■2008年行政書士試験・行政法総論

行政書士合格講座行政書士試験の過去問分析

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■行政行為の取消、撤回(2008−8)【理論問題】

次の1)から5)の文章は、現行法令の規定を基にしたものであるが、これらのうち、行政法学上、行政行為の「取消し」にあたるものはどれか。

1) 市町村長等は、消防法上の危険物の製造所の所有者、管理者または占有者が、同法に基づき当該製造所について発せられた移転等の命令に違反したときは、当該製造所の設置許可を取り消すことができる。

2) 国土交通大臣は、浄化槽を工場において製造しようとする者に対して行う認定の基準となる浄化槽の構造基準が変更され、既に認定を受けた浄化槽が当該変更後の浄化槽の構造基準に適合しないと認めるときは、当該認定を取り消さなければならない。

3) 国家公務員(職員)に対する懲戒処分について不服申立てがなされた場合、事案の調査の結果、その職員に処分を受けるべき事由のないことが判明したときは、人事院は、その処分を取り消さなければならない。

4) 一級建築士がその業務に関して不誠実な行為をしたとき、免許を与えた国土交通大臣は、免許を取り消すことができる

5) 国土交通大臣または都道府県知事は、建設業の許可を受けた建設業者が許可を受けてから一年以内に営業を開始しない場合、当該許可を取り消さなければならない。

■解説

【難易度】普通。

行政行為の取消、撤回の差異は、その@理由(行政行為に瑕疵が元々あるか、後発的理由か)、A効果(遡及効の有無)等に見られるが、本問は、こういう点をもとに肢に出てくる法律を解釈し、正解にたどり着くしか解法がないように思われる。

1) 撤回にあたる。本肢にいう製造所は、消防法10条4項が要求する技術上の基準に合致するよう維持しなければならないが、それができない場合、市町村長は各種命令をなしうる(消防法12条1、2項)。そしてこの命令に反した場合、製造所の設置許可を取消し得るが(消防法12条の2第1項3号)、この取消は、許可後の技術基準維持ができないという「後発的」な理由に基づくものだから、撤回にあたる。

2) 撤回にあたる。構造基準変更という「後発的」な理由による認定の取消(浄化槽法18条1項)だから、撤回と言える。

3) 取消にあたる。よってこれが正解である。処分を受けるべき事由がないのに懲戒処分をしているということは、当該懲戒処分には元々瑕疵が存在しているためである(国家公務員法92条2項)。逆に言うと、この肢の「取消」を撤回とすると、懲戒に基づく減給等の措置が救済されなくなるといった不都合が生じる。

4) 撤回にあたる。免許を与えた後の、業務に関し不誠実な行為があったいう「後発的」事情を理由としているので、撤回に該当する(建築士法10条1項2号。同法9条1項4号と比べると分りやすいだろうか)。

5) 撤回にあたる。そもそも建設業許可自体には瑕疵がないわけであるから、この場合は、営業を開始しないという「後発的」事情を理由とした撤回に該当する(建設業法29条1項3号。5号と比べると分りやすいだろうか)。

なお本問については、塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)169頁以下参照、櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)97頁以下参照。

■行政立法(2008−9)【条文知識問題】

各種の行政立法に関する次のア)−エ)の記述について、その正誤の組合せを示している次の1)−5)のうち、正しいものはどれか。

ア) 政令は、憲法73条6号に基づき、内閣総理大臣が制定するもので、閣議決定を経て成立し、天皇によって公布される。

イ) 内閣府令は内閣府の長である内閣総理大臣が制定し、省令は各省大臣がその分担管理する行政事務について制定するが、複数の省にまたがる共管事項については、内閣府令の形式をとらなければならない。

ウ) 国税庁、林野庁、社会保険庁など、各省の外局として設置され、庁の名称を持つ組織の長である各庁長官は、その機関の所掌事務について、公示を必要とする場合においては、告示を発することができる。

エ) 公正取引委員会、公害等調整委員会、中央労働委員会などの委員会は、庁と同様に外局の一種とされるが、合議体であるため、独自の規則制定権は与えられていない。

ア/イ/ウ/エ
1) 正/誤/正/誤
2) 誤/正/誤/正
3) 正/誤/正/正
4) 誤/誤/正/誤
5) 正/誤/誤/正

■解説

【難易度】普通。

ア) 誤り。政令制定権を有するのは内閣である(憲法73条6号)。この基本的知識さえ知っていれば、この段階で正解の肢を2つに絞ることができる。閣議決定(内閣法4条1項参照)、天皇(憲法7条1号)による公布という説明は正しい。

イ) 誤り。内閣府の説明(内閣府設置法6条1項、7条3項)、省令(国家行政組織法12条1項)は正しいが、共管事項の点が誤り。この場合も法形式は省令をとる。参照。法務省の所管省令(法務省サイト)。

ウ) 正しい。国家行政組織法14条1項。

エ) 誤り。国家行政組織法13条1項。

よって正解は4)になろう。本問については、塩野宏『行政法V』第2版(2001年、有斐閣)52頁、59−61頁参照。

■行政契約(2008−10)【理論問題】

地方公共団体による契約についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 地方公共団体による公共工事の請負契約については、入札手続などの地方自治法の規定が適用されるから、民法の請負契約の規定は適用されない。

2) 地方公務員の免職は行政処分であるが、地方公務員法上、その任命は、雇用契約の締結であって、行政処分によるものではないとされている。

3) 公営住宅の賃貸借契約については、公営住宅法及びそれに基づく条例が適用され、民法や借地借家法の規定は適用されない。

4) 地方公共団体による補助金交付の法律関係については、地方自治法の規定により、贈与契約の締結ではなく、長による交付決定によることとされている。

5) 水道事業者である地方公共団体と利用者との給水に関わる法律関係は、水道法上、水道の使用許可処分ではなく、給水契約の締結によることとされている。

■解説

1) 誤り。公共工事の請負契約は民法上の請負契約と考えられている。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)189頁参照。

2) 誤り。国家、地方公務員共に公務員の任免行為は処分の形式をとっていると解される。地方公務員の任命に付き地方公務員法17条。塩野宏『行政法V』第2版(2001年、有斐閣)221頁。

3) 誤り。2003年9問でも出題されている。公営住宅の賃貸借関係については、公営住宅法及びそれに基づく条例に特別の定めがないかぎり、民法、借地借家法の適用があると解されている(最判昭和59年12月13日)。前掲櫻井他31頁。

4) 誤り。地方自治法230条の2がここでは問題となる。同条は、地方自治体の補助金に関する規制規範であるが、補助金の交付決定の行為形式については特にふれていない(よって補助金交付の法的性質については、補助金に関係する法制度を見て個々的に判断する必要がある)。前掲塩野142頁注2参照。

5) 正しい。塩野宏『行政法T』第5版(2009年、有斐閣)191頁参照、前掲櫻井他125頁。

■行政調査(2008−26)【判例知識問題】

行政調査に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、正しいものはどれか。

1) 保健所職員が行う飲食店に対する食品衛生法に基づく調査の手続は、行政手続法の定めるところに従って行われなければならない。

2) 租務調査については、質問検査の範囲・程度・時期・場所等について法律に明らかに規定しておかなければならない。

3) 警察官職務執行法2条1項の職務質問に付随して行う所持品検査は、検査の必要性・緊急性があれば、強制にわたることがあったとしても許される。

4) 自動車検問は国民の自由の干渉にわたる可能性があるが、相手方の任意の協力を求める形で、運転手の自由を不当に制約するものでなければ、適法と解される。

5) 税務調査の質問・検査権限は、犯罪の証拠資料の収集などの捜査のための手段として行使することも許される。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。行政手続法はそもそも、「処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続」(行政手続法1条1項)に関する法律であるので、「(行政)調査の手続は、行政手続法の定めるところに従って行われなければならない」とする点が誤り。

2) 誤り。荒川民商事件(最決昭和48年7月10日)である。判例は、行政調査の具体的手続に付き、広い範囲での行政庁の裁量を認めている。この判例によると、「調査日時・場所等の事前通知、調査理由等の告知は当然には必要とされていないことになる」(前掲塩野263−264頁)。前掲櫻井他164頁。

3) 誤り。所持品検査は、原則検査を受ける者の承諾を要するが、捜索に至らない程度のものであれば、承諾がなくとも強制にわたらない限り検査の必要性、緊急性等を考慮し、許される場合もある(最判昭和53年9月7日)。前掲塩野259−260頁、櫻井他157頁。

4) 正しい。最決昭和55年9月22日である。前掲塩野260頁、櫻井他158頁。

5) 誤り。川崎民商事件(最判昭和47年11月22日)であろう。法律によって与えられた質問、調査権限は、当該調査を必要とする行政決定のために用いられねばならないのであり、これを犯罪捜査のために用いることは許されない。前掲塩野262−263頁、櫻井他161−162頁。所得税法234条2項。