■2004年行政書士試験・憲法

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■選挙権と法の下の平等(2004−3)

投票価値の平等に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に適合していないものはどれか。

1) 形式的に1人1票の原則が貫かれていても、投票価値が平等であるとは限らない。

2) 選挙人資格における差別の禁止だけでなく、投票価値の平等も憲法上の要請である。

3) 投票価値の平等は、他の政策目的との関連で調和的に実現されるべきである。

4) 法改正に時問がかかるという国会側の事情は、憲法判断に際して考慮すべきでない。

5) 参議院議員の選挙については、人口比例主義も一定程度譲歩・後退させられる。

■解説

投票価値の平等に関する判例の知識を問う問題である。これに関しては、複数の最高裁判決が出ているのでそれぞれきちんとおさえておかねばならない。なお本問は、難易度が高いわけではないので、正解しておきたい1問であろう。

1) 適合している。形式的な1人1表(one person, one vote)原則があっても、投票価値が違うのだからこそ、議員定数不均衡訴訟が提起されているのである。

2) 適合している。最大判昭和51年4月14日。参照芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)140−141頁。

3) 適合している、前記判例は投票価値の平等を判断する際、人口比以外の要素を考慮に入れることを認めている。

4) 適合していない。よってこれが正解。

5) 適合している。参議院が半数交代制(憲法46条)を採用している関係で定数偶数配分をとならざるを得ないので、本肢のようなことがいわれる。前掲芦部143頁。

■税理士会政治献金事件(2004−4)

次の文章は、最高裁判所の判決の一節である。判決の趣旨に照らして、妥当でないものはどれか。

「税理士会は、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的として、法が、あらかじめ、税理士にその設立を義務付け、その結果設立された法人である。法に別段の定めがある場合を除く外、税理会に入会している者でなければ税理士業務を行ってはならないとされている。 税理士会が強制加入の団体であり、その会員である税理士に実質的には脱退の自由が保障されていないことからすると、その目的の範囲を判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由との関係で、次のような考慮が必要である。

税理士会は、法人として、法及び会則所定の方式による多数決原理により決定された団体の意思に基づいて活動し、その構成員である会員は、これに従い協力する義務を負い、その一つとして会則に従って税理上会の経済的基礎を成す会費を納入する義務を負う。しかし、法が税理上会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある」 (平成8年3月19日最高裁判所第三小法廷判決) 。

1) 税理士会は、会社とはその法的性格を異にする法人であり、その目的の範囲についても、これを会社のような広範なものと解するならば、法の要請する公的な目的の達成を阻害して法の趣旨を没却する結果となることが明らかである。

2) 政党に政治資金の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄である。

3) 税理士会は、税務行政や税理士の制度等について権限のある官公署に建議し、またはその諮問に答申することができるが、政治資金規正法上の政治団体への金員の寄付を権限のある官公署に対する建議や答申と同視することはできない。

4) 税理士会が政治資金規正法上の政治団体に対して金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、原則として、税理士会の目的の範囲外の行為であり、無効といわざるを得ない。

5) 税理士会の目的の範囲内の行為として有効と解されるのは、税理士会に許容された活動を推進することを存立目的とする政治団体に対する献金であって、税理士会が多数決原理によって団体の意思として正式に決議した場合に限られる。

■解説

本問は、政治献金のために特別会費を徴収する旨の決議をした税理士会に対し、同会の会員が、政治献金は税理士会の目的の範囲外のものとして争った事案である(南九州税理士会事件)。本件で最高裁は、会員の主張を受け入れ政治献金が税理士会の目的の範囲外であることを認めた。前掲芦部90−91頁、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)154頁以下参照。

1) 妥当である。「会社」と公的法人たる税理士会とでは、法人の目的の範囲が異なるということである(前者のほうが後者より広い)。会社による政治献金は、会社という法人の目的の範囲内だが、公的法人では範囲外となる。つまり税理士会による政治献金を認めない、立場である。

2) 妥当である。政治献金は会員が自主的に決定すべき事柄であり、税理士会が政治献金のための会費を会員に要求するのは間違いだ、ということである。

3) 妥当である。「同視できない」から、税理士会による政治献金は肯定されないのである。

4) 妥当である。本件判決文で述べられている通りである

5) 妥当でない。この選択肢は政治献金を肯定する肢であり、他の選択肢とは明らかに異なる。よってこれが正解である。

なお、八幡製鉄政治献金事件(最大判昭和45年6月24日)と本件の違いに注意しておくこと。

■表現の自由、報道の自由、取材の自由(2004−5)

表現の自由に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例の趣旨に照らして、妥当なものはどれか。

1) 取材の自由は、表現の自由を規定した憲法第21条の保護のもとにある。

2) 報道の自由は、憲法第21条の精神に照らし、十分尊重に値する。

3) 法廷での筆記行為の自由は、憲法第21条の精神に照らして尊重に値し、故なく妨げられてはならない。

4) 取材の自由は取材源の秘匿を前提として成り立つものであるから、医師その他に刑事訴訟法が保障する証言拒絶の権利は、新聞記者に対しても認められる。

5) 取材の自由の重要性に鑑み、報道機関が取材目的で公務員に秘密漏示をそそのかしても違法とはいえず、贈賄等の手段を用いても違法性が阻却される。

■解説

表現の自由に関する基礎的問題である。但し1)と2)については、選択肢中の言葉に惑わされ正誤判断に苦労したという方がいるかもしれない。

1) 妥当ではない。「取材の自由」ではなく「報道の自由」を入れると正しい肢になる。

2) 妥当ではない。「報道の自由」ではなく「取材の自由」を入れると正しい肢になる。1)2)は、博多駅事件である(最大判昭和44年11月26日)。前掲芦部176−177頁、特に2)の意味については前掲佐藤251−252頁注71参照。

3) 妥当である。法廷メモ採取事件(最大判平成1年3月8日)。前掲芦部179頁、佐藤276頁。

4) 妥当でない。石井記者事件(最大判昭和27年8月6日)において最高裁は、新聞記者による取材源の秘匿より証言義務を優先させている。前掲芦部179頁、佐藤278頁。

5) 妥当ではない。最高裁は、「そそのかして」国家秘密を入手しようとする取材行為について、取材の手段方法が法秩序全体の見地から照らして社会通念上是認できるものであれば、取材行為の違法性が阻却されるという立場をとるが、これに照らすと、本肢のように贈賄の手段を用いるということは、社会通念上相当ではなく違法性は阻却されないということになろう。西山記者事件(最決昭和53年5月31日)。前掲芦部178−179頁、佐藤278頁。

■信教の自由、政教分離(2004−6)

次のア)−オ)は、これまで存在した各種の憲法典における条文の例である。これらのうち、日本国憲法第20条から導かれるものと同様の原則を定めていると考えられるものは、いくつあるか。

ア) 連邦議会は、国教の樹立を規定し、もしくは宗教の自由な礼拝を禁止する法律を制定してはならない。

イ) 各宗教団体は、すべての人に適用される法律の制限の範囲内で、独立に、固有の事務を処理し、かつ、行政を執行する。

ウ) フランスは不可分の非宗教的、民主的かつ社会的な共和国である。

エ) 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

オ) ルター派福音主義は、国家の公式の宗教である。

1) 1つ

2) 2つ

3) 3つ

4) 4つ

5) 5つ

■解説

2004年試験憲法の中では難易度が高かった問題である。この問題は捨てても合格には影響しないであろう。

ア) 同様の原則である。日本と同様に国家と宗教を完全に分離することを目指す(完全分離型)アメリカ合衆国憲法修正1条である。高木他『人権宣言集』(岩波文庫、1957年)120−121頁(斉藤真執筆)。

イ) 同様の原則とはいえない。ヴァイマール憲法137条3項である。前掲高木他207−208頁(山田晟執筆)。おそらくイ)の正誤判断に迷ったという方が多いのだと思うが、ヴァイマール憲法は、国教を認めず、宗教団体固有の事務については国から独立した地位などを付与する政教同格型を採用しており、日本国憲法の宗教に対するスタンスと異なっている。

ウ) 同様の原則である。第5共和制憲法(1958年)2条1項である。フランスも宗教については厳格分離型を採用している。

エ) 同様の原則である。これは日本国憲法89条である。政教分離(20条3項)を財政面から担保するのが89条である。

オ) 同様の原則ではない。ノルウェー憲法2条であろう。国教を承認する点で日本国憲法の立場と相容れないのは明白である。

よって3)の3つが正解となろう。この問題については、芦部信喜『憲法学V人権各論(1)』(1998年、有斐閣)142頁以下参照。

■内閣(2004−7)【条文知識問題】

日本国憲法下の内閣に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1) 新しい内閣総理大臣が、まだ国務大臣を1人も任命していないうちは、前の内閣が引き続き職務を遂行する。

2) 内閣を構成する国務大臣の過半数を参議院議員が占めるとしても、それは憲法上許容されている。

3) 内閣の組織については、憲法が定める基本的な枠組に基づいて、国会が法律で定めるところによる。

4) 内閣は、事前ないし事後に国会の承認を得ることを条件として、条約を締結する権能をもっている。

5) 内閣総理大臣は、閣議の決定を経ることなく、任意に国務大臣を罷免することができる。

■解説

【難易度】やや易しい。

1) 誤り。よってこれが正解。内閣総辞職等の場合(69、70条参照)旧内閣は、新内閣総理大臣が任命されるまで、その職務を遂行することになる(71条)。

2) 正しい。内閣の過半数は、国会議員(68条)であればよいからである。

3) 正しい。66条1項参照。

4) 正しい。73条3号。

5) 正しい。68条2項。