■2008年行政書士試験・法令記述式問題

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■行政法・取消訴訟(2008−46)

Xは、Y県内に産業廃棄物処理施設の設置を計画し、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づき、Y県知事に対して設置許可を申請した。しかし、Y県知事は、同法所定の要件を満たさないとして、申請に対し拒否処分をした。これを不服としたXは、施設の設置を可能とするため、これに対する訴訟の提起を検討している。Xは、誰を被告として、いかなる種類の訴訟を提起すべきか。40字程度で記述しなさい。

■解説

改正行政事件訴訟法が正面から問われた問題である。@被告適格、A訴訟類型に関する2つの改正点をまとめれば正解になろう。

@被告適格。従前は処分庁(Y県知事)であったが、改正後は「当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体」(行政事件訴訟法11条1項1号、Y県)になった。

A訴訟類型。当該拒否処分の取消訴訟の他、義務付け訴訟(申請満足型)が重要となる。解答は次のようになろう(本問については、塩野宏『行政法U』第4版補訂〔2008年、有斐閣〕213頁以下参照)。

「Xは、Yを被告とする義務付け訴訟に申請拒否処分の取消訴訟を併合して提起すべき。」(39字)

なお本問で、義務付け訴訟にふれず「拒否処分の取消訴訟だけを解答した」場合であっても、誤りとは言えないだろう。何故なら、廃棄物処理法上の要件がないとした拒否処分が取消された以上、行政庁は改めて本件設置許可をしなければならず、結局Xの望みは達成されるからである(判決の拘束力〔33条1項、前掲塩野167頁以下参照〕。なお本件拒否処分と別の理由で再度拒否処分をすることは可能であるが〔反復禁止効〕に注意、本問では困難だろう)。但しこれは迂路なので、司法上で一気に、産廃施設設置許可の効果を引き出せるように処理するというのが、義務付け訴訟の趣旨である。

■民法・信頼関係の法理(2008−45)【判例問題】

不動産の賃貸借において、賃料の不払い(延滞)があれば、賃貸人は、賃借人に対して相当の期間を定めてその履行を催告し、もしその期間内に履行がないときには、賃貸借契約を解除することが出来る。また、賃借人が、賃貸人に無断で、賃借権を譲渡、または賃借物を転貸し、その譲渡人や転借人に当該不動産を使用または収益させたときには、賃貸人は、賃貸借契約を解除することができる。 だた、上記の、賃料支払いの催告がなされた場合や、譲渡・転貸についての賃貸人による承諾が得られていない場合でも、賃貸人による解除が認められない場合がある。それはどのような場合かについて、40字程度で記述しなさい。

■解説

民法は、賃借人が賃貸借契約を解除できる場合として3つの条文を(607、610条、611条2項)、一方賃貸人が解除できる場合として1つを規定する(賃貸人の承諾なき賃借権の譲渡、賃借物の転貸。612条2項)。また賃貸人は、賃借人の債務不履行違反、義務違反を理由とした解除もできる(541条。判例)。藤岡−磯村−浦河−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)134−135頁。

但し判例は、問題文にあるように賃貸人による解除に一定に制限をかけている。それが信頼関係破壊法理(最判昭和39年7月28日)である。この法理の背景には、わずかな債務不履行でも賃貸借契約を解除できるとなると、特に不動産賃貸借の場合、賃借人にとっては居住の場所や営業の場所を喪失することになり多大な損失が生じかねない、ということがある。

賃貸借契約当事者相互間の信頼関係を破壊するに至る程度の不誠意が賃借人にない場合。」(40字)

解答は以上のようになろうか。

■民法・債権譲渡の対抗要件(2008−46)【条文知識問題】

AはBに対して、自己がCに対して有していた300万円の貸金債権を譲渡した。この場合、債権譲渡の合意自体はA・B間で自由に行うことができるが、債権譲渡の合意に基づいて直ちに譲受人Bが債務者Cに対して支払いを求めることはできない。
では、その理由について、「なぜならば、民法の規定によれば、指名債権の譲渡は、」に続けて、40字程度で記述しなさい。

■解説

債権譲渡における、対「債務者」対抗要件についての問題である(466条1項)。まず債権譲渡そのものは問題文にあるように、譲渡人、譲受人間で自由に行い得る。つまり、民法に明文の規定はないが、債権譲渡(466条1項)は譲渡人、譲受人との間の契約により成立する(両当事者の意思の合致のみでも成立する)。野村他『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)175頁。

しかしこの債権譲渡を以て、「直ちに譲受人Bが債務者Cに対して支払いを求めることはできない」。いきなりBがCに、Aより債権を譲り受けたからと言ったところで、Cからすればそれは本当かどうか分らないはずである。そこで民法は、支払いを求めるに際しての要件、債務者に対する対抗要件(権利行使要件)を規定している(民法467条1項)。この規定についての論述が本問の解答になる。

なぜならば、民法の規定によれば、指名債権の譲渡は、「AがCに債権譲渡の通知をするかAB間の債権譲渡につきCの承諾を必要とするからである。」(42字)

解答は以上のようになろうか。

なお467条1項の通知と承諾にはなんらの方法も要求されていないので、口頭の通知、承諾も可能である(前掲野村他180、182頁)。確定日付ある証書による通知、承諾が要求されているのは、債権の二重譲渡の事案で問題となる467条2項の場合である。本問については、前掲野村他174頁参照。