■2006年行政書士試験・行政法総論

行政書士合格講座行政書士試験の過去問分析>2006年行政書士試験・行政法総論

このサイトについて・プライバシーポリシー 憲法学の窓・公務員試験対策室 Site Map

■行政上の法律関係(2006ー8)【判例問題】

公法と私法が交錯する領域に係る次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 防火地域に関する建築基準法の規定は、民法の相隣規定に関する特別法として適用されるとするのが最高裁の判例である。

2) 現実に開設されている私道を日常的に利用する利益は反射的利益であり、敷地所有者に対して通行妨害排除の民事訴訟を提起する利益とはなりえないとするのが最高裁の判例である。

3) 建築確認は、その土地について私法上の権原がある者により申請される必要があるから、権原なき者によって申請された場合には、そのことを理由として却下することができるというのが最高裁の判例である。

4) 公営住宅に世帯主として入居している者が死亡した場合、その相続人が低所得者であるときには、入居関係は相続させなければならないとするのが最高裁の判例である。

5) 海岸線の変動により、従来私人の所有であった土地が海面下に沈んだ場合には、私人の土地所有権は自動的に滅失するというのが最高裁の判例である。

■解説

【難易度】やや難。

1) 正しい。建築基準法65条の建築物については民法234条1項の適用を排除する、というのが判例である(最判平成1年9月19日)。櫻井敬子−橋本博之『行政法』第5版(2016年、弘文堂)30頁。

2) 誤り。建築基準法42条1項5号による道路位置指定を受け、現に開設されている道路を通行することにつき日常不可欠の利益を有する者は、特段の事情なき限り通行妨害の禁止を求める権利を有する、とするのが判例である(最判平成9年12月18日)。

3) 誤り。最判昭和60年7月16日である。建築確認は、裁量の余地のない確認的行為であり、建築確認の申請が敷地や構造等に関する法規の規制に適合するものであれば、速やかに確認処分がなされねばならない。前掲櫻井他114頁。

4) 誤り。公営住宅入居者死亡の場合、その相続人は公営住宅を使用する権利を当然に承継すると解する余地はない、というのが判例の立場である(最判平成2年10月18日)。

5) 誤り。この場合、当該海没地の所有権が当然に消滅する旨の立法は現行法上存在しない、というのが判例の立場である(最判昭和61年12月16日)。

■行政機関概念(2006−9)【理論問題】

行政庁などの行政機関の概念に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 行政庁は独任制でなければならず、委員会などの合議体が行政庁としての役割を果たすことはない。

2) 行政庁、諮問機関、参与機関などの行政機関の定義は、国家行政組織法において定められている。

3) 諮問機関が示した答申・意見について、行政庁はそれを尊重すべきではあるが、法的に拘束されることはない。

4) 行政庁の権限を補助機関が専決する場合には、代決の場合とは異なり、処分権限は行政庁ではなく、補助機関に帰属することとなる。

5) 補助機関とは行政主体の手足として実力を行使する機関であり、警察官、収税官などがこれに当たる。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。独任制の行政庁(各省大臣等)の他合議制の行政庁(委員会等)も存在する。石川敏行『はじめて学ぶプロゼミ行政法』改訂版(2000年、実務教育出版)46頁。

2) 誤り。諮問機関、参与機関という概念はあくまで講学上の概念である。塩野宏『行政法V』第2版(有斐閣、2001年)18頁以下参照、前掲櫻井他40頁参照。

3) 正しい。諮問機関の答申等に行政庁は拘束されない。これに対し、参与機関の議決には拘束される。前掲櫻井他39頁。

4) 誤り。専決、代決とは、「実務上の処理の仕方として、形式的な代理権の授与をすることなく、事実上、当該行政官庁の行為を補助機関が当該行政官庁の名前で行うこと」をいう。つまり処分権限は補助機関に移らない。前掲塩野34頁、櫻井他42頁。

5) 誤り。これは補助機関ではなく、執行機関の説明である。前掲塩野39頁、櫻井他40−41頁。

■行政行為の取消と撤回(2006−10)【理論問題】

行政行為の職権取消と撤回に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 行政行為の撤回は、処分庁が、当該行政行為が違法になされたことを理由にその効力を消滅させる行為であるが、効力の消滅が将未に向かってなされる点で職権取消と異なる。

2) 旅館業法8条が定める許可の取消は、営業者の行為の違法性を理由とするものであるから、行政行為の職権取消にあたる。

3) 公務員の懲戒免職処分は、当該公務員の個別の行為に対しその責任を追及し、公務員に制裁を課すものであるから、任命行為の職権取消にあたる。

4) 行政行為の職権取消は、私人が既に有している権利や法的地位を変動(消滅)させる行為であるから、当該行政行為の根拠法令において個別に法律上の根拠を必要とする。

5) 行政行為の職権取消は、行政活動の適法性ないし合目的性の回復を目的とするものであるが、私人の信頼保護の要請等との比較衡量により制限されることがある。

(参考)旅館業法8条「都道府県知事は、営業者が、この法律若しくはこの法律に基づく処分に違反したとき、又は第3条第2項第3号に該当するに至ったときは、同条第1項の許可を取り消し、又は期間を定めて営業の停止を命ずることができる。(以下略)」

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。行政行為の違法を理由にその効力を消滅させるのは、撤回ではなく取消である。撤回の将来効についての説明は正しい。塩野宏『行政法T』第5版(有斐閣、2009年)170頁、前掲櫻井他97頁。

2) 誤り。旅館業法8条の許可の取消は、撤回の意味を持つ。前掲塩野172頁。

3) 誤り。懲戒処分は、任命行為後の職務上の義務違反等を理由とする制裁、つまり後発的な理由によりなされるものだから、取消とはいえないであろう。前掲石川188頁以下。なお同108頁以下参照。

4) 誤り。職権取消に条文の根拠は必要ではない。撤回も同様である。前掲塩野170、173頁、櫻井他97頁以下。

5) 正しい。これが正解であろう。前掲塩野170頁以下、櫻井他99頁以下参照。