■2009年行政書士試験・行政法総論

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■行政計画(2009−8)【理論、条文知識問題】

行政計画に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 土地利用を制限する用途地域などの都市計画の決定についても、侵害留保説によれば法律の根拠が必要である。

2) 広範な計画裁量については裁判所による十分な統制を期待することができないため、計画の策定は、行政手続法に基づく意見公募手続の対象となっている。

3) 計画策定権者に広範な裁量が認められるのが行政計画の特徴であるので、裁判所による計画裁量の統制は、重大な事実誤認の有無の審査に限られる。

4) 都市計画法上の土地利用制限は、当然に受忍すべきとはいえない特別の犠牲であるから、損失補償が一般的に認められている。

5) 多数の利害関係者に不利益をもたらしうる拘束的な計画については、行政事件訴訟法において、それを争うための特別の訴訟類型が法定されている。

■解説

【難易度】普通。余り勉強しないであろう分野からの出題だが、極端に難しい問題とはいえない。分かる肢から切り落とし、何とか絞っていけば正解にはたどり着けるであろう。

1) 正しい。「法律の留保論」における「侵害留保説」によれば、一般に国民の自由と財産を侵害するには法律の根拠が必要となる(塩野宏『行政法T』第5版〔2009年、有斐閣〕74頁)。よって、都市計画法に基づく都市計画の決定としての市街化区域、市街化調整区域の区別(7、29条以下)のような私人の自由を規制する制度については、侵害留保説によれば法律が無ければ認められない。前掲塩野213頁。

2) 誤り。意見公募手続の対象は「命令等」であるから(行政手続法38条以下)、計画の策定については、行政手続法上意見公募手続を必要としない。

3) 誤り。「広範な裁量」についての記述は正しいが(前掲塩野216頁)、それをもって、一般的に行政計画についての司法審査が限定的になるとは言えない。行政計画は様々な種類があるため、解決方法は一律には決まらない。前掲塩野218頁以下参照。なお最大判昭和41年2月23日、最大判平成20年9月10日参照。

4) 誤り。都市計画法上の用途地域指定による土地利用制限は、「用途の混在による都市機能の低下」、「生活環境の悪化」を防ぐためのものであり、結果「当該土地を含む都市全体の利益」を生むので、無補償と解されている。芝池義一『行政法総論講義』第4版(2001年、有斐閣)237頁。

5) 誤り。このような訴訟類型は法定されておらず、、争う場合は一般の抗告訴訟によることなろうが、処分性訴訟の成熟性の観点から救済を受けられない場合も有り得る。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)217頁以下参照。

■行政機関(2009−9)【理論問題】

行政機関に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア) 行政庁とは、行政主体の意思を決定し、これを外部に表示する権限を有する行政機関をいう。

イ) 国家行政組織法には行政庁は独任制でなければならないとの規定があり、わが国には合議制の行政庁は存在しない。

ウ) 上級行政庁は下級行政庁に対して監視権や取消権などの指揮監督権を有するが、訓令権については認められていない。

エ) 行政庁がその権限の一部を他の行政機関に委任した場合であっても、権限の所在自体は、委任した行政庁から受任機関には移らない。

オ) 法定の事実の発生に基づいて、法律上当然に行政機関の間に代理関係の生ずる場合を、授権代理という。

1) 1つ
2) 2つ
3) 3つ
4) 4つ
5) 5つ

■解説

【難易度】易しい。五者択一ではなく個数問題という点で難易度は上がっているかもしれないが、相当易しい部類にはいる問題といってよい。

ア) 正しい。例えば、国は行政主体であり、その意思を決定し外部に表示する権限を有するのは行政機関たる大臣である。石川敏行『はじめて学ぶプロゼミ行政法』改訂版(2000年、実務教育出版社)46頁。

イ) 誤り。合議制の行政機関も存在する。

ウ) 誤り。上級、下級の行政官庁の関係は「指揮監督関係」と捉えられ、この内容の1つとして指揮権がある。そして指揮権に訓令権が含まれると解されている。国家行政組織法14条2項参照。塩野宏『行政法V』第2版(2001年、有斐閣)35頁以下参照。

エ) 誤り。権限の「代理」の場合、権限は被代理庁に残るが、権限の「委任」の場合、権限は受任庁に移る。石川敏行『はじめて学ぶプロゼミ行政法』改訂版(2000年、実務教育出版社)50頁。

オ) 誤り。これは法定代理の説明である。前掲石川49頁。

よって正解は、ア)の1つになろう。

■行政強制(2009−10)【理論問題】

行政強制に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) 法律の委任による条例に基づき行政庁により命ぜられた行為については、行政代執行法は適用されない。

2) 義務の不履行があった場合、直接に義務者の身体や財産に実力を加えることを即時強制という。

3) 執行罰は、制裁的な要素を有するため、同一の義務違反に対して複数回にわたり処することはできない。

4) 強制徴収手続は、租税債務の不履行のみならず、法律の定めがある場合には、その他の金銭債権の徴収についても実施される。

5) 行政上の即時強制については、行政代執行法にその手続等に関する通則的な規定が置かれている。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。行政代執行法2条括弧書参照。

2) 誤り。即時強制は、代執行等と異なり、義務の不履行を前提とせずに、直接に義務者の身体や財産に実力を加えることをいう。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)252頁。

3) 誤り。執行罰は、間接強制の方法であって、義務の履行がなされるまで複数回課すことができる。前掲塩野237頁。

4) 正しい。租税債権以外の金銭債権についての根拠法中に、「国税徴収法の定める滞納処分の例による」旨の規定があれば、当該債権の実現に強制徴収手続を利用することができる。前掲塩野238−239頁。

5) 誤り。行政代執行法は代執行について規定する法律であり、即時強制に関する規定を有しない。即時強制の手続等は、個別法毎に規定されているのが現状である。前掲塩野254頁以下参照。