■2003年行政書士試験・民法

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■狭義の無権代理、表見代理(2003−27)

Aが以下のような状況で契約した場合、大審院ないし最高裁判所の見解に立つと、本人に契約上の効果が帰属することになるものはどれか。

1) 本人所有の甲不動産を処分するための代理権を与えられているAが、Bに甲不動産を譲渡する際、Bから受け取る代金は専ら自己の借金の返済に使うという意図をもって代理人として契約をしたが、Bは取引上相当な注意をしてもAのそのような意図を知ることができなかった場合。

2) 請負人とAとの間で下請負契約が締結されていたので、Aは工事材料の買い入れにあたって請負人を本人とし、自己がその代理人であるとしてBと契約をした場合。

3) 代理権限の与えられていないAが、本人の代理人である旨を記載した白紙委任状を偽造して提示し、代理人と称したので、Bがそれを信頼して契約をした場合。

4) 本人の実印を預かっていたにすぎないAが、友人がBから借金をするのに、本人の代理人と称し、預かっていた実印を用いてBと保証契約をした場合。

5) 本人から投資の勧誘を行う者として雇われていたにすぎないAが、本人の代理人としてBと投資契約をし投資金を持ち逃げした場合。

■解説

【難易度】やや難。民法改正(2020年4月1日施行)に伴う補筆あり。

1) 帰属する。代理権濫用の事案である。代理権濫用と言えども外見上Aは正当な代理権を行使しているのであり、本人にその代理行為の効果を帰属させるのが原則である。なお判例は、93条但書を類推適用し、BがAの濫用の意図を知り又は知ることができる場合は、本人は責任を負わないとしている(最判昭和42年4月20日)。山田−河内−安永−松久『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)176−177頁。

2) 帰属しない。下請負契約の存在が代理権付与の表示(109条)となるとも言えないし、肢からは請負人たる本人の帰責性も読み取れない以上、本人に効果は帰属しない。

3) 帰属しない。本人が代理人に白紙委任状を交付したところ、それが濫用されたという事案は判例にも見られる。ただこの肢は、代理権のない者が勝手に白紙委任状を偽造したというものであって、白紙委任状の偽造につき本人の帰責性が見られないということを考慮すれば、表見代理は成立しないと考えるのが妥当であろう。

4) 帰属しない。代理人が本人の印鑑を所持している場合、表見代理の成立は認められやすくなる(最判昭和35年10月18日参照)。但しAが本人の家族であるような場合、印鑑の持出しは容易であるから表見代理の成立を認めにくい場合も有り得る。内田貴『民法T』第2版(1999年、東大出版会)181頁。

5) 帰属しない。110条の表見代理が問題となろう。同条の表見代理の成立には「基本代理権の存在」が必要だが、判例は、単なる事実行為の委託(本肢のような投資の勧誘)については基本代理権は存在しない、という立場を取っているので(最判昭和35年2月19日)、本人に責任は及ばない。前掲山田他197−198頁。

■寄託契約、動産物権変動(2003−28)

Aは、BからB所有の絵画を預かっている。最高裁判所の判例によれば、次の記述のうち妥当なものはどれか。

1) Aがこの絵画を自分の物であると偽って善意無過失のCに売却し、以後はCのためにその絵画を預かることを約束した場合には、即時取得によりCはこの絵画の所有権を取得する。

2) Aがこの絵画を自分の物であると偽ってCに売却し、後にBがこの売買契約を追認した場合でも、Cは契約の時に遡ってこの絵画の所有権を取得することはできない。

3) Aがこの絵画を自分の物であると偽ってCに売却した場合、Bにこの絵画を手放す意思がないため、Aがこの絵画の所有権を取得してCに移転させることができないときは、この売買契約は無効である。

4) Bがこの絵画を第三者Dに売却した場合、Dは売買契約のときにこの絵画の所有権を取得し、引渡を受けていなくてもAに絵画の所有権を対抗することができる。

5) Aが代理権もないのにBの代理人だと偽ってこの絵画をCに売却し、その後にAがBを共同相続した場合、Cは、Aの相続分に相当する共有持分については、当然に権利を取得する。

■解説

【難易度】普通。正解の選択肢はやや難しいと思われるが、消去法で正解にたどりつくのは可能であろう。民法改正(2020年4月1日施行)に伴う補筆あり。

1) 誤り。占有改定による即時取得(183、192条)が問題となるが、判例はこれを認めないので(最判昭和32年12月27日)、Cは所有権を取得し得ない。Cが所有権を取得するには、当該絵画を現実の支配におく必要がある。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』 第2版(2001年、有斐閣)93頁以下参照。

2) 誤り。他人物売買の追認について判例は、116条を類推適用する(最判昭和37年8月10日)。この場合、Bの追認があればCは契約時に遡り所有権を取得する。前掲内田272頁。

3) 誤り。他人物売買は有効である。そして他人物の所有権者から買主に所有権移転をできなかった場合、売主(A)はCに対する担保責任を負うことになる(561条)。

4) 正しい。受寄者は178条の「第三者」には該当しないというのが判例(最判昭和29年8月31日)である。よってDはAに対抗しうる。

5) 誤り。頻出の肢である。無権代理人による本人相続の事案であるが、この場合CはAの相続分につき当然に権利を有しない(Aの相続分について無権代理行為が有効になるわけではない)、とするのが判例である(最判平成5年1月21日。信義則説追認不可分説〕)。前掲内田154頁以下参照。

■契約総論(2003−29)

Aは不動産会社Bと、BがC工務店に注文して建築させた建売住宅を購入する契約を締結した。次のア)−オ)とa)−e)の組合せとして妥当なものは、1)から5)のうちどれか。

ア) この建売住宅が売買契約成立後Aへの引渡し前に、Bの責に帰すべからざる事由によって火災で半焼してしまった場合、AはBに対していかなる請求ができるか。

イ) この建売住宅にCの手抜き工事による欠陥があって、漏水のためAの大切にしていた絵画が損害を受けた場合、AはCに対していかなる請求ができるか。

ウ) この建売住宅のために設定されているはずの通行地役権が設定されていなかった場合、AはBに対していかなる請求ができるか。

エ) この建売住宅が売買契約成立後Aへの引渡し前に、Bの従業員の過失によって火災になり半焼してしまった場合、AはBに対していかなる請求ができるか。

オ) この建売住宅にCの手抜き工事による欠陥があって、通行人Dがケガをしてしまった場合、DはCに対していかなる請求ができるか。

a) 瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求
b) 危険負担に基づく代金減額請求
c) 債務不履行に基づく損害賠償請求
d) 危険負担に基づく解除
e) 不法行為に基づく損害賠償請求

1) ア)−c)
2) イ)−e)
3) ウ)−d)
4) エ)−b)
5) オ)−a)

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。Bには帰責事由がないから、債務不履行責任は発生しない。415条。

2) 正しい。A−C間には契約関係がないので、不法行為責任を追及することになる。

3) 誤り。この場合は担保責任に基づく解除が問題となりうる。566条2項。

4) 誤り。Bの従業員に過失があるので、危険負担ではなく債務不履行責任が問題となる。

5) 誤り。DはCと契約関係にたたないので、瑕疵担保責任は問題とならない。

■相続法(2003−30)

Aには、妻Bと子C・D・Eがいる。相続に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) Aが子Cの不行跡を理由にCを廃除していた場合、Cの子FもAの遺産を代襲相続することはできない。

2) Aが相続人の1人である妻Bを受取人とする生命保険契約を締結していた場合、その死亡保険金は相続財産に含まれる。

3) Aが生前友人の息子Gの身元保証人になっていた場合でも、Aの相続人B・C・D・Eは、GがAの生前に使い込みをしたためAがGの使用者に対して負っていた損害賠償債務を相続しない。

4) 遺産分割前に共同相続人の1人Dから相続財産に属する不動産について共有持分を譲り受けた第三者Hは、登記がなくても他の共同相続人B・C・Eに共有持分の取得を対抗することができる。

5) 遺産分割前にEが自己の相続分を第三者Iに譲渡した場合、1か月以内であれば、他の共同相続人は、Iにその相続分の価額および譲受けに要した費用を償還して、その相続分を取り戻すことができる。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。Cが廃除されていたとしても、Cの子の代襲相続は認められる(887条2項)。

2) 誤り。この場合、保険金請求権は妻Bの固有権として発生すると考えられる(保険金請求権を相続により取得したのではない)。佐藤−伊藤−右近『民法X』第2版補訂(2000年、有斐閣)147頁。

3) 誤り。Aの生前に発生していた保証契約に基づく損害賠償義務については、相続の対象となる(大判昭和4年4月13日)。

4) 誤り。共有持分権のみの譲渡は可能なので、これを取得した第三者が持分権について対抗するには登記を要する。前掲佐藤他154頁以下参照。 。

5) 正しい。905条1項。