■2008年行政書士試験・行政救済法

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■行政不服審査法(2008−14)【理論問題】

行政上の不服申立てについての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 行政上の不服申立ての道を開くことは、憲法上の要請ではないので、この制度を廃止しても、憲法違反とはならない。

2) 明治憲法下で行政上の不服申立てを定めていた訴願法は、行政裁判法と同時期に制定され、これと同時に廃止された。

3) 行政不服審査法は、行政事件訴訟法とともに、戦後改革の一環として、現行憲法の制定と同じ時期に制定された。

4) 憲法は、行政機関が裁判を行うことを禁止しているから、裁判手続に類似した行政上の不服申立てを整備することによって地方裁判所における審級を省略することは許されない。

5) 憲法による法定手続の保障の趣旨は、行政上の不服申立ての手続にも及ぶので、その手続においても、口頭弁論主義が原則とされている。

■解説

【難易度】

1) 正しい。行政処分に付き「裁判上」の救済を否定することは、裁判を受ける権利(憲法32条)の否定になるので許されない。一方行政上の救済制度である不服申立制度について憲法は「明確な指針を与えていない」からこれらを廃止しても憲法違反とはならない。塩野宏『行政法U』第6版(2019年、有斐閣)8頁参照。

2) 誤り。訴願法の廃止は1962年、行政裁判法の廃止は1948年である。

3) 誤り。行政不服審査法の制定は1962年である(なお、これを受けて訴願法は廃止された)。前掲塩野9頁。

4) 誤り。準司法手続を備えた行政上の不服申立には、このような審級の省略が認められているものもある(独占禁止法85条。第1審が東京高裁になる)。前掲塩野43頁、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)245頁。

5) 誤り。例えば行政不服審査法上の手続は書面審理が原則である。なお書面審理主義を明文で規定していた旧25条1項本文は法改正により削除されたが、行政不服審査法は書面審理主義に変更を加えていないと解されている。宇賀克也『行政不服審査法の逐条解説』(2015年、有斐閣)136頁。

■行政不服審査法(2008−15)【理論問題】

行政不服審査法(以下、「法」という。)に規定する不服申立ての対象に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) 法において「処分」には、「人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有するもの」などの事実行為が含まれるが、これは取消訴訟の対象にはならないが不服申立ての対象となる行為であると解されている。

2) 法における「不作為」には、申請が法令に定められた形式上の要件に適合しないとの理由で、実質的審査を経ずに拒否処分がなされた場合も含まれる。

3) 法は、地方公共団体の機関が条例に基づいてする処分を適用除外としているため、そのような処分については別途条例で不服申立制度を設けなければならない。

4) 法は、不服申立制度全般について統一的、整合的に規律することを目的とするので、別に個別の法令で特別な不服申立制度を規定することはできない。

5) 不服申立てをすることができない処分については、法が列挙しているほか、他の法律において特定の処分につき不服申立てをすることができない旨を規定することができる。

■解説

【難易度】

1) 誤り。事実行為が、取消訴訟の対象から除かれているというわけではない。前掲塩野22−23頁、114頁以下参照。なお継続的事実行為については、行政不服審査法旧2条1項が明文で処分概念に含まれる旨規定していたが、新法では明文の規定はない。これは、継続的事実行為が処分概念に含まれることについては異論がなく、明記する実益が乏しいとされたからである。前掲宇賀12頁。

2) 誤り。この場合、既に拒否という「処分」が「なされている」わけだから(行政手続法7条参照)、行政不服審査法上の不作為概念である、「法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないこと」(行政不服審査法3条括弧書)という場合には該当しない。

3) 誤り。このような適用除外はない。7条参照。

4) 誤り。行政不服審査法は、行政上の不服申立に関する一般法であると同時に、別の法令による不服申立制度の創設を認めている(1条2項)。前掲塩野17頁以下参照。

5) 正しい。例えば行政手続法27条1項がその例である。前掲塩野11−12頁参照、櫻井他235頁。なお同条2項は行政不服審査法の改正に伴い削除された。前掲宇賀317頁。

■不作為の違法確認訴訟(2008−16)【条文知識問題】

不作為の違法確認訴訟に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) 不作為の違法確認訴訟は、処分の相手方以外の者でも、不作為の違法の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者であれば、提起することができる。

2) 不作為の違法確認訴訟を提起するときは、対象となる処分の義務付け訴訟も併合して提起しなければならない。

3) 不作為の違法確認訴訟は、行政庁において一定の処分を行わないことが行政庁の義務に違反することの確認を求める公法上の当事者訴訟である。

4) 平成16年の行政事件訴訟法の改正によって義務付け訴訟が法定されたのと同時に、不作為の違法確認訴訟の対象も、申請を前提としない規制権限の不行使にまで拡大された。

5) 不作為の違法確認訴訟自体には出訴期間の定めはないが、その訴訟係属中に、行政庁が何らかの処分を行った場合、当該訴訟は訴えの利益がなくなり却下される。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。「不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる」(行政事件訴訟法37条)。

2) 誤り。説明が逆である。処分の義務付け訴訟を提起するときは、不作為の違法確認訴訟も併合して提起しなければならない、のである(37条の3第3項1号)。前掲塩野213頁、櫻井他337頁。

3) 誤り。不作為の違法確認訴訟は、抗告訴訟の1つである(3条5項)。

4) 誤り。1)にあるように、不作為の違法確認訴訟は申請が前提となる。また、規制権限の不行使は差止訴訟によることになる。なお平成16年の改正では、肢2以外で言及された点を除き、不作為の違法確認訴訟に関する規定は、従前のままにおかれている。前掲塩野213頁。

5) 正しい。前掲塩野242頁。

■訴えの利益(2008−17)【判例知識問題】

訴えの利益に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 建築確認処分の取消しを求める利益は、建築物の建築工事の完了によっては失われない。

2) 保安林指定解除処分の取消しを求める利益は、洪水の危険を解消するために代替施設が設置されたとしても失われない。

3) 生活保護法に基づく保護変更決定の取消しを求める利益は、原告の死亡によって失われず、原告の相続人が当該訴訟を承継できる。

4) 再入国の許可申請に対する不許可処分について取消訴訟を提起した外国人は、本邦を出国した場合、当該処分の取消しを求める利益を失う。

5) 公文書の非公開決定の取消訴訟において当該公文書が書証として提出された場合、当該公文書の非公開決定の取消しを求める利益は失われる。

■解説

【難易度】やや難。おそらく4)、5)の正誤判断で悩まされた問題であったと思う。

1) 誤り。建築確認は、建築という私人の行為を適法ならしめるものだから、工事が完成すれば建築確認処分の効果も完了し、当該処分に付き訴えの利益も消滅する(最判昭和59年10月26日)。前掲塩野150頁、櫻井他292頁。

2) 誤り。長沼事件である。判例は、代替施設の設置により訴えの利益は消滅した、としている(昭和57年9月9日)。前掲塩野154頁、櫻井他291頁。

3) 誤り。朝日訴訟である。判例は、原告死亡による訴訟承継を認めず、訴えの利益はなくなったとしている(最大判昭和42年5月24日)。前掲塩野154頁。

4) 正しい。最判平成10年4月10日である。前掲櫻井他292頁。

5) 誤り。最判平成14年2月28日である。書証として公文書が提出されても、公開請求権者は、請求した公文書の閲覧、写しの交付を求める法律上の利益を有する、としている。前掲櫻井他292頁。

■事情判決(2008−18)【条文知識問題】

行政事件訴訟法31条1項に規定する事情判決についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 事情判決は、処分の違法を認める判決であるから、請求認容の判決である。

2) 事情判決においては、処分が違法であることが、判決の理由の中だけではなく、その主文においても宣言される。

3) 事情判決においては、処分の違法を宣言するとともに、それを理由として、被告に損害賠償を命ずることができる。

4) 事情判決は、行政事作訴訟に特有な制度であり、行政不服審査法には、類似の事情裁決といった制度はない。

5) 事情判決の規定は、公職選挙法上、同法による選挙の効力に関する訴訟にも準用されている。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。処分又は裁決が違法ではあるが、公益の観点から請求を「棄却」するのが事情判決である(31条1項)。

2) 正しい。31条1項。。

3) 誤り。このような制度はない。事情判決の元となる処分の違法性を理由に賠償を請求する場合、国家賠償請求を別に提起するか併合しておかねばならない(16条参照)。前掲塩野162頁以下、206−207頁、櫻井他302頁以下参照。

4) 誤り。事情裁決(行政不服審査法45条3項)が設けられている。

5) 誤り。公職選挙法219条は、行政事件訴訟法31条の準用を認めていない。しかし最高裁は、議員定数不均衡訴訟(最大判昭和51年4月14日)において、行政事件訴訟法31条の事情判決の法理を「一般的な法の基本原則に基づくもの」と解して適用している。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)141頁、前掲塩野209頁。

■国家賠償法1条(2008−19)【理論、判例知識問題】

国家賠償制度に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) 違法な行政庁の処分に対し国家賠償請求訴訟を提起して勝訴するためには、あらかじめ当該処分に対して取消訴訟または無効確認訴訟を提起し、取消しないし無効確認の判決を得て、当該処分が違法であることを確定しておかなければならない。

2) 国家賠償法は、憲法17条の規定を受けて制定されたものであるので、日本国民と外国人とを区別せずに損害賠償を認めている。

3) 国家賠償法は、国または公共団体の損害賠償責任について、補充的に「民法の規定による」としているが、民法典以外の失火責任法(失火ノ責任二関スル法律)や自動車損害賠償保障法なども、ここにいう「民法の規定」に含まれる。

4) 行政事件訴訟法は、行政庁が取消訴訟の対象となる処分をする場合には、当該処分の相手方に対し、取消訴訟と併せて国家賠償法1条に基づいて国家賠償訴訟を提起することができる旨教示する義務を規定している。

5) 国家賠償法は、憲法17条の規定を受けて制定されたものであるから、特別法において、公務員の不法行為による国または公共団体の損害賠償責任を免除し、または制限する規定を置くことは憲法違反であり、許されない。

■解説

【難易度】易しい。殆どの肢が過去に何度も出題されたものなので、正解しやすかった問題であろう。

1) 誤り。国家賠償請求訴訟の提起、勝訴の条件として、ここでいう違法の確定は必要ないとするのが判例である(最判昭和36年4月21日)。石川敏行『はじめて学ぶプロゼミ行政法』改訂版(2000年、実務教育出版)245頁。

2) 誤り。国家賠償法6条は、外国人について相互保証主義を規定している。

3) 正しい。国家賠償法4条の問題である。失火責任法に付き判昭和53年7月17日。前掲塩野315頁、櫻井他390−391頁。

4) 誤り。このような教示義務はない。教示しなければならないのは、当該処分についての、@取消訴訟の被告、A出訴期間、B不服審査前置主義の有無、C裁決主義の有無である(行政事件訴訟法46条1項2項)。

5) 誤り。国家賠償法5条の問題であるが、合理的範囲内であればこのような規定も許されると解されている。前掲塩野316頁。なお郵便法について、最判平成14年9月11日。前掲塩野377頁、櫻井他391頁。

■国家賠償法1条(2008−20)【判例知識問題】

国家賠償法1条にいう「公権力の行使」に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1) 裁判官の裁判過程における行為は、司法作用にかかわる行為なので、「公権力の行使」には該当しない。

2) 国会議員の立法過程における行為は、国の統治作用にかかわる行為なので、「公権力の行使」には該当しない。

3) 国家公務員の定期健康診断における国嘱託の保健所勤務医師による検診は、医師の一般的診断行為と異ならない行為なので、「公権力の行使」には該当しない。

4) 国による国民健康保険法上の被保険者資格の基準に関する通知の発出は、行政組織内部の行為なので、「公権力の行使」には該当しない。

5) 勾留されている患者に対して拘置所職員たる医師が行う医療行為は、部分社会内部の行為なので、「公権力の行使」には該当しない。

■解説

【難易度】やや難。1)、2)は過去頻出の肢であったため、残り3つの正誤判断が正解への鍵となったであろう。

1) 誤り。「裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したもの」という事情がある場合は」、国家賠償法の適用があるとするのが判例である(最判昭和57年3月12日)。前掲塩野335頁。

2) 誤り。「立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行う」というような場合、国家賠償法の適用があるとするのが判例である(最判昭和60年11月21日)。前掲塩野335−336頁。

3) 正しい。最判昭和57年4月1日である。芝池義一『判例行政法入門』(1995年、有斐閣)137−138頁。

4) 誤り。最判平成16年1月15日である(判決文。最高裁サイト〔pdfファイル〕)。判例は、本肢の言う様な内部行為論で問題を処理しているわけではない。ある事項につき法解釈が複数存在し、実務上の取扱も分かれておりいずれも相当の根拠がある場合、公務員が一方の解釈に立脚し公務を遂行したが後にそれが違法とされたとしても、直ちに公務員に過失があったとするのは相当ではないというのが判例である。前掲塩野346−347頁。

5) 誤り。最判平成17年12月8日である(判決文。最高裁サイト〔pdfファイル〕。判例は、拘留所職員たる医師が行う医療行為に関し、過失により適時に外部の医療機関へ患者を転送すべき義務を怠った場合、国家賠償法の適用が有り得る事を認めている。