■2009年行政書士試験・憲法

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■憲法概念(2009−3)【理論問題】

次の文章のうち、そこで想定される「実質的意味の憲法」の理解の仕方が、憲法学における伝統的な分類に従えば、他とは異なっているものはどれか。

1) 権利の保障が確保されず、権力の分立がなされていない社会は、憲法をもっているとはいえない。

2) 固有の意味での憲法を論ずるには、古代憲法、中世憲法、近代憲法、現代憲法の順で、社会の基本構造を歴史的に叙述する必要がある。

3) 日本の憲法の歴史は、大日本帝国憲法の制定につながる、西洋諸国に対する「開国」を出発点として、叙述されなくてはならない。

4) 近代立憲主義が定着したフランス第三共和制においては、その体制の基本を定める法律を「憲法的」と形容して、憲法的法律と呼んでいた。

5) 絶対君主制とは区別された意味での立憲君主制が、19世紀ヨーロッパの憲法体制では広く普及し、明治時代の日本もこれにならった。

■解説

【難易度】難。09年試験憲法の中で最も難易度の高い1問と言えよう。

伝統的憲法学では、憲法の概念につき、@ 「形式的意味の憲法」(「憲法典」という場合の憲法)と、A 「実質的意味の憲法」と2つに分け、後者に付き、A−1 「固有の意味の憲法」(国の統治に関する基本ルール)とA−2 「立憲的意味の憲法」(専断的な権力を制限、権利を保障する法)があるとしてきた(芦部信喜『憲法学T』〔1992年、有斐閣〕2頁以下)。

なお、この「伝統的2分説」は、芦部が主張している説ではなく、19世紀ドイツ国法学や美濃部達吉が主張していた学説である。芦部はむしろこの2分説に批判的である点、注意されたい。

1) 立憲的意味の憲法を指す。立憲的意味の憲法の例として良く引用されるフランス人権宣言16条である。前掲芦部9頁。

2) 立憲的意味の憲法でない。これが正解である。これは固有の意味の憲法についての説明である。なお肢にある「時代」的、歴史的アプローチは、立憲的意味の憲法との関係で論述されるものである。固有の意味の憲法では、「どの国どの時代にも」存在する統治機構に焦点が当てられる。肢の内容に矛盾が出ていると言えようか。なお芦部19頁参照。

3) 立憲的意味の憲法を指す。開国後不平等条約の是正のためには、外見的ながらも立憲的な憲法である明治憲法の制定が必要になったわけである。宮沢俊義『憲法U』(1973年、有斐閣)177頁。なおこの肢は、憲法の概念というより憲法史の説明であって、正誤判断が難しいと思われる。

4) 立憲的意味の憲法を指す。第3フランス共和制憲法は、成文の憲法典を持たず3つの憲法的法律から成り立っていたが、そこでの憲法原理は、フランス革命期のものを引きついでいると解されていたと解されており、立憲主義の原理は実質的に存在していたと言える。前掲宮沢21頁。

5) 正しい。明治憲法の2大主義は君主主権主義と立憲主義であった(美濃部)。芦部信喜『憲法学T』(1992年、有斐閣)200頁参照。

■経済的自由権(2009−4)【判例知識問題】

次の手紙の文中に示された疑問をうけて、これまで類似の規制について最高裁判所が示した判断を説明するア)−オ)の記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

前略大変ご無沙汰しております。

お取り込み中申し訳ありませんが、私の進路選択について、折り入って貴兄にご相談したいことができました。演劇三味だった学生生活を切り上げて、行政書士をめざして勉強を始めたのですが、最近、自らの職業選択が抱える不条理に、少々悩んでおります。

行政書士になりたい私が、試験に合格しなければ行政書士になれない、というのは、職業選択の自由という、私のかけがえのない人権の侵害にはあたらないのでしょうか。他方で、もし行政書士になれたとしても、行政書士法1条の2で行政書士の独占業務とされている書類の作成に関する限り、他者の営業の自由を廃除しているわけですから、私は、かけがえのない人権であるはずの、他人の職業選択の自由を侵害して生きることになるのでしょうか……。

拝復 お悩みのご様子ですね。行政書士業を一定の資格要件を具備する者に限定する以上、それ以外の者の開業は禁止されるのですから、あなたのご疑問にはあたっているところもあります。問題はそうした制限を正当化できるかどうかで、この点は意見が分かれます。ご参考までに、最高裁判所がこれまでに示した判断についてだけ申しますと、

ア) 医薬品の供給を資格制にすることについては、重要な公共の福祉のために必要かつ合理的な措置ではないとして、違憲判決が出ていますよ。

イ) 小売市場の開設経営を都道府県知事の許可にかからしめる法律については、中小企業保護を理由として、合憲判決が出ていましたよね。

ウ) 司法書士の業務独占については、登記制度が社全生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどを指摘して、合憲判決が出ています。

エ) 公衆浴場を開業する場合の適正配置規制については、健全で安定した浴場経営による国民の保健福祉の維持を理由として、合憲とされていますね。

オ) 酒販免許制については、職業活動の内容や態様を規制する点で、許可制よりも厳しい規制であるため、適用違憲の判決が下された例があります。

1) ア)・イ)・ウ)
2) ア)・イ)・エ)
3) イ)・ウ)・エ)
4) イ)・ウ)・オ)
5) ウ)・エ)・オ)

■解説

【難易度】普通。ア)がややひっかけ的要素を持っているので、注意。

ア) 誤り。薬局距離制限事件(最大判昭和50年4月30日)である。最高裁は確かに薬局の「適正配置規制」について違憲判決を出しているが、医薬品の供給を「資格制」にすることについては、合理的措置として是認している。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)219頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)306頁

イ) 正しい。小売市場距離制限事件(最大判昭和47年11月20日)である。前掲芦部219頁、佐藤302頁。

ウ) 正しい。司法書士法19条1項の合憲性が問われた事案だが、最高裁は同条項を合憲としている(司法書士法違反事件〔最判平成10年3月24日〕)。前掲芦部222頁。

エ) 正しい。最大判昭和30年1月26日である。但し公衆浴場の距離制限が消極目的なのか、積極目的なのかということについては、以後の判例で変化が見られるという点に注意。前掲芦部220−221頁、佐藤305−306頁。

オ) 誤り。酒類販売免許制事件(最判平成4年12月15日)は、当該免許制を存置した立法府の判断につき、裁量の範囲を逸脱し著しく不合理であるとはいえない、としている。前掲芦部221頁、佐藤307−308頁。

よって正解は3)になろう。

■内心の自由(2009−5)【判例知識、理論問題】

精神的自由権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし、正しいものはどれか。

1) 憲法19条の「思想及び良心の自由」は、「信教の自由」(20条1項)の保障対象を宗教以外の世俗的な世界観・人生観等にまで拡大したものであるため、信教の自由の場合と同様に、固有の組織と教義体系を持つ思想・世界観のみが保護される。

2) 憲法19条の「思想及び良心の自由」は、国民がいかなる思想を抱いているかについて国家権力が開示を強制することを禁止するものであるため、謝罪広告の強制は、それが事態の真相を告白し陳謝の意を表するに止まる程度であっても許されない。

3) 憲法20条1項の「信教の自由」は、公認された宗教に属さない宗教的少数派であった人たちにも、多数派と同等の法的保護を与えるために導入されたものであるため、すべての宗教に平等に適用される法律は違憲となることはない。

4) 憲法20条3項は、国が宗教教育のように自ら特定宗教を宣伝する活動を行うことを禁止する趣旨であるため、宗教団体の行う宗教上の祭祀に際して国が公金を支出することが同項に違反することはない。

5) 憲法20条3項は、国と宗教とのかかわり合いが、その目的と効果に照らして相当な限度を超えた場合にこれを禁止する趣旨であるため、国公立学校で真摯な宗教的理由から体育実技を履修できない学生に対して代替措置を認めることを一切禁じるものではない。

■解説

【難易度】易。思想、良心の自由、信教の自由についての総合的問題である。

1) 誤り。思想、良心の自由の保障対象は、ここでいう思想、世界観のみに限定されるのではなく、主義、主張等の個人の人格的な内面的精神作用を広く含む。前掲芦部147頁、佐藤217頁。

2) 誤り。謝罪広告強制事件(最大判昭和31年7月4日)。は、謝罪広告の強制が、「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表するに止まる程度」であれば、代替執行による強制も許されるとしている。前掲芦部148−149頁、佐藤217−218頁。

3) 誤り。適用面だけで20条違反の有無は決まらない。すべての宗教に平等に適用される法律であっても、法律の内容が信仰の自由の侵害になるなら当該規制は絶対に許されるものではない。参照、前掲芦部151頁。

4) 誤り。当該公金支出が目的効果基準の要件を具備できなければ、違憲になる場合も有り得る。前掲芦部156頁以下参照、佐藤232頁以下参照。

5) 正しい。剣道実技拒否事件(最判平成3年8月3日)である。前掲芦部154−155頁。

■大学の自治(2009−6)【判例知識問題】

次の文章は、ある最高裁判所判決の一節である。この文章の趣旨と適合しないものはどれか。

〔憲法23〕条の学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由とを含むものであって、同条が学問の自由はこれを保障すると規定したのは、一面において、広くすべての国民に対してそれらの自由を保障するとともに、他面において、大学が学術の中心として深く真理を探究することを本質とすることにかんがみて、特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨としたものである。教育ないし教授の自由は、学問の自由と密接な関係を有するけれども、必ずしもこれに含まれるものではない。しかし、大学については、憲法の右の趣旨と、これに沿って学校教育法52条(当時。現在の同法83条。)が「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究」することを目的とするとしていることとに基づいて、大学において教授その他の研究者がその専門の研究の結果を教授する自由は、これを保障されると解するのを相当とする。すなわち、教授その他の研究者は、その研究の結果を大学の講義または演習において教授する自由を保障されるのである。そして、以上の自由は、すべて公共の福祉による制限を免れるものではないが、大学における自由は、右のような大学の本質に基づいて、一般の場合よりもある程度で広く認められると解される。
(最大判昭和38年5月22日刑集17巻4号370頁以下)

1) 大学における学生の集会は、大学の公認した学内団体であるとか、大学の許可した学内集会であるとかいうことのみによって、特別な自由と自治を享有するものではない。

2) 大学の自治は、とくに大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の自主的判断に基づいて教授その他の研究者が選任される。

3) 遺伝子技術や医療技術など最新の科学技術に関わる研究の法的規制は、それが大学で行われる研究に関わるものであっても、一定の要件の下で許されうる。

4) 学問の自由は、広くすべての国民に対して保障されるものであるため、研究費の配分に当たって大学の研究者を優遇することは許されない。

5) 大学の自治は、その施設と学生の管理についてもある程度で保障され、大学に自主的な秩序維持の権能が認められている。

■解説

【難易度】易。大学の自治と警備公安活動の関係等が問題となった東大ポポロ事件が素材となっている。

1) 合致している。東大ポポロ事件はこれを前提にして、当該集会が「実社会の政治的社会的活動」に該当するため、大学の自治を享有しないという結論を導いている。前掲芦部169頁、佐藤247頁。

2) 合致している。東大ポポロ事件も、大学の自治の内容として重要とされている「人事の自治」「施設・学生管理の自治」を認めてはいる。前掲芦部167−168頁、佐藤245頁。

3) 合致している。東大ポポロ事件判旨は、学問の自由の内容について学説同様、「学問研究の自由」「研究発表の自由」「教授の自由」をあげているが(参照前掲芦部166頁、佐藤242頁)、これら「自由は、すべて公共の福祉による制限を免れるものではない」。なお本肢の様な研究については、必要最小限度の制約も認められるという見解が近時有力になっている。前掲芦部166頁、佐藤243−244頁。

4) 合致していない。東大ポポロ事件とは無関係の記述である。

5) 合致している。肢2の解説参照。

■両院協議会(2009−7)【条文知識問題】

衆議院と参議院の議決に一致がみられない状況において、クローズアップされてくるのが両院協議会の存在である。日本国憲法の定めによると、両院協議会を必ずしも開かなくてもよいとされている場合は、次のうちどれか。

1) 衆議院が先議した予算について参議院が異なった議決を行った場合。

2) 内閣総理大臣の指名について衆参両院が異なった議決を行った場合。

3) 衆議院で可決された法律案を参議院が否決した場合。

4) 衆議院が承認した条約を参議院が承認しない場合。

5) 参議院が承認した条約を衆議院が承認しない場合。

■解説

【難易度】易。どういう場合憲法上両院協議会を開催しなければいけないのか、開いてもかまわないのかの区別が問題となる。

1) 必要的両院協議会の場合である。憲法60条2項。予算先議については同条1項。

2) 必要的両院協議会の場合である。67条2項。

3) 任意的両院協議会の場合である。よってこれが正解である。59条3項は、「衆議院が、両議院の協議会を開くことを求めることを妨げない」、と規定している。

4) 必要的両院協議会の場合である。61条、60条2項。

5) 必要的両院協議会の場合である。61条、60条2項。