■2005年行政書士試験・憲法

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■日本国憲法条文(2005−3)

次の記述は、日本国憲法の条文を基礎としているが、本来の条文にある重要な要素が欠けているなど、変更されているものが含まれている。選択肢1)−5)のうち、本来の条文に照らして正しいものはどれか。

1) 皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

2) 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

3) 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命、自由若しくは財産を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

4) 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その補償を求めることができる。

5) 国民、天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

■解説

1) 正しい。2条。

2) 誤り。9条1項は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」を放棄すると規定している。

3) 誤り。31条は、法定手続によらねば「その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」と規定している。

4) 誤り。17条。不法行為であれば求めるのは賠償である。

5) 誤り。99条。国民の憲法尊重擁護義務は規定されていない。

■選挙運動への規制(2005−4)

次の文章は、ある最高裁判決の補足意見の一節である。選択肢1)−5)のうち、この補足意見とは考え方の異なる見解はどれか。

選挙運動においては各候補者のもつ政治的意見が選挙人に対して自由に提示されなければならないのではあるが、それは、あらゆる言論が必要最少限度の制約のもとに自由に競いあう場ではなく、各候補者は選挙の公正を確保するために定められたルールに従って運動するものと考えるべきである。法の定めたルールを各候補者が守ることによって公正な選挙が行なわれるのであり、そこでは合理的なルールの設けられることが予定されている。このルールの内容をどのようなものとするかについては立法政策に委ねられている範囲が広く、それに対しては必要最少限度の制約のみが許容されるという合憲のための厳格な基準は適用されないと考える。
(最判昭和56年7月21日刑集35巻5号577頁以下)

1) 憲法47条は、国会議員の選挙に関する事項は法律で定めることとしているが、これは、選挙運動については自由よりも公正の観点からルールを定める必要があり、そのために国会の立法裁量の余地が広い、という趣旨を含んでいると考えられる。

2) 国会は、選挙区の定め方、投票の方法、日本における選挙の実態など諸般の事情を考慮して選挙運動のルールを定めうるのであり、これが合理的とは考えられないような特段の事情のない限り、国会の定めるルールは各候補者の守るべきものとして尊重されなければならない。

3) 公職選挙法による戸別訪問の禁止は、表現の自由を制限するものと考えれば、これを合憲とするために要求される厳格な基準に合致するとはいえないが、選挙の公正を碓保するためのルールであると考えられるので、そこに一定の合理的な理由が見出される限りは、国会の立法裁量を尊重すべきであり、合憲的な規制であると考えられる。

4) 戸別訪問には、選挙人の生活の平穏を害し、買収・利害誘導等の温床になりやすいなどの弊害が伴うことは否定できない一方、これを禁止する公職選挙法の規定は、自由な意見表明そのものの制約を目的とするものではなく、意見表明の手段方法がもたらす弊害の防止を目的としているにすぎないから、厳格な基準は適用されず合憲である。

5) もとより戸別訪問の禁止が、選挙の公正を確保するための立法政策として妥当であるかどうかについては、考慮の余地があり、実際、戸別訪問の禁止を原則として撤廃すべしとする意見も強いが、これは、その禁止が憲法に反するかどうかとは別問題である。

■解説

公職選挙法に定める戸別訪問の禁止(138条)と憲法の関係が争われた事案であるが、難しい問題であったと思う。

本問の補足意見は伊藤正巳補足意見であり、この補足意見は、憲法47条を中心とする立法裁量論を展開している。それに対し多数意見(最判昭和56年6月15日も参照のこと)は、猿払事件で用いられた「合理的関連性の基準」+立法裁量論の立場をとっているといえようか。
多数意見、伊藤補足意見共に結局は裁量論がベースになっているが、その点について、選挙運動は表現の自由にも関係する問題であるのに広い裁量論を持ち込んでしまっているという批判を受けることになる(吉田善明「戸別訪問の禁止」『憲法判例百選U』第3版〔1994年、有斐閣〕340頁、芦部『演習憲法』新版〔1988年、有斐閣〕121頁以下参照)。

正解は肢4)(多数意見)である。4)と猿払事件判決を読み比べると分かりやすいかもしれない。

■議院の議事運営(2005−5)

次の衆参両院の議事運営に関する記述のうち、正しいものはどれか。

1) 日本国憲法は、議事運営につき、戦前の議院法に相当する国会法の制定を予定しているが、法律の定めていない細則については、各議院の議院規則にゆだねられている。

2) 政府委員の制度は、日本国憲法の下では、国会法上の存在にとどまり憲法の予定するところではなかったが、戦前からの伝統を受け継ぎ今日まで維持されている。

3) 日本国憲法は「両議院は、国民より提出された請願書を受けることができる。」と定めるにとどまるが、いわゆる請願権を憲法上の権利と解するのが通説である。

4) 日本国憲法は「会期中に議決に至らなかつた案件は、後会に継続しない。」とするが、各議院の議決で付託され閉会中に審査した案件は、後会に継続するのが慣例である。

5) 衆参両院の会期は同じであり、衆議院の側の事情によって行われた閉会、会期の延長は、参議院の活動能力をも左右することになる。

■解説

1) 誤り。むしろ現行憲法は議事運営につき議員規則を想定しているといえる(58条2項)。しかし旧憲法下の実務慣行を引き継ぎ、「会議その他の手続及び内部の規律則」につき国会法という法律で定めているのが現状である。佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)461−462頁以下。

2) 誤り。政府委員の制度は、99年の第146回国会から廃止された。前掲佐藤451頁。

3) 誤り。請願権は憲法上、「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」(16条)と規定されている点で誤り。

4) 誤り。会期不継続の原則は国会法に規定がある(68条)。なお本肢後半部分については同法68条但書参照。前掲佐藤445頁。

5) 正しい。憲法54条2項は、両院同一会期原則の根拠と解されよう。前掲佐藤444頁。なお2004年試験第36問参照。

■身分保障に関係する憲法条文(2005−6)

日本国憲法が定める身分保障に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1) いわゆる議員特権の一つとして、両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受けるものとされている。

2)皇室財産については、憲法上、すべて国に属するものと定められ、皇室の費用も、すべて予算に計上して国会の議決を経なければならないとされている。

3) 裁判官の身分保障に関連して、下級裁判所の裁判官の任期は10年であり、仮に再任されたとしても、法律の定める年齢に達したときには退官するものとされている。

4) 裁判官の身分保障に関連して、下級裁判所の裁判官は、憲法上、すべて定期に相当額の報酬を受け、在任中、これを減額することができないと定められている。

5) 公務員の身分保障の一環として、官吏は、憲法上、すべて定期に相当額の報酬を受けるものと定められている。

■解説

本問は正解しておきたい問題の1つである。

1) 正しい。49条。

2) 正しい。88条。

3) 正しい。80条1項。

4) 正しい。80条2項。

5) 誤り。よってこれが正解となろう。なおこれによく似た選択肢は、2002年第6問肢3でも見受けられる。

■議員の資格争訟(2005−7)

次の事項に関連して、日本国憲法および公職選挙法が予定する裁判作用とその担い手の組合せとして、正しいものはどれか。

A 国会議員の資格をめぐる裁判
B 国会議員の選挙の効力をめぐる裁判

a 議院
b 国会
c 裁判所

1) A−a B−b

2) A−b B−c

3) A−c B−a

4) A−a B−c

5) A−b B−a

■解説

AとBを混同してしまい、解きづらかったという方もおられるのではなかろうか。

正解は4)である。A「資格をめぐる裁判」−a「議院」(憲法55条)、B「効力をめぐる裁判」−c「裁判所」(公選法204条)である。

なお国会議員の資格争訟の結果に不服をもつ者が、通常裁判所でその結果を争うことは認められないと解されている。何故なら資格争訟は法律上の争訟(裁判所法3条)に該当するが、司法権の限界に属するためである。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)331−332頁以下。