付けた300万円の債権が10年前の6月1日に弁済期を迎えた後、未回収のまま放置されていることを知り、あわてて本年6月20日に返済を求めましたが、先方はすでに時効期間が満了していることを理由に応じてくれません。この債権について返還を求めることができますか。」

1) Aの相談とBの相談

2) Aの相談とCの相談

3) Bの相談とDの相談

4) Cの相談とEの相談

5) Dの相談とEの相談

■解説

【難易度】難しい。事例形式の出題であり、かつ1つの事例の文章が長く数字も色々出てくるので、難しい問題であると言えよう。

A) 回答できない。知人の債務についての記述は正しいが(147条3号、167条1項参照)、この債務を保証するための従たる権利である抵当権は、被担保債権から独立して消滅時効にはかからないと解されているので、Aは抵当権の抹消を請求できない。前掲山田他258頁。

B) 回答できない。このような場合、賃貸人の甲所有地についての取得時効を、Bは援用できないとするのが判例である(最判昭和44年7月15日)。前掲山田他226頁。

C) 回答できる。父と祖父の知人の共有であった土地、建物に付き、父が自己の共有持分を登記しなくとも、持分−量的に制限された「所有権」−は消滅時効にかからないし(167条2項)、所有権に基づく登記請求権も消滅時効にかからないと解されているので、父を単独相続したCは、移転登記を求めるができる、と言えようか。前掲内田292、372頁参照。なお最判平成7年6月9日。

D) 回答できない。後順位抵当権者は、先順位抵当権者の消滅時効を援用できないとするのが判例(最判平成11年10月21日)である。前掲山田他228頁。

E) 回答できる。時効の停止の問題である。叔父の債権は、弁済期から10年経過しているが、10年経過していない今年2月の段階で叔父の後見人が死亡し、6月10日にEが後見人になったのだから、「時効の期間の満了前6箇月以内の間に成年被後見人に法定代理人がないとき」に該当し、時効は、Eが法定代理人に「就職した時から6箇月を経過するまでの間」完成しない(158条1項)。前掲山田他245頁以下。

よって正解は4)になろう。

■抵当権(2009−29)【判例、条文知識問題】

Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。この場合における抵当権の消滅に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) Aの抵当権が根抵当権である場合において、Bが破産手続開始の決定を受けたときは、被担保債権は確定して満足し、根抵当権は確定的に消滅する。

イ) Aの抵当権が根抵当権である場合において、元本が確定した後に、Bから土地の所有権を取得したCが、極度額に相当する金額をAに支払い、根抵当権の消滅請求をしたときは、確定した被担保債権の額が極度額を超えていたとしても、Aの根抵当権は、確定的に消滅する。

ウ) BがAに対し、残存元本に加えて、最後の2年分の利息および遅延損害金を支払った場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。

エ) 第三者Cが、土地の所有権を時効によって取得した場合には、Aの抵当権は、確定的に消滅する。
オ) 第三者Cが、BのAに対する債務の全額を弁済し、その弁済と同時にAの承諾を得ていた場合には、CはAに代位することができるが、抵当権は、確定的に消滅する。

1) ア)、ウ)

2) ア)、エ)

3) イ)、エ)

4) イ)、オ)

5) ウ)、オ)

■解説

【難易度】やや難。抵当権自体が理解するのに難しいだけに、根抵当関係についての正誤判断はよりいっそう厄介であったと思う。

ア) 誤り。債務者が破産手続開始の決定を受けた場合、根抵当権は確定する(398条の20第1項4号)。この確定とは、根抵当権により担保される債権が「不特定」であった状態(398条の2第1項参照)から「特定」された状態に変わる事を指すが、確定は、根抵当権の消滅とは関係がない。特定された元本債権が実際履行されなければ(満足されなければ)、根抵当権をAは実行する事ができる。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』 第2版(2001年、有斐閣)299頁。

イ) 正しい。法398条の22第1項。根抵当権消滅請求権である。前掲淡路他『民法U』 第2版(2001年、有斐閣)301頁。

ウ) 誤り。375条を素材にした問題であるが、同条は後順位抵当権者等との関係について、抵当権の効力範囲を調整するものであり、債務者であるBが抵当権を消滅するには、債務全額の弁済を要する。前掲淡路他248頁以下。

エ) 正しい。397条。前掲淡路他285頁以下。

オ) 誤り。第三者の弁済(474条)であるが、Cは債権者Aの同意を得てAを代位する事ができる(499条1項)。この結果Cは、Aが有していた一切の権利を行使できるようになるので(501条)、Aの抵当権を行使する事も可能である。野村−栗田−池田−永田『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)220頁以下。

よって正解は3)になろう。

■催告(2009−30)【条文知識問題】

Aに対して債務を負うBは、Aのために、自己が所有する土地に抵当権を設定した(他に抵当権者は存在しない)。この場合における抵当権の消滅に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア) Aは成年被保佐人であるBとの間で、Bの所有する不動産を購入する契約を締結したが、後日Bが制限行為能力者であることを知った。Aは、1ヶ月以上の期間を定めて、Bに対し保佐人の追認を得るべき旨を催告したが、所定の期間を過ぎても追認を得た旨の通知がない。この場合、その行為は追認されたものとみなされる。

イ) CはDとの間で、C所有の自動車を、代金後払い、代金額150万円の約定でDに売却する契約を締結した。Cは自動車の引き渡しを完了したが、代金支払期日を経過してもDからの代金の支払いがない。そこでCはDに対して相当の期間を定めて代金を支払うよう催告したが、期日までに代金の支払いがない。この場合、C、D間の売買契約は法律上当然に効力を失う。

ウ) Eは知人FがGより100万円の融資を受けるにあたり、保証(単純保証)する旨を約した。弁済期後、GはいきなりEに対して保証債務の履行を求めてきたので、Eはまずは主たる債務者に催告するよう請求した。ところがGがFに催告したときにはFの資産状況が悪化しており、GはFから全額の弁済を受けることができなかった。この場合、EはGが直ちにFに催告していれば弁済を受けられた限度で保証債務の履行を免れることができる。

エ) Hは甲建物を抵当権の実行による競売により買い受けたが、甲建物には、抵当権設定後に従前の所有者より賃借したIが居住している。HはIに対し、相当の期間を定めて甲建物の賃料1ヶ月分以上の支払いを催告したが、期間経過後もIが賃料を支払わない場合には、Hは買受け後6ヶ月を経過した後、Iに対して建物の明け渡しを求めることができる。

オ) Jは、自己の所有する乙土地を、その死後、世話こなった友人Kに無償で与える旨の内容を含む遺言書を作成した。Jの死後、遺言の内容が明らかになり、Jの相続人らはKに対して相当の期間を定めてこの遺贈を承認するか放棄するかを知らせて欲しいと催告したが、Kからは期間内に返答がない。この場合、Kは遺贈を承認したものとみなされる。

1) ア)、イ)

2) ア)、ウ)

3) イ)、エ)

4) ウ)、オ)

5) エ)、オ)

■解説

【難易度】普通。

ア) 誤り。この場合は、追認が擬制されるのではなく、Bのなした行為の取消が擬制される(20条4項)。追認が擬制されるのは、AがBの保佐人に対し催告をした場合である(20条2項)。前掲山田他『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)47頁以下。

イ) 誤り。「売買契約は法律上当然に効力を失う」という点が誤り。無効ではなく、CはDに債務不履行責任を追及できる(412条以下)。

ウ) 正しい。催告の抗弁権(452条)の事案である。債権者が、催告の抗弁権を受けたにもかかわらず、主たる債務者への請求を怠りその間に債務者の資力が減少し、主たる債務者から全部の弁済を受けることができなくなったような場合、保証人は、債権者が直ちに催告又は執行をすれば弁済を得ることができた限度において、その義務を免れる(455条)。前掲野村他『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)150頁以下。

エ) 誤り。この場合は6ヶ月経過していなくとも建物の明渡を求めることができる(395条2項)。

オ) 正しい。987条。

よって正解は4)になろう。

■連帯債務(2009−31)【条文知識問題】

A、B、C三人がDに対して60万円の連帯債務を負っている場合に関する次のア)−オ)の記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。

ア) AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であるときは、Aは、B、Cに20万円ずつ求償できるが、もしCが無資力のときは、Bに対して30万円の求償をすることができる。

イ) AがDに60万円を弁済した場合に、A、B、Cの負担部分が1:1:0であり(Cには負担部分がない)、また、Bが無資力のときは、Aは、B、Cに20万円ずつ求償することができる。

ウ) DがAに対して60万円の債務を免除した場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であるときは、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負うことになる。

エ) DがAに対して連帯の免除をした場合に、A、B、C三人の負担部分が平等であったときは、Aは、20万円の分割債務を負い、B、Cは、40万円ずつの連帯債務を負うことになる。

オ) A、B、C三人の負担部分が平等である事情の下で、DがAに対して連帯の免除をした場合に、Bが債務全額を弁済したときに、もしCが無資力であったとすると、Cが弁済することができない部分のうちAが負担すべき10万円はDが負担する

1) ア)、イ)

2) ア)、ウ)

3) イ)、エ)

4) ウ)、エ)

5) ウ)、オ)

■解説

【難易度】やや難。複数の当事者および数字が色々出てくるので、ちょっと混乱を引き起こす問題であったと思う。

ア) 正しい。Cが無資力の場合、その負担部分20万円についてはA、Bが自己の負担部分に応じて負担する(この場合は折半する)ことになるので、AはBに30万円求償できる(444条本文)。前掲野村他『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)140頁。

イ) 誤り。この場合判例は、無資力者Bの負担部分をACで平等に負担する(AはCに15万円の求償ができる)とするが、学説は、負担部分0の者(C)には求償できないという理由で、AがBの負担部分を全額負うとする者が多い。前掲野村他140−141頁。いずれにしろ、問題文中で言う20万円ずつの求償はできない。

ウ) 正しい。免除の場合、Aの負担部分については他の債務者も債務を免れることになる(437条)ので、B、CはAの免除以降、40万円の連帯債務を負う。前掲野村他133−134頁。

エ) 誤り。連帯の免除とは、「債権者が連帯債務者の1人または数人(ないし全員)に対して債務額を負担部分にかぎって請求し、それ以上請求しないこと」(前掲野村他141頁)を言う。問題文(相対的連帯免除)の場合、免除を受けたAは負担部分20万円の分割債務を負担し、残りのB、Cは、依然として連帯債務の全部給付義務、つまり60万円の給付義務を負担する。前掲野村他141頁。

オ) 正しい。この場合、本来はCの無資力(20万円)につき(ア参照)、AとBが10万円ずつ負担することになるが、Aは連帯の免除を受けているので、Aの分は債権者Dが負担することになる(445条)。前掲野村他141頁。

よって正解は3)になろう。

■有益費、費用償還(2009−32)【判例、条文知識問題】

他人の財産に対する費用の支出とその償還請求に関する次のア)−オ)の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものの組合せはどれか。

ア) A・B間の家屋売買契約が解除されても、買主Aは解除前に支出した共益費の償還を受けるまで家屋を留置することができるが、Aは、留置中にこれを使用することにより、法律上の原因なく利得することとなるから、その利得を不当利得として返還する義務がある。

イ) Aは、Bに対して自己が所有する士地を売り渡したが、この売買契約と同時に買戻しの特約をしていた場合において、Aが買戻権を行使したときは、この売買契約成立後Aが買戻権を行使するまでにBがその土地につき必要費を支出していたとしても、Bは、Aに対してこの費用の償還請求をすることができない。

ウ) Aは、Bから建物を賃借して居住し、その間に同建物につき有益費を支出したが、その後に、B・C間で賃貸人たる地位の移転が生じた場合に、Aは、原則としてBに対しては有益費の償還を請求することができない。

エ) Aは、Bに対して自己が所有する建物を賃貸していたが、Bが有益費を支出して同建物に増築部分を付加して同建物と一体とした場合において、後にその増築部分が隣家の火災により類焼して失われたときにも、Bは、Aに対して増築部分につき有益費の償還請求をすることができる。

オ) Aは、Bと寄託契約に基づき受寄物を保管していたが、保管事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、Bに対し、その費用および支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

1) ア)、ウ)

2) ア)、エ)

3) イ)、エ)

4) イ)、オ)

5) ウ)、オ)

■解説

【難易度】難。有益費といった費用償還請求についての判例問題である。過去出題されていない判例が多く取り上げられているので、難しい問題であったと思う。

ア) 正しい。債務者が給付された物を利用した場合、その使用による利益は不当利得として返還する義務が有る(大判昭和11年5月11日)。古い文献で申し訳ないが、松坂佐一『民法提要債権各論』第3版(1980年、有斐閣)66頁。

イ) 誤り。買主が不動産に付き必要費、有益費を支出していた場合、買戻権者は、196条に従いこれらを償還する義務を負う。前掲松坂108−109頁。

ウ) 正しい。新賃貸人が有益費の償還義務者となり、旧賃貸人に償還請求はできない、とするのが判例(最判昭和46年2月19日)である。前掲松坂132頁。

エ) 誤り。有益費の支出により、生じた価格の増加が現存している場合に有益費償還請求は認められるので、この場合増築部分の有益費償還請求は消滅する、とするのが判例である(最判昭和48年7月17日)。前掲松坂132頁。

オ) 正しい。665条、650条1項。

よって正解は3)になろう。

■賃貸借(2009−33)【判例問題】

次の文章は、最高裁判所の判決文の一節であるが、文中の空欄(ア)−(ウ)に入る語句の組合せとして、正しいものはどれか。

「賃貸人の承諾のある転貸借においては、転借人が目的物の使用収益につき賃貸人に対抗し得る権原(転借権)を有することが重要であり、転貸人が、自らの債務不履行により賃貸借契約を解除され、転借人が転借権を賃貸人に対抗し得ない事態を招くことは、転借人に対して目的物を使用収益させる債務の履行を怠るものにほかならない。そして、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合において、賃貸人が転借人に対して直接目的物の返還を請求したときは、転借人は賃貸人に対し、目的物の返還義務を負うとともに、遅くとも右返還請求を受けた時点から返還義務を履行するまでの間の目的物の使用収益について、不法行為による損害賠償義務又は不当利得返還義務を免れないこととなる。他方、賃貸人が転借人に直接目的物の返還を請求するに至った以上、転貸人が賃貸人との間で再び賃貸借契約を締結するなどして、転借人が賃貸人に転借権を対抗し得る状態を回復することは、もはや期待し得ないものというほかなく、(ア)の(イ)に対する債務は、社会通念及び取引通念に照らして(ウ)というべきである。したがって、賃貸借契約が転貸人の債務不履行を理由とする解除により終了した場合、賃貸人の承諾のある転貸借は、原則として、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求した時に、(ア)の(イ)に対する債務の(ウ)により終了すると解するのが相当である。」
(最三小判平成9年2月25日民集51巻2号398頁以下)

ア、イ、ウ
1) 転貸人、転借人、不完全履行
2) 転貸人、賃貸人、履行不能
3) 賃貸人、転貸人、履行遅滞
4) 賃貸人、転借人、履行遅滞
5) 転貸人、転借人、履行不能

■解説

【難易度】易。本判例を知らなくとも、空欄の前後の文章を判断すれば、どのような言葉で埋めるかは想像付きやすい。

賃貸人、賃借人、転借人間の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された場合、賃借人と転借人との間の転貸借は、原則賃貸人が転借人に目的物の返還を請求した時に、賃借人の転借人に対する債務不能により終了する、というのが本判決の要旨である(内田貴『民法U』初版〔1997年、東大出版会〕213頁)

ア) 転貸人、イ) 転借人、ウ) 履行不能がそれぞれ入り、正解は5)になろう。

■不法行為(2009−34)【判例、条文知識問題】

不法行為の成立に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 鍵が掛けられていた、他人の自転車を盗んだ者が、その自転車を運転している最中に不注意な運転により第三者に怪我を負わせてしまった場合、自転車の所有者は、第三者に対して不法行為責任を負う。

2) 責任能力を有する未成年者が不法行為をなした場合、親権者の未成年者に対して及ぼしうる影響力が限定的で、かつ親権者において未成年者が不法行為をなすことを予測し得る事情がないときには、親権者は、被害者に対して不法行為責任を負わない。

3) 飲食店の店員が出前に自動車で行く途中で他の自動車の運転手と口論となり、ついには同人に暴力行為を働いてしまった場合には、事業の執行につき加えた損害に該当せず、店員の使用者は、使用者責任を負わない。

4) 請負人がその仕事について第三者に損害を与えてしまった場合、注文者と請負人の間には使用関係が認められるので、注文者は、原則として第三者に対して使用者責任を負う。

5) 借家の塀が倒れて通行人が怪我をした場合、塀の占有者である借家人は通行人に対して無過失責任を負うが、塀を直接占有していない所有者が責任を負うことはない。

■解説

【難易度】やや難。1)、4)、5)については正誤判断が容易であったと思うが、残り2つの正誤判断で悩む方が多かったように思う。

1) 誤り。民法上、不法行為当事者以外の第三者が、その不法行為に付き責任を負う場合は例外的にあるが(715条等)、本肢の場合に適用できる例外的条文はないし、所有者に709条の過失責任を認めるべき事情も肢からは読み取れないので、所有者は第三者に不法行為責任を負わないと解するべきであろう。

2) 正しい。親の監督義務違反と、責任能力を有する未成年者の不法行為により生じた結果との間に相当因果関係が認められれば、親の損害賠償義務を認めるのが判例(最判昭和49年3月22日)であるが、青年直前の未成年者による傷害事件につき、本肢の様に述べ親の損害賠償義務を否定した判例(最判平成18年2月24日)もある。

3) 誤り。この場合使用者責任を認めるのが判例(最判昭和46年6月22日)である。

4) 誤り。716条本文は、「注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない」と規定する。請負人は、注文者に対し自主性、独立性を有し、注文者との間で使用関係に立たないからである。前掲内田443頁。

5) 誤り。土地工作物の責任であるが、土地工作物の占有者は無過失責任を負うのではなく、「損害の発生を防止するのに必要な注意をした」事を証明すれば責任を免れることができる(中間責任)。一方所有者は、占有者が責任を免れた場合無過失責任を負う(717条1項)。

■相続欠落、廃除(2009−35)【条文知識、理論問題】

相続欠格と相続人の廃除に関する次のア)−オ)の記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

ア) 相続欠格においては、その対象者となりうるのは全ての推定相続人であるが、相続人の廃除においては、その対象者となるのは遺留分を有する推定相続人に限られる。

イ) 相続欠格においては、その効果は一定の欠格事由があれば法律上当然に生ずるが、相続人の廃除においては、その効果は被相続人からの廃除請求による家庭裁判所の審判の確定によって生ずる。

ウ) 相続欠格においては、被相続人および同順位相続人は欠格の宥恕をすることができるが、相続人の廃除においては、被相続人は審判確定後は家庭裁判所にその取消しを請求することはできない。

エ) 相続欠格においては、被相続人の子が欠格者となった場合には、欠格者の子は代襲相続人となることができないが、相続人の廃除においては、被相続人の子について廃除が確定した場合でも、被廃除者の子は代襲相続人となることができる。

オ) 相続欠格においては、その効果としてすべての相続にかかわる相続能力が否定されるが、相続人の廃除においては、その効果として廃除を請求した被相続人に対する相続権のみが否定される。

1) ア)、イ)

2) ア)、ウ)

3) イ)、エ)

4) ウ)、オ)

5) エ)、オ)

■解説

【難易度】やや難。

ア) 正しい。891、892条。

イ) 正しい。古い文献で申し訳ないが、松坂佐一『民法提要』第3版(1981年、有斐閣)201、203頁。

ウ) 誤り。相続人の廃除につき取消請求をすることは可能である(894条1項)。前掲松坂204頁。なお、条文にはない欠格の宥恕については争いが有るが、これを認める説も有る(前掲松坂201頁)。

エ) 誤り。欠格者の子も代襲相続人になり得る(887条2項)。

オ) 誤り。欠格、排除の効果は相対的なものであり、欠格者が他の者の相続人になる事も可能であり、また被排除者は、排除者以外の者に対する相続権を失うものではない。前掲松坂201、203頁。

よって正解は1)になろう。