■2002年行政書士試験・民法

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■意思表示(2002−27)【理論問題】

意思表示に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 使者が本人の意思を第三者に表示する場合、その意思表示に錯誤があったか否かは、使者を基準に判断する。

2) 詐欺および強迫による意思表示は、心裡留保、虚偽表示およぴ錯誤と同様に、表示に対応する内心的効果意思の欠缺する意思表示である。

3) 動機の錯誤は、表示意思と表示との不一致を表意者が知らない場合である。

4) 本人が強迫を受けて代理権を授与した場合には、代理人が強追を受けていないときでも、本人は代理権授与行為を取り消すことができる。

5) 心裡留保は、表意者が内心的効果意思と表示とが一致しないことを知っている場合であるが、錯誤と虚偽表示はその不一致を知らない場合である。

■解説

【難易度】やや難。意思表示は理解しにくい箇所なので、本試験で解けなかったという人も多いかもしれない。民法改正(2020年4月1日施行)に伴う補筆あり。

1) 誤り。使者は、本人の意思表示を伝達するに過ぎない(効果意思を決定しない点で代理人と異なる)ので、この場合の錯誤の有無判断は本人を基準として決定されると解されている。山田−河内−安永−松久『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)160−161頁参照。

2) 誤り。詐欺及び強迫は、表示と対応する意思の一致はあるが内心を決定する過程に瑕疵がある意思表示である。前掲山田他136頁。

3) 誤り。動機の錯誤は、意思と表示は「一致」しているが意思の前提となる動機が間違っているような場合を言う。前掲山田他131頁以下参照。

4) 正しい。代理権授与行為も法律行為であり、それが強迫を受けなされた以上本人は代理権授与行為を取消すことができると解し得るであろうか。

5) 誤り。虚偽表示は、内心と表示の不一致を知った上でなされる。前掲山田他124頁の表参照。

■占有権(2002−28)【条文知識問題】

占有権に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 士地の所有者が自己所有地を他人に賃貸して土地を引き渡した場合、土地の占有権は賃借人に移転するから、所有者は土地の占有権を失う。

2) 動産の質権者が占有を奪われた場合、占有回収の訴えによって質物を取り戻すことができるほか、質権に基つく物権的講求権によっても賃物を取り戻すことができる。

3) だまされて任意に自己所有の動産を他人に引き渡した者は、占有回収の訴えを提起してその動産を取り戻すことができる。

4) 土地賃借人である被相続人が死亡した場合、その相続人は、賃借地を現実に支配しなくても賃借人の死亡により当然に賃借地の占有権を取得する。

5) Aが横浜のB倉庫に置いてある商品をCに売却し、B倉庫の経営会社に対して以後はCのために商品を保管するように通知した場合、B倉庫会社がこれを承諾したときに占有権はAからCに移転する。

■解説

【難易度】普通。

1) 誤り。占有は、占有代理人に物を所持させることによっても取得できる(代理占有。181条。建物の賃貸の場合、建物を直接所持占有しているのは借家人だが、所有者も借家人の占有を介して当該建物を占有するものと解される。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』第2版(1994年、有斐閣)116頁。

2) 誤り。動産の質権者が占有を奪われた場合、質権者は第三者に対抗できなくなるので(352条)、質権に基づく物権的請求権を行使できない。この場合質権者は、占有回収の訴えにより質物を回復することになる(353条)。前掲淡路他231頁。

3) 誤り。占有回収の訴えは、占有を「奪われた」場合に行使できる(200条1項)。だまされたという詐取により占有を喪失した場合は、奪われていないので占有回収の訴えの要件をみたしていない。

4) 正しい。占有は相続によっても承継されると解されているからである。前掲淡路他123頁。

5) 誤り。指図による占有移転の事案であるが、この場合承諾するのは、「第三者」(184条)たるCである。

■請負(2002−29)【条文知識問題】

民法上の請負契約に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 特約がないかぎり、請負人は自ら仕事を完成する義務を負うから、下請負人に仕事を委託することはできない。

2) 注文者は、仕事完成までの間は、損害賠償をすれば、何らの理由なくして契約を解除することができる。

3) 完成した仕事の目的物である建物に瑕疵があって、契約をした目的が達成できない場合には、注文者は契約を解除することができる。

4) 完成した仕事の目的物である建物に瑕疵があった場合、注文者は修補か、損害賠償のいずれかを選択して請負人に請求することができるが、両方同時に請求することはできない。

5) 最高裁判例によれば、仕事完成までの間に注文者が請負代金の大部分を支払っていた場合でも、請負人が材料全部を供給したときは、完成した仕事の目的物である建物の所有権は請負人に帰属する。

■解説

【難易度】普通。5)以外は条文からの出題であり、正解しておきたい問題といえよう。民法改正(2020年4月1日施行)に伴う補筆あり。

1) 誤り。請負契約において下請負を禁止する条文はない。藤岡−磯村−浦河−松本『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)175頁。

2) 正しい。641条。

3) 誤り。建物、土地上の工作物に対する瑕疵担保責任については、解除は認められていない。635条但書。

4) 誤り。請負人の瑕疵担保責任として、634条2項は「瑕疵の修補に代え又は修補と共に損害賠償」の請求をなし得ることを認めている。

5) 誤り。請負の目的物の所有権の帰属については、請負人帰属説注文者帰属説の対立がある。判例は前説に立ちつつ、次のような判断を示している。

@「注文者」が材料の全部又は主要部分を提供 所有権:注文者(大判昭和5年7月9日)。
A「請負人」が材料の全部又は主要部分を提供 所有権:請負人。引渡により所有権は注文者に移転(大判大正3年12月26日)。
B「請負人」が材料を提供しても特約がある場合 所有権:注文者(大判大正5年12月13日)。
C「注文者」が代金の全部又は大部分を支払っている場合 所有権:注文者(大判昭和18年7月20日)。

要は目的物の主要材料の提供者が誰か、請負代金の支払の有無で目的物の所有権の帰属先が決まるのであるが、本肢はCの場合であり所有権は注文者に帰属する。本肢については、内田貴『民法U』(1997年、東大出版会)259頁以下参照。

■親子関係(2002−30)【判例、条文知識問題】

親子に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1) 夫と他の女性との間に生まれた子を夫婦の嫡出子として出生の届出をした場合、この届出は、嫡出子出生届としては無効であるが、特別養子縁組届としての効力を有する。

2) 夫が子の出生後その嫡出性を承認した場合には、夫は、嫡出否認の訴えを提起することはできなくなる。

3) 妻が婚姻成立の日から200日後に出産した子は嫡出子と推定されるから、たとえ夫による懐胎が不可能な場合であっても、嫡出否認の訴えによらなければ、夫は親了関係を否定することはできない。

4) 未成年者が認知をするには、法定代理人の同意を要する。

5) 非嫡出子が認知請求権を放棄する契約をしたときは、父に対して認知の訴えを提起することはできなくなる。

■解説

【難易度】易しい。

1) 誤り。無効行為の転換に関する事案であるが、判例は養子縁組の要式性を理由として、特別養子縁組届けとしての効力を認めなかった(最判昭和49年12月23日)。前掲山田他148頁。

2) 正しい。776条。

3) 誤り。夫が子の懐胎時に性交不能などの状況がある場合(他の事情としては失踪など)、父性推定(772条1項)は働かないとするのが判例である(最判昭和44年5月29日)。佐藤−伊藤−右近『民法X』第2版補訂(2000年、有斐閣)64頁。

4) 誤り。780条。

5) 誤り。認知請求権は放棄できないとするのが判例である(最判昭和37年4月10日)。前掲佐藤他78頁。