■2009年行政書士試験・行政救済法

行政書士合格講座行政書士試験の過去問分析>2009年行政書士試験・行政救済法

このサイトについて・プライバシーポリシー 憲法学の窓・公務員試験対策室 Site Map

■行政審判(2009−13)【理論問題】

次の手続のうち、私人間紛争の裁定的性格を有する行政審判に該当するものの組合せはどれか。

ア) 海技士等に対する懲戒処分を行うための海難審判所における審判・裁決の手続。

イ) 不当労働行為に係る救済命令のための労働委員会における審問・命令の手続。

ウ) 免許取消しのために実施される電波監理審議会における意見聴取手続。

エ) 特許無効審判が請求された場合に行われる特許庁における審判断・審決の手続。

オ) 暴力主義的破壊活動を行う団体に対する規制処分のための公安審査委員会における審査手続。

1) ア)、イ)
2) イ)、ウ)
3) イ)、エ)
4) ウ)、エ)
5) エ)、オ)

■解説

【難易度】難しい。この手の問題は、本番では、後回しにして他の問題を先に済ませてから解いてもよかったであろうか。

行政審判の種類として3つの類型がある(塩野宏『行政法U』第6版〔2019年、有斐閣〕44頁以下)。
@実質的な紛争解決のために取られる行政審判(行政決定に対する不服の審査)。
A実質的な紛争解決のために取られる行政審判(紛争それ自体は私人間のもの)。
B具体的な紛争がない場合において、行政機関の第1次的決定の発動に対してとられる行政審判。

本問では、Aに該当するものを見つけることになる。

ア) 該当しない。この懲戒処分は第1次的決定であるので、当該審判は類型Bに該当する。海難審判法1、3条、30条以下参照、

イ) 該当する。これが類型Aに該当するというのは分かりやすいであろう。労働組合法27条以下参照。本問はイ)の判断が容易なので、この段階であとは事例ウ)エ)の正誤判断をすればよいことになる。つまりオ)の事例は本番では無視しても良いことになる。

ウ) 該当しない。電波法に基づく総務大臣の「処分」についての異議申立があった場合、異議を電波監視審議会に付議しなければならないが(電波法85、83条)、これは上の類型で@に該当する。

エ) 該当する。特許法123条に規定する事由あたる特許を無効にするということは、この特許を有する私人と、無効を主張する私人との争いになるので、ここでの審判は類型Aに該当する。特許法123条以下参照。

オ) 該当しない。当該審査手続は、破壊活動防止法5、7条規定の(第1次的)処分のためのものであり、これは類型Bに該当する。破壊活動防止法第3章参照。

よって正解は、イ)、エ)の3)になろうか。

■行政不服審査法(2009−14)【理論、条文知識問題】

処分についての審査請求に対する裁決に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 裁決には理由を附すこととされているが、これが附されていなくとも、裁決が違法となることはない。

2) 裁決においては、違法を理由として処分を取消すことはできるが、不当を理由として取消すことはできない。

3) 裁決は、書面ですることが原則であるが、緊急を要する場合は、口頭ですることも許される。

4) 裁決に対して不服がある場合でも、これに対して行政事件訴訟法による取消訴訟を提起することはできない。

5) 裁決においては、処分を変更することが許される場合でも、これを審査請求人の不利益に変更することはできない。

■解説

【難易度】

1) 誤り。理由付記を要件とする場合の、理由を欠く行政行為(裁決も行政行為である)は無効となる。石川敏行『はじめて学ぶプロゼミ行政法』改訂版(2000年、実務教育出版社)184頁。よってこの場合、裁決は瑕疵を帯びており違法となる。

2) 誤り。不服審査は、行政訴訟と異なり違法行為のほか不当行為をも審査の対象にできる以上、このようなことはない。行政不服審査法1条参照。46条1項の「理由」には、処分の不当も含まれる。宇賀克也『行政不服審査法の逐条解説』(2015年、有斐閣)197頁。

3) 誤り。このような例外はない。50条参照。

4) 誤り。裁決の取消の訴えが規定されている(行政事件訴訟法3条3項)。

5) 正しい。行政不服審査法48条。

■行政不服審査法(2009−15)【理論、条文知識問題】

次の記述のうち、行政不服審査法に関する問題点として、次の解説文中の空欄(A)に挿入すべきでないものはどれか(法改正に伴い記述を改めた)。

1962(昭和37)年制定の行政不服審査法は、それ以前の訴願法と比べれば、権利救済制度として大きく改善されたが、「(A)という問題点も指摘されていた」。また、1993(平成5)年の行政手続法の制定や2004(平成16)年の行政事件訴訟法改正などとの関係で、見直しが必要だと考えられるようになった。このため、行政不服審査法の抜本的な改正が検討され、2014年(平成26)年新行政不服審査法が参議院で可決、成立した。

1) 行政不服審査法によらない不服申立ての仕組みが多数あるため、一般国民にとってわかりづらく、利用しづらい制度になっている。

2) 取消訴訟を提起するためには不服申立てに対する裁決または決定を経ることが原則とされているため、権利救済の途が狭められている。

3) 審理にかなり時間を要しているのが実態であるため、簡易迅速という特色が生かされていない。

4) 行政権の自己審査であるため、審理手続の運用において公平さに欠けるところが多い。

5) 不服申立て期間が短いため、権利救済の機会が狭められている。

■解説

【難易度】なお旧法改正の経緯については、前掲宇賀1−4頁参照。

1) 挿入できる。前掲塩野11−12頁参照。行政不服審査法1条2項参照。

2) 挿入できない。よってこれが正解である。行政事件訴訟法は、自由選択主義を「原則」とし(8条1項本文)、本肢の様な不服申立前置主義を例外とする(8条1項但書)からである。なお改正行政不服審査法と同時に成立した「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」は、不服申立前置制度の整理見直しを行っている。前掲宇賀324−325頁。

3) 挿入できる。このため新法では、標準審理期間制度(16条)や計画的審理制度(37条)が導入された。前掲宇賀83頁以下、147頁以下。

4) 挿入できる。このため新法では、審査員制度(9条)や行政不服審査会等への諮問制度(43条)が導入された。前掲宇賀55頁以下、173頁以下。

5) 挿入できる。このため新法では、不服申立期間が60日(旧14条1項)から「処分があったことを知った日の翌日から起算して3月」(18条1項。審査請求)に延長された。前掲宇賀90頁。

■行政事件訴訟法(2009−16)【条文知識問題】

行政事件訴訟法に関する次のア)−オ)の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア) 国の行政庁がした処分に関する取消訴訟の被告は、国である。

イ) 国の行政庁が行うべき処分に関する不作為の違法確認訴訟の被告は、当該行政庁である。

ウ) 国の行政庁が行うべき処分に関する義務付け訴訟の被告は、当該行政庁である。

エ) 国の行政庁が行おうとしている処分に関する差止め訴訟の被告は、当該行政庁である。

オ) 国又は地方公共団体に所属しない行政庁がした処分に関する取消訴訟の被告は、当該行政庁である。

1) 1つ
2) 2つ
3) 3つ
4) 4つ
5) 5つ

■解説

【難易度】易しい。条文知識問題、しかも38条を知っていれば殆ど解けたに等しい問題である。

ア) 正しい。取消訴訟の被告は、行政処分をした行政庁が属する国又は公共団体である(行政事件訴訟法11条1項)。

イ) 誤り。11条は、不作為の違法確認訴訟にも準用されている(38条1項)ので、被告は当該行政庁が属する国になる。

ウ) 誤り。11条は、義務付け訴訟にも準用されている(38条1項)ので、被告は当該行政庁が属する国になる。

エ) 誤り。11条は、差止訴訟にも準用されている(38条1項)ので、被告は当該行政庁が属する国になる。

オ) 正しい。11条2項。よって正解は2)の2つになろう。

■行政事件訴訟法(2009−17)【条文知識問題】

行政事件訴訟法に定められた仮の救済制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、行政事件訴訟法の定める執行停止、仮の義務付けおよび仮の差止めのほか、民事保全法に規定する仮処分を行うことができる。

2) 仮の義務付けおよび仮の差止めは、それぞれ義務付け訴訟ないし差止め訴訟を提起しなければ申し立てることができないが、執行停止については、取消訴訟または無効等確認訴訟を提起しなくても、単独でこれを申し立てることができる。

3) 申請に対する拒否処分に対して執行停止を申し立て、それが認められた場合、当該申請が認められたのと同じ状態をもたらすことになるので、その限りにおいて当該処分について仮の義務付けが認められたのと変わりがない。

4) 執行停止は、本案について理由がないとみえるときはすることができないのに対して、仮の義務付けおよび仮の差止めは、本案について理由があるとみえるときでなければすることができない。

5) 処分の執行停止は、当該処分の相手方のほか、一定の第三者も申し立てることができるが、処分の仮の義務付けおよび仮の差止めは、当該処分の相手方に限り申し立てることができる。

■解説

【難易度】普通。条文知識問題であるが、改正項目の理解はちょっととっつきにくいということもあるので、難易度を普通にしている。今後も改正項目は要注意である。

1) 誤り。民事保全法上の仮処分は認められていない(44条)。

2) 誤り。仮の義務付け、仮の差止についての説明は正しいが(37条の5第1、2項)、執行停止についても取消訴訟、無効等確認訴訟の提起が必要である(25条1項、38条3項)。

3) 誤り。例えば営業免許取消処分に執行停止が認められた場合、営業をすることについて原状回復機能が働くが、申請の拒否処分についての執行停止はこのようなことがなく、せいぜい「申請があった状態に戻る」にすぎない(前掲塩野190頁)。よってこのような場合の救済は、仮の義務付けを実際に申立なければならない。

4) 正しい。執行停止につき25条4項、仮の義務付け、仮の差止につき法37条の5第1項、2項。

5) 誤り。仮の義務付けや仮の差止は、義務付けの訴えや差止の訴えがあった場合に行われるが、本訴の原告適格は処分の相手方にとどまらない(37条の2第3項、37条の4第3項)ので、仮の救済の申立も処分の相手方に限られないことになろう。

■行政事件訴訟法(2009−18)【条文知識問題】

行政事作訴訟法の定める当事者訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) 当事者間の法律関係を確認しまたは形成する処分に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものは、当事者訴訟である。

2) 地方自治法の定める住民訴訟のうち、当該執行機関または職員に対する怠る事実の違法確認請求は、当事者訴訟である。

3) 国または公共団体の機関相互間における権限の存否に関する紛争についての訴訟は、公法上の法律関係に関するものであるから、当事者訴訟である。

4) 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき、行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟は、当事者訴訟である。

5) 公職選挙法に定める選挙無効訴訟は、国民の選挙権に関する訴訟であるから、当事者訴訟である。

■解説

【難易度】易しい。単純条文知識問題である。

1) 正しい。形式的当事者訴訟である(4条前段)。前掲塩野268頁。

2) 誤り。住民訴訟(地方自治法242条の2)は、民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)である。前掲塩野281頁。

3) 誤り。機関訴訟(6条)である。

4) 誤り。義務付けの訴えである(3条6項)。

5) 誤り。選挙無効訴訟(公職選挙法202条以下)は、民衆訴訟である。前掲塩野281頁。

■国家賠償法(2009−19)【理論、条文知識問題】

国家賠償法2条にいう公の営造物に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 公の営造物とは、国や公共団体が所有するすべての物的施設をいうわけではなく、公の用に供しているものに限られる。

2) 公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうが、賠償責任が成立するのは、当該安全性の欠如について過失があった場合に限られる。

3) 河川・海浜等の自然公物は公の営造物に当たらないが、これに付随する堤防や防波堤は人工公物であり公の営造物に当たるので、賠償責任が成立するのは、堤防等に起因する損害の場合に限られる。

4) 公の営造物の管理者と費用負担者とが異なる場合、被害者に対して損害賠償責任を負うのは、費用負担者に限られる。

5) 公の営造物の設置または管理に起因する損害について賠償を請求することができるのは、その利用者に限られる。

■解説

【難易度】易しい。

1) 正しい。「国、公共団体が管理していても、公の用に供されていない物は国家賠償法2条の営造物ではない」(前掲塩野357頁)。

2) 誤り。前半は正しいが(最判昭和59年1月26日)、国家賠償法2条の責任は無過失責任である(最判昭和45年8月20日)。前掲塩野359頁。なおこの無過失責任は、結果責任とは異なるので注意。前掲塩野363頁。

3) 誤り。河川や、湖沼、海浜といった自然公物は、2条にいう営造物に該当すると解される(前掲塩野358頁参照)。

4) 誤り。この場合、管理者、費用負担者両者共に損害賠償責任を負う(3条1項)。

5) 誤り。利用者との関係で営造物に瑕疵がなくても、第三者との関係で営造物が被害を発生させる場合がある(機能的瑕疵供用関連瑕疵)。空港騒音などがその例だが、最高裁は、2条を根拠とした第三者による損害賠償請求を肯定している(最大判昭和56年12月16日)。前掲塩野364−365頁。

■国家賠償法(2009−20)【判例知識問題】

権限の不行使と国家賠償責任に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。

1) 宅地建物取引業法に基づき免許を更新された業者が不正行為により個々の取引関係者に対して被害を負わせたとしても、当該免許制度は業者の人格・資質等を一般的に保証するものとはにわかに解しがたく、免許権者が更新を拒否しなかったことは、被害を受けた者との関係において直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

2) 医薬品の副作用による被害が発生した場合であっても、監督権者が当該被害の発生を防止するために監督権限を行使しなかった不作為は、不作為当時の医学的・薬学的知見の下で当該医薬品の有用性が否定されるまでに至っていない場合には、被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

3) 国または公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となる。

4) 鉱山労働者を保護するための省令が後に科学的知見に適合しない不十分な内容となったとしても、制定当時の科学的知見に従った適切なものである場合には、省令を改正しないことが、被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

5) 犯罪被害者が公訴の提起によって受ける利益は、公益上の見地に立って行われる公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず、法律上保護された利益ではないので、検察官の不起訴処分は、犯罪被害者との関係で国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

■解説

【難易度】難しい。権限の不行使と国家賠償法1条責任については過去出題されているが、今回のように大問1つをこのテーマにあててくるというのはおそらく初めてではなかろうか。比較的近時の判例が問題に使われているという点で、本問は難しい部類に入ると思われる。

1) 正しい。最判平成1年11月24日(宅地建物取引法事件)。前掲塩野327頁。

2) 正しい。最判平成7年6月23日(クロロキン訴訟)。前掲塩野327頁。

3) 正しい。これが、最高裁が示してきた権限不行使と国家賠償法1条責任についての「定式」である(前掲塩野327頁参照)。

4) 誤り。よってこれが正解である。主務大臣は、技術の進歩や最新の医学的見地に適合する様に当該省令を制定後改正することを義務付けられており、この義務を怠ったことを理由とした、炭鉱労働者のじん肺被害についての国家賠償請求を認めたのが判例である。(最判平成16年4月27日、じん肺訴訟)。前掲塩野327頁。

5) 正しい。最判平成2年2月20日。前掲塩野330頁。本問題につき前掲塩野326頁以下参照。