■2006年行政書士試験・憲法

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■私人間効力(2006−3)

私人間における人権規定の効力に関する記述のうち、最高裁判所の判例の述べるところはどれか。

1) 憲法の定める基本的人権のうち重要なものは、単に国家権力に対する自由権を保障するのみではなく、社会生活の秩序原理でもある。これは、一定の範囲において、国民相互の法律関係に対して直接の意味を有する。

2) 人の思想、信条は身体と同様本来は自由であるべきものであり、その自由は憲法19条の保障するところでもあるから、企業が労働者を雇用する場合等、一方が他方より優越した地位にある場合に、その意に反してみだりにこれを侵してはならないことは明白である。

3) 日本国憲法は価値中立的秩序ではなく、その基本的人権の章において客観的な価値秩序を定立している。この価値体系は、憲法上の基本決定として法のすべての領域で通用する。いかなる民法上の規定もこの価値体系と矛盾してはならず、あらゆる規定はこの価値体系の精神において解釈されなければならない。

4) 私人による差別的行為であっても、それが公権力との重要な係わり合いの下で生じた場合や、その私人が国の行為に準じるような高度に公的な機能を行使している場合には、法の下の平等を定める憲法14条が直接に適用される。

5) 憲法19条、21条、23条等のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であって、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでない。

■解説

三菱樹脂事件判決(最大判昭和48年12月12日)のフレームワークをおさえておけば解ける問題であろう。

1) 誤り。最高裁は、三菱樹脂事件において、自由権人権規定に付き「国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない」としている。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)112頁以下、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)166頁。

2) 誤り。最高裁は、三菱樹脂事件において、「企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない」としている。前掲芦部113頁、佐藤166頁。

3) 誤り。これはおそらくドイツ連邦憲法裁判所のリュート判決(Lueth-Urteil BverfGE 7, 198)を元に作られたものであろう。芦部信喜『憲法学U』(有斐閣、1994年)281−282頁。

4) 誤り。いわゆるstate actionの理論(国家同視説)的説明だが、最高裁はこの理論を採用はしていない。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)117頁、佐藤165頁。

5) 正しい。昭和女子大事件(最判昭和49年7月19日)である。前掲芦部113頁、佐藤166頁。

■国事行為(2006−4)

次のア)−オ)の記述のうち、憲法上、天皇の国事行為として認められていないものはいくつあるか。

ア) 内閣総理大臣の指名。

イ) 憲法改正、法律、政令及び条約の裁可。

ウ) 国務大臣の任免。

エ) 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権の決定。

オ) 衆議院の解散。

1) 1つ
2) 2つ
3) 3つ
4) 4つ
5) 5つ

■解説

単純条文知識問題のためぜひとも正解しておきたい問題である。

ア) 認められていない。内閣総理大臣の指名を行うのは国会であり、天皇は任命行為を行う(6条1項)。

イ) 認められていない。裁可権は旧憲法下で認められていたものである(大日本帝国憲法6条参照)。国事行為として認められているのは「憲法改正、法律、政令及び条約の公布」である(7条1号)。

ウ) 認められていない。国務大臣の任免権は内閣総理大臣の権能であり(68条)、天皇は任免行為の認証を行う(7条5号)。

エ) 認められていない。大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権の決定は内閣の権能である(73条7号)。天皇はこの決定を認証する(7条6号)。

オ) 認められている。7条3号。但し衆議院の実質的解散権は内閣にあると解されている。

よって正解は4)4つとなろう。

■報道の自由、取材の自由等(2006−5)

次の文章は、表現と行為の関係に言及した、ある最高裁判所判決の一節である。これを読み、同様に純然たる意見表明ではない各種の行為に対して、判例が採っている考え方として誤っているものは、次の1)−5)のうちどれか。

憲法21条の保障する表現の自由は、民主主義国家の政治的基盤をなし、国民の基本的人権のうちでもとりわけ重要なものであり、法律によってもみだりに制限することができないものである。そして、およそ政治的行為は、行動としての面をもつほかに、政治的意見の表明としての面をも有するものであるから、その限りにおいて、憲法21条による保障を受けるものであることも、明らかである。

1) 国家公務貝法102条1項および人事院規則によって公務員に禁止されている政治的行為も多かれ少なかれ政治的意見の表明を内包する行為であるから、もしそのような行為が国民一般に対して禁止されるのであれば、憲法違反の問題が生ずる。

2) 国家公務員法102条1項および人事院規則による公務員に対する政治的行為の禁止が、憲法上許容されるか否かを判断するにあたっては、禁止の目的、この目的と禁止される政治的行為との合理的関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の三点から検討することが、必要である。

3) 一般人の筆記行為の自由について、それが、さまざまな意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補肋するものとしてなされる限り、憲法21条の視定の精神に照らして十分尊重に値するが、表現の自由そのものとは異なるため、その制限や禁止に対し、表現の自由の場合と同等の厳格な基準は要求されない。

4) 報道機関の報道行為は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の「知る権利」に奉仕するものであるから、思想の表明の自由とならんで、事実の報道の自由は、表現の自由を想定した憲法21条の保障のもとにある。

5) 報道機関の報道が正しい内容をもつためには、報道のための取材行為も、憲法21条の規定の精神に照らし、十分尊重に値するから、報道の公共性や取材の自由への配慮から、司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してのみ法廷においてメモを取ることを許可することも、合理性を欠く措置とはいえない。

■解説

06年本試験憲法の中ではこの問題が一番難しかったであろう。解答速報段階では予備校の解答速報が3つにわれるという状況だったが、ふたを開ければ判例中に用いられている言葉を知っているかという問題であった。

1) 正しい。猿払事件(最大判昭和49年11月6日)である。前掲芦部272−273頁、佐藤162−163頁

2) 正しい。猿払事件である。

3) 誤り。レぺタ事件(最大判平成1年3月8)である。最高裁は筆記行為の自由につき、「憲法21条1項の規定の精神に照らして尊重されるべきであるといわなければならない」としている。前掲芦部179頁、佐藤276−277頁。

4) 正しい。博多駅事件(最大判昭和44年11月26日)である。この最高裁はこの事件で取材の自由につき、「報道のための取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値いするもの」としている。肢3の問題文と解説を比較参照せよ。前掲芦部176頁、佐藤249頁。

5) 正しい。レぺタ事件である。

■憲法総合(2006−6)

次の条文の下線部@−Dについての記述として、妥当なものはどれか。

第11条 @国民は、すべてのA基本的人権の享有を妨けられない。Bこの憲法が国民にC保障する基本的人権は、侵すことのできないD永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

1) 憲法13条以下で保障される諸権利のなかで、明示的に「国民」を主語としている権利については、日本に在留する外国人に対して保障が及ばないとするのが、判例である。

2) 国家権力の統制下にある在監者に対しては、新聞、書籍を閲読する自由は、憲法上保障されるべきではないとするのが、判例である。

3) 「この憲法」のなかには、日本国憲法のほかに、世界人権宣言や国際人権規約も当然に含まれるとするのが、判例である。

4) 「学問の自由は、これを保障する」と規定する憲法23条は、大学に対して、固有権としての自治権を保障したものであるとするのが、通説である。

5) 憲法改正には限界があり、この憲法が保障する基本的人権を憲法改正手続によって削除することは、論理的に許されないとするのが、通説である。

■解説

難易度としては普通より若干難しいレヴェルの問題であろうか。

1) 誤り。本肢のように、条文中に「国民」という文言が有るか否かで、当該人権規定が外国人にも保障されるか否かを考える説も存在するが、この説は主流ではない。あくまで当該人権規定が権利の性質上外国人にも保障されるかどうかを考える説が主流でもあり、判例である(マクリーン事件〔最大判昭和53年10月4日〕)。前掲芦部92頁以下、佐藤144頁。

2) 誤り。「よど号」ハイジャック新聞記事抹消事件(最大判昭和58年6月22日)は、閲読の自由を原則として認めてはいる。前掲芦部109頁、佐藤158頁。

3) 誤り。これに関し正面から判断した最高裁判例はないように思われる。疑問を留保する。

4) 誤り。23条は、大学の自治を制度として保障しているのであり(制度的保障)、自治「権」という権利を保障しているのではない。前掲芦部167頁、佐藤125−126頁。

5) 正しい。憲法改正限界説によれば、基本的人権そのものを否定する改正は許されない。基本的人権条項の改正が許されないわけではないが、それはあくまで人権の基本的原則を踏まえた上での個別的改正でなければならない。前掲芦部385頁以下参照、佐藤39頁以下。

■憲法人権規定(2006−7)

次のア)−オ)の記述のうち、日本国憲法に規定されているものは、いくつあるか。

ア) 何人も、同時に両議院の議員たることはできない。

イ) 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

ウ) 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

エ) 何人も、正当な理由がなければ拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

オ) 刑事事件について、別に法律で陪審の制度を設けることを妨げない。

1) 1つ
2) 2つ
3) 3つ
4) 4つ
5) 5つ

■解説

単純条文知識問題のためぜひとも正解しておきたい問題である。

ア) 規定されている。48条。

イ) 規定されている。20条2項。

ウ) 規定されている。14条2項。

エ) 規定されている。34条。

オ) 規定されていない。これは裁判所法3条3項である。

よって正解は4) 4つとなろう。