■2002年行政書士試験・憲法

行政書士合格講座行政書士試験の過去問分析>2002年行政書士試験・憲法

このサイトについて・プライバシーポリシー 憲法学の窓・公務員試験対策室 Site Map

■国民代表・代表概念(2002−3)【理論問題】

「国民代表」についての次の記述のうち、他の選択肢とは異なる考え方に基づくものはどれか。

1)参議院については、全国を一選挙区として選挙させ、特別の職能的知識経験を有する者の選出を容易にすることによって、職能代表的に運営すべきである。

2) 衆議院については、都道府県を一選挙区として選挙させ、都道府県住民の意思を集約的に反映させることで、地域代表の色彩を加えるべきである。

3) 代表とは、社会構造の複雑・多様化にともなって社会の中に多元的に存在するさまざまな利害の分布を、そのまま国会に反映することだと解すべきである。

4) 両議院の議員は、自分の応援してくれる特定の階級、党派、地城住民など一部の国民を代表するのではなく、あくまで全国民を代表するものと解すべきである。

5) 特に衆議院の議員定数については、地城振興の観点から過疎地城に多めに定数を配布することによって、社会的弱者の代表を実現すべきである。

■解説

【難易度】やや難。2002年試験において難易度が高かった問題の1つである。本問については、憲法43条の条文を知っていれば正解に達すること自体は可能だが、解けなくとも合否に直接影響しないであろう。

正解は4)である。この立場は、日本国憲法における国民代表概念の通説的理解に合致する。ここでの国民代表概念は、議員は選挙区や特定の選挙母体の代表ではなく、全国民の代表であり、議員は自己の信念により発言、表決し、選挙区や選挙母体などに拘束されない、ということを意味する。

4)以外の代表概念は「全国民」の代表という考えとは異なる。1)は職能代表、2)は地域代表、3)は利害代表、5)は地域代表であり、国民の中の一部のグループの代表ということを主張する点で、あくまで「全」国民代表を主張する4)と主張を異にする。

本問につき、芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)282頁以下、佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)425頁以下参照。

■国会の権能(2002−4)【条文知識問題】

日本国憲法によって認められる「議院の権能」として、誤っているものはどれか。

1) 国政調査権の行使

2) 議院規則の制定

3) 議員に対する懲罰

4) 議員の資格争訟の裁判

5) 弾劾裁判所の設置

■解説

【難易度】易しい。これは本試験では絶対に落としてはいけない問題である。

1)−4)まではすべて「議院」の権能である(62条、58条2項、55条)。5)の弾劾裁判所「設置」権は、議院の権能ではなく「国会」の権能である(64条)。

■最高裁判例(2002−5)【判例知識問題】

次の記述のうち、最高裁判所の判例として誤っているものはどれか。

1) 裁判所が具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるという見解には、憲法上および法令上の根拠がない。

2) 憲法第81条の列挙事項に挙げられていないので、日本の裁判所は、条約を違憲審査の対象とすることはできない。

3) 国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、それが法律上の争訟になり、有効無効の判断が法律上可能であっても、司法審査の対象にならない。

4) 第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防御の機会を与えることなく、その所有権を奪ってはならない。

5) 国会議員の立法行為は、憲法の文言に明白に違反しているにもかかわらず立法を行うというような例外的な場合を除き、国家賠償法上は違法の評価を受けない。

■解説

【難易度】易しい。

1) 正しい。警察予備隊違憲訴訟(最大判昭和27年10月8日)。日本の違憲審査制は、付随的違憲審査制を採用すると解されているからである。前掲芦部369頁以下、佐藤628頁。

2) 誤り。よってこれが正解である。確かに本肢の様な条約優位説(条約は憲法よりも効力の点で優越するので、条約の違憲審査は問題とならないとする説)も存在するが、砂川事件判決(最大判昭和34年12月26日)では、条例の違憲審査の可能性が示されている。前掲芦部373−374頁、佐藤644頁。

3) 正しい。統治行為論である。前記砂川事件、苫米地事件(最大判昭和35年6月8日)参照。前掲芦部332頁以下、佐藤643頁以下。

4) 正しい。第三者没収事件(最大判昭和37年11月28日)である。前掲芦部236頁、佐藤632頁。

5) 正しい。前掲芦部375−376頁以下、佐藤636頁以下。ただ判例のような立場に対しては、事実上立法行為に対する国家賠償請求を閉ざすもの、という批判がある。

■日本国憲法人権規定(2002−7)【条文知識問題】

次の記述のうち、日本国憲法の条文に照らして、正しいものはどれか。

1) 公務員を選定し、およびこれを罷免することは、人類普遍の権利である。

2) すべて公務員には、公益のため、無定量の奉仕が要求される。

3) 公務員の報酬は、在任中これを減額することができない。

4) 選挙における投票の秘密は、公共の福祉に反しない限りで、保障される。

5) 選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問われない。

■解説

【問題点】普通。ちょっとひっかけ的要素を含む問題だが、難しくはない。

1) 妥当でない。「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」(15条1項)。なお公務員の選定罷免権(参政権)は、自然権(natural rights)とは異なるpolitical rightsと考えられている(純粋な人権とは違った側面を有する)点に注意しておきたい。前掲芦部253頁参照。

2) 誤り。「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」(15条2項)。

3) 誤り。「最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない」(79条6項)、「下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない」(80条2項)なら正しいが、本肢のように、公務員一般について在任中報酬を減額できない旨定めた規定は存在しない。

4) 誤り。「すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない」(15条4項前段)。

5) 正しい。15条4項後段。

■事前規制(2002−7)【判例知識問題】

次のア)−オ)の記述のうち、問題となる規制の態様が「事前抑制」に当たり、なおかつ、関連する最高裁判例の趣旨に合致しているものは、いくつあるか。

ア) 外国から輸入しようとした出版物にわいせつな表現が含まれている場合、これを税関が輸入禁制品として没収するのは、違憲である。

イ) 裁判所が、仮処分の形で、名誉殴損的表現を含む書物の出版を前もって差し止めるのは、当事者に充分な意見陳述の機会が与えられていれば、合憲である。

ウ) 新しく小売市場を開設しようとするものに対して、既存の小売市場との距離が接近していることを理由に、県知事がこれを不許可とするのは、違憲である。

エ) 勤務時間外に公務員が支持政党のポスターを公営掲示場に貼りに行った行為を、公務の政治的中立性を理由に処罰するのは、合憲である。

オ) 高校の政治経済の教科書を執筆し、その出版を企てるものに対して、国が予めその内容を審査し、記述の変更を求めるのは、違憲である。

1) 1つ

2) 2つ

3) 3つ

4) 4つ

5) 5つ

■解説

【難易度】普通。問題の処理としては、まずア)−オ)中の「合憲」「違憲」の結論が正しいか否かを検討した上で間違っているものを削除し、結論が正しいものにつき規制態様が事前抑制か否かを判断するのが楽であろう。

ア) 妥当ではない。税関検閲事件(最大判昭和59年12月12日)であるが、最高裁はこれを合憲としている。事案自体は表現の検閲、事前抑制が問題となっている。前掲芦部193頁以下参照、佐藤274−275頁。

イ) 妥当である。北方ジャーナル事件(最大判昭和61年6月11日)である。ただ北方ジャーナル事件で最高裁は、ここにいう「機会」の存在の有無だけで合憲性を判定しているわけではない(表現目的や損害等についての検討が必要である)。肢イ)は記述がアバウトという点で問題ではあるが、もしこの肢を誤りとすると正解がなくなるので、一応正解としておく。事案自体は表現の検閲、事前抑制が問題となっている。前掲芦部191頁以下参照、佐藤257−258頁。

ウ) 妥当ではない。小売市場規制に関して最高裁は違憲判決を出したことはない(最大判昭和47年11月22日)。前掲芦部219頁以下参照、佐藤302頁。この事案では表現の事前抑制ではなく、職業選択の自由が争われたのである。

エ) 妥当ではない。猿払事件判決(最大判昭和49年11月6日)と趣旨は合致しているが、これは表現の事前規制に関する事案ではない。これは公務員の政治活動の自由、表現の時、場所、方法の規制が問題となった事案である。前掲芦部202頁以下、272頁以下参照。

オ) 妥当ではない。最高裁は教科書検定(最判平成5年3月16日)につき、一般的に違憲とまで言ったことはない。事案自体は表現の検閲、事前抑制が問題となっている。前掲芦部194頁以下参照、佐藤258−259頁。

本問は、イ)のみが正しい記述となっており、正解は1)の一つになると思われる。