■2008年行政書士試験・商法

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■株主の閲覧権(2008−36)

株式会社の株主等の閲覧権に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、甲株式会社(以下、甲会社という)は、会社法上の公開会社とする。

1) 単独株主Aは、甲会社の株式を市場において1000株取得した時点で、甲会社の株主構成を知りたいと考えた。Aは、営業時間内であれば、いつでも甲会社の株主名簿を閲覧することができる。

2) 甲会社の債権者Bは、甲会社からの債権放棄の要請に対して、甲会社の取締役等の責任追及をしたいと考えている。Bは、責任追及のための情報を得るために、営業時間内であれば、いつでも甲会社の取締役会議事録を閲覧することができる。

3) 単独株主Cは、甲会社が会社の事業とは無関係な美術品を高額で取得したことは、会社財産を著しく減少させ、甲会社に多大な損害を被らせるおそれがあると考えている。Cは、そのことを裏付けるために、営業時間内であれば甲会社の会計帳簿を閲覧することができる。

4) 甲会社の株券を保有しているDは、自己の債権者であるEに、売掛債権の担保としてその株券を略式質として提供したいと申し出た。Eは、甲会社の株主ではないが、Dの保有する株券が喪失株券でないことを確認するために、営業時間内であれば、いつでも甲会社の株券喪失登録簿を閲覧することができる。

5) 単独株主Fは、甲会社の経営が一気に悪化した原因が、甲会社に対する親会社の経営支配によるものであると考えている。Fは、この事実関係を確認するために、裁判所の許可を得て、当該親会社の取締役会議事録を閲覧することができる。

■解説

1) 誤り。株式を「取得した時点」ではまだAは、自己が甲会社の株主たることを会社に対抗できない(会社法130条1、2項)。よって法125条2項の請求はできないと言えようか。神田秀樹『会社法』第11版(2009年、弘文堂)99頁。

2) 誤り。会社法は取締役会の議事については議事録の作成等が義務付けられているが(法369条3、4項)、債権者がこの議事録を閲覧するには裁判所の許可を必要とする(法371条4項)。前掲神田198頁。

3) 誤り。会計帳簿の閲覧権は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主又は発行済株式の100分の3以上の数の株式を有する株主に認められている。法433条1項。前掲神田247頁。

4) 正しい。法231条2項。前掲神田86頁。

5) 誤り。本肢は、「子」会社の株主が親会社の取締役会議事録を閲覧するというものだが、これは認められていない。法371条5項(同条同項の文言に注意)。前掲神田198頁。

■代表取締役の権限(2008−37)

会社法上の公開会社であって取締役会設置会社の代表取締役の権限に関する次のア)〜オ)の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア) 取締役会は3ヶ月に1回以上招集しなければならないが、その招集権者を代表取締役とすることができる。

イ) 取締役の職務の執行が法令および定款に適合するための体制(いわゆる内部統制システム)の整備については、代表取締役が決定する。

ウ) 代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上の権限を有するため、取締役の義務違反により会社に損害が生じた場合に、当該取締役に対する責任追及のための訴訟を提起する。

エ) 代表取締役は、取締役会決議に基づいて、代表権の一部を他の取締役に委譲することができる。

オ) 取締役会は、法定事項や重要な業務執行について決定権限を有するが、それ以外については、代表取締役に、業務執行の決定を委任することができる。

1) ア・ウ
2) ア・オ
3) イ・エ
4) イ・オ
5) ウ・エ

■解説

ア) 正しい。前半部分につき会社法363条2項。取締役会の招集権者は原則ここの取締役にあるが(法366条1項本文)、定款または取締役会決議により招集権者を代表取締役にすることは可能である(法366条1項但書)。なおこの場合における他の取締役にについて、法366条2項。前掲神田195頁。

イ) 誤り。内部統制システムの整備は、取締役会の決議事項である(法362条4項6号)。前掲神田193頁。

ウ) 誤り。前半部分は正しいが(法349条5項、前掲神田199−200頁)、会社と取締役の間の訴訟における会社代表者は、原則取締役会が定める(法353、364条)。前掲神田192頁。但し本肢については法386条1項参照。前掲神田201頁。

エ) 誤り。このようなことは認められない。

オ) 正しい。法362条2、4項。法律上取締役会の決定事項とされているものを、定款で代表取締役に委任することはできないが、それ以外に委任は許される。前掲神田193、199頁。

よって正解は2)になろう。

■剰余金の配当(2008−38)

株式会社における剰余金の配当に関する次のア)〜オ)の記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。

ア) 剰余金の配当により株主に交付される金銭等の帳簿価額の総額は、剰余金の配当が効力を生ずる日における分配可能額を超えてはならない。

イ) 剰余金の配当においては、株主総会の決議により、当該会社の株式、新株予約権または社債を配当財産とすることができる。

ウ) 取締役会設置会社は、1事業年度の途中において1回に限り、取締役会決議により剰余金の配当(中間配当)をすることができる旨を定款で定めることができる。

エ) 純資産の額が300万円を下回る場合には、剰余金の配当をすることができない。

オ) 会社が自己株式を有する場合には、株主とともに当該会社も剰余金の配当を受けることができるが、配当財産の額は利益準備金に計上しなければならない。

1) ア・ウ
2) ア・エ
3) イ・エ
4) イ・オ
5) ウ・オ

■解説

ア) 正しい。法461条。前掲神田270頁。

イ) 誤り。配当財産を金銭以外の財産にすること(現物配当)も認められているが(法454条4項)、当該会社の株式等を配当財産とすることはできない(法454条1項1号括弧書き)。法454条1項1号括弧書きの「当該株式会社の株式等」については、法107条2項2号ホ括弧書き参照。前掲神田268頁。

ウ) 正しい。法454条5項。前掲神田269頁。

エ) 正しい。法458条。前掲神田270頁。

オ) 誤り。自己株式への配当は認められていない(法453条)。前掲神田268頁。

よって正解は4)になろう。

■企業の資金調達方法(2008−39)

甲株式会社(以下、甲会社という)の資金調達に関する次の文章の空欄(ア)〜(キ)に当てはまる語句の組合せとして、正しいものはどれか。なお、以下の文章中の発言・指摘・提案の内容は、正しいものとする。

東京証券取引所に上場する甲会社は、遺伝子研究のために必要な資金調達の方法を検討している。甲会社取締役会において、財務担当の業務執行取締役は、資金調達の方法として株式の発行、(ア)の発行、銀行借入れの方法が考えられるが、銀行借入れの方法は、交渉の結果、金利の負担が大きく、新規の事業を圧迫することになるので、今回の検討から外したいと述べた。次に、株式の発行の場合は、甲会社の経営や既存株主に対する影響を避けるために、(イ)とすることが望ましいのであるが、会社法は(ウ)について(イ)の発行限度を定めているため、十分な量の資金を調達できないことが見込まれると指摘した。社外取締役から、発行のコストを省くという観点では、(エ)を処分する方法が考えられるという意見が出された。

これに対して、財務担当の業務執行取締役は、株式の発行価額が、原則として資本金に計上されるのに対して、(エ)の場合は、その価額はその他(オ)に計上されるという違いがあると説明した。こうした審議の中で、甲会社代表取締役は、(ア)の発行であれば、経営に対する関与が生じないこと、また(ア)を(カ)付とし、(キ)額を(カ)の行使価額に充当させるものとして発行すれば、(キ)に応じるための資金を甲会社が準備する必要はなく、現段階では、有利な資金調達ができるだろうと提案した。

1) ア 社債 イ 議決権のない株式 ウ 公開全社 エ 金庫株式 オ 資本準備金 カ 新株予約権 キ 払戻し

2) ア 債券 イ 議決権のない株式 ウ 上場会社 エ 金庫株式 オ 資本剰余金 カ 取得請求権 キ 払戻し

3) ア 社債 イ 議決権のない株式 ウ 公開会社 エ 自己株式 オ 資本剰余金 カ 新株予約権 キ 償還

4) ア 債券 イ 配当請求権のない株式 ウ 上場会社 エ 募集株式 オ 資本準備金 カ 買取請求権 キ 払戻し

5) ア 社債 イ 配当請求権のない株式 ウ 公開会社 エ 自己株式 オ 利益準備金 カ 取得請求権 キ 償還

■解説

ア) 社債。企業が外部から資金を調達する方法としては、株式や社債(法2条23号参照)の発行、借入等の手段がある。前掲神田119頁。

イ) 議決権のない株式(法108条1項3号)。議決権のある株式の新規発行の場合は、既存株主の議決権が希薄化する等という影響がある。前掲神田79頁、126頁以下参照。

ウ) 公開会社。公開会社が議決権制限株式を発行する場合、その数が発行済株式総数の2分の1を超えてはならない(法115条)。前掲神田80頁。

エ) 自己株式(法113条4項)。前掲神田92頁。

オ) 資本剰余金。自己株式の価額は資本剰余金に組み込まれる(法446条1号ロ)。前掲神田263頁。

カ) 新株予約権(法2条22号)。社債権者にとっては会社の業績が上昇すれば新株予約権を行使し株主になることができるというメリット、会社側は、単なる社債発行と異なり低利で社債を発行できるというメリットがある。前掲神田300頁。

キ) 償還(法2条23号)。

よって正解は3)になろう。

■匿名組合(2008−40)

匿名組合に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1) 匿名組合員は、信用や労務を出資の目的とすることはできず、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる。

2) 匿名組合員による出資は、組合の財産を形成することはなく、営業者の財産に属する。

3) 匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利および義務を有しないが、匿名組合員が自己の商号などを営業者の商号として使用することを許諾したときには、その使用以後に生じた債務について、営業者と連帯してこれを弁済する責任を負う。

4) 匿名組合員は、営業者の業務を執行し、または営業者を代表することができない。

5) 匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員に対してその出資の価額を返還しなければならず、出資が損失によって減少した場合には、営業者は、その減少額をてん補して匿名組合員に出資の価額を返還する義務を負う。

■解説

1) 正しい。「匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる」(商法536条2項)。

2) 正しい。法536条1項。民法上の組合は、組合員の出資により組合財産が形成される点で異なる。

3) 正しい。前半部分につき法536条4項、後半部分につき537条。

4) 正しい。法536条3項。

5) 誤り。よってこれが正解である。前半部分は正しいが(法542条本文)、出資が損失によって減少した場合には、営業者は出資の残額を返還すれば足りる(法542条但書)。

本問題については、前掲神田2−3頁参照。