■2003年行政書士試験・憲法

行政書士合格講座行政書士試験の過去問分析>2003年行政書士試験・憲法

このサイトについて・プライバシーポリシー 憲法学の窓・公務員試験対策室 Site Map

■法律の留保(2003−3)【理論問題】

次の憲法条文の例のうち、権利の保障のあり方について、他とは異なる考え方に基づくものはどれか。

1) 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

2) 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。

3) 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

4) 日本国民は法律の範囲内において居住及び移転の自由を有する。

5) 学問の自由は、これを保障する。

■解説

【難易度】普通。

正解は4)である。4)の人権には、他の条文にはない「法律の留保」が付けられているからである。

法律の留保とは、「法律に基づくかぎり権利・自由の制限・侵害は可能」(芦部信喜〔高橋和之補訂〕『憲法』第5版〔2011年、岩波書店〕19−20頁)という意味で用いられる言葉である。
法律の留保が付いた人権は、憲法上の権利であってもその保障の枠が法律で決められてしまう人権となる(これをそのまま認めると人権保障は立法府により決められるものに過ぎないということになるので、その対抗措置として制度的保障の理論がある、と解されよう)。なおこのこの法律の留保という概念は現行憲法上否定されている。

一方行政法学においても法律の留保という言葉が使われるが、ここでの法律の留保とは「行政作用にはどの程度まで法律の根拠を必要とするか」(石川敏行『はじめて学ぶプロゼミ行政法』改訂版〔2000年、実務教育出版〕30頁以下)という意味合いで用いられる。憲法学における法律の留保とは意味合いが違うので注意が必要である。
例を出すと、昔の行政書士試験で出題された「行政指導には法律の根拠を必要とする」(96年35問参照)という言い回しは、要は「行政指導という活動には法律の留保がいる」と言っているのと同じことである。

■検閲(2003−4)【判例問題】

次の文章は、ある最高裁判決の一部である。そこにいう検閲の定義にあてはまると考えられる事例は、ア)−オ)のうち、いくつあるか。

「憲法21条2項にいう『検閲』とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す」。

ア) 税関で、関税定率法における輸入禁制品の検査の結果、わいせつ表現を含む書物の輸入を禁止すること。

イ) 当事者の申請に基づき審理した上で、裁判所が、名誉毀損表現を含む出版物を、仮処分により事前に差し止めること。

ウ) 高等学校用「政治・経済」の教科書として出版しようとした書物につき、文部科学省で検定し、不合格の処分を行うこと。

エ) メーデー式典に使用する目的で出された、公共の用に供されている広場の利用申請に対して、不許可の処分を行うこと。

オ) 総務省で、出版前に書物を献本することを義務づけ、内閲の結果、風俗を害すべき書物については、発行を禁止すること。

1) 1つ
2) 2つ
3) 3つ
4) 4つ
5) 5つ

■解説

【難易度】普通。本問で引用されている最高裁判決は、税関検査合憲判決(最大判昭和59年12月12日)である。この引用部分は過去何度も本試験で出題されているので問題はないと思う。またア)−エ)までは全て判例があるので正誤の判断が比較的楽だったと思う。

ア) 検閲ではない。前掲最高裁判決の事案である。判例は、税関検査の場合、表現物は外国で「発表済み」であり、また、税関検査は「関税徴収目的」のためになされるのであり思想内容の規制を目的としていない等の理由で、税関検査につき検閲に該当しないとしている。前掲芦部193−194頁。佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)257頁。

イ) 検閲ではない。北方ジャーナル事件(最大判昭和61年6月11日)である。判例は検閲の主体を「行政権」としている以上、裁判所が行う仮処分による事前差止は検閲概念からはもれるとことになる。前掲芦部191−192頁、佐藤257−258頁。

ウ) 検閲ではない。教科書検定第1次訴訟(最判平成5年3月16日)。前掲芦部194頁以下、佐藤259頁中。

エ) 検閲ではない。最大判昭和28年12月23日参照。これは、検閲のような表現の事前規制と異なり、表現の「時、場所、方法」に関する規制なので、検閲には該当しないと解される(そもそもメーデー式典は、表現「物」ではないと言えよ)。前掲佐藤286頁。

オ) 検閲である。これは戦前行われた内務大臣による販売頒布禁止権行使と類似のものであり、検閲に該当する。

よって本問の正解は1) 1つ、となる。本文についての詳細は、芦部信喜『憲法学V人権各論(1)』(有斐閣、1998年)358頁以下、特にオ)については362−363頁を参照。

■刑事手続(2003−5)【条文知識問題】

次の記述のうち、刑事手続に関する日本国憲法の条文の字句に照らして、誤っているものはどれか。

1) 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

2) 何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

3) すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

4) 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。

5) 何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその賠償を求めることができる。

■解説

【難易度】易しい。

1) 正しい。憲法33条。

2) 正しい。34条。

3) 正しい。37条1項。

4) 正しい。38条2項。

5) 誤り。40条は、刑事補償請求権を規定している。補償と賠償は概念が全く異なるので注意しておきたい。

■衆議院の解散(2003−6)【条文知識問題】

衆議院の解散に関する日本国憲法の条文に照らして、次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1) 天皇は、内閣の助言と承認により、国事に関する行為として衆議院を解散する。

2) 内閣総理大臣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、単独で責任を負い辞職しなければならない。

3) 衆議院が解散されたときは、解散の日から40日以内に、衆議院議員の総選挙を行い、その選挙の日から30日以内に、国会を召集しなければならない。

4) 衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。

5) 衆議院の解散後、内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行う。

■解説

【難易度】易しい。

1) 正しい。7条3号、3条。

2) 誤り。よってこれが正解となる。内閣不信任決議が可決(信任決議が否決)され10日以内に衆議院が解散されない場合、「内閣」は「総辞職をしなければならない」(69条)。

3) 正しい。54条1項。

4) 正しい。54条2項本文。

5) 正しい。71条。

■最高裁判所(2003−7)

日本国憲法の条文およびその解釈によって導かれる「最高裁判所の機能」として、誤っているものはどれか。

1) 司法権

2) 規則制定権

3) 法令の憲法適合性の審査権

4) 国会議員の資格争訟の裁判権

5) 下級裁判所裁判官の指名権

■解説

【難易度】易しい。本問も条文知識レヴェルで容易に解けるものなので、必ず正解しておかなければならないであろう。

1) 正しい。76条1項。

2) 正しい。77条1項。なお最高裁規則と国会制定法が抵触した場合の効力関係には注意しておきたい。法律優位説が通説であろうか。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)342−343頁、前掲佐藤612頁。

3) 正しい。81条。

4) 誤り。国会議員の争訟の裁判権は、「議院」の権能である(55条本文)。

5) 正しい。80条1項本文。