■2001年行政書士試験・憲法

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■憲法前文(2001−3)【理論問題】

日本国憲法の前文は、「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と述べて、恐怖から免かれる権利、欠乏から免かれる権利、そして、平和のうちに生存する権利の3種類の権利を宣言している。これをうけて、憲法第3章は、国民の権利と義務を具体的に定めているが、次の条項に掲げる憲法上の諸権利の中に、「欠乏から免かれる権利」に対応するものは、いくつあるか。

第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
第22条 何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
第23条 学問の自由は、これを保障する。
第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

■解説

【難易度】易しい。毛色の変わった問題だが難しくはない。

前文の「欠乏からの自由」とは、「社会国家思想に基づく20世紀的な社会権」(芦部信喜『憲法学T』〔1992年、有斐閣〕214頁)を意味する。問題文中には、社会権の規定は25条のみなので、1つが正解となる。

■営業の自由の規制類型(2001−4)【理論問題】

次の記述のうち、営業の自由を制限しているとはいえないものはどれか。

1) 大規模店舗を出店するにあたって、周辺の地域の生活環境に及ぼす悪影響を考慮して行う都道府県の勧告。

2) 建築物の大規模な修繕をするにあたって、その計画が法規に適合するものであるかどうかを点検する、建築主事の確認。

3) 官公署に提出する書類の作成を業として行なおうとする者に対して、行政書士試験等に合格することを求める資格制。

4) 酒類の販売にも業態を拡大しようと企てるコンビニエンス・ストアに、あらかじめ酒類販売業免許の取得を要求する免許制。

5) ジェット・バスを売り物に新規に浴場を開設しようとする者に対して、既存の公衆浴場と隣接していることを理由に開設を許可しないとする距離制限。

■解説

【難易度】普通。これも毛色の変わった問題ではあるが、難問とまでは言えないだろう。

1) 営業の自由に対する規制である。

2) 営業の自由に対する規制でない。これは営業そのものの規制というより、単なる保安上の規制である。

3) 営業の自由に対する規制である。これは規制類型のなかでは資格制に該当する。資格制による規制がある職業としては他に医師、薬剤師、弁護士等があげられる。芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第5版(2011年、岩波書店)217頁。佐藤幸治『日本国憲法論』(成文堂、2011年)305頁。

4) 営業の自由に対する規制である。これは規制類型のなかでは免許制に該当する。尚酒類販売の免許制が争われた「酒類販売免許制事件」(最判平成4年12月15日)参照。最高裁はこの免許制について合憲の判断を出した。前掲芦部221頁参照。

5) 営業の自由に対する規制である。距離制限は各種の営業について課せられている。この点につき小売市場距離制限事件、薬局距離制限事件、公衆浴場距離制限事件(最大判昭和47年11月22日、最大判昭和50年4月30日、最判平成1年1月20日)参照。最高裁は薬局距離制限を除き、合憲判決を出している。前掲芦部219−221頁参照。

■人権判例(2001−5)【判例知識問題】

最高裁判所の判例に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1) 市区町村長が漫然と弁護士会の照会に応じて、前科等を報告することは、それが重罪でない場合には、憲法13条に違反し、違法な公権力の行使にあたる。

2) ある者の前科等を実名つきで公表した著作者は、それを公表する理由よりも公表されない法益の方が勝る場合、その者の精神的苦痛を賠償しなくてはならない。

3) 警察官が正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法13条に違反するが、公共の福祉のために必要な場合には許される場合がある。

4) 自動速度監視装置による運転者の容ぼうの写真撮影は、現に犯罪が行われ、かつ緊急に証拠を保全する必要があり、方法も相当である場合には、許容される。

5) 何人も、憲法13条に基づき、みだりに指紋押捺を強制されない自由を有するが、外国人登録法が定めていた在留外国人についての指紋押捺制度は、許容されうる。

■解説

1) 誤り。前科照会事件(最判昭和56年4月14日)判決は、「前科・犯罪経歴は人の名誉・信用にかかわり、これをみだりに公開されないのは法律上の保護に値する利益である」(前掲芦部121頁)としており、前科が重罪かどうかという点にはふれていない。尚この判決は、「前科をみだりに公開されない自由をプライバシー権の1つとして認める趣旨とも解されるような見解も示している」(前掲芦部同頁)点に注意。なお前掲佐藤183頁も参照。

2) 正しい。ノンフィクション「逆転」訴訟である(最判平成6年2月8日)である。但しこの判決は、違憲判断の基準として肢にあるような比較衡量のみで足りるとしているわけではない。前掲佐藤267頁。

3) 正しい。京都府学連事件(最大判昭和44年12月24日)である。この事件はプライバシーの権利の具体的権利性を認めたリーディング・ケースとして著名である。前掲芦部119頁、佐藤183頁。

4) 正しい。最判昭和61年2月14日の趣旨に合致する。前掲芦部119頁、佐藤186頁注33。

5) 正しい。指紋押捺拒否事件(最判平成7年12月15日)である。前掲芦部97頁、佐藤150頁。尚指紋押捺制度の根拠となっていた外国人登録法は、平成21年に廃止された(本肢の事件は、同法廃止前の指紋押捺制度についての事件である)。

■裁判官の身分保障(2001−6)【条文知識問題】

憲法が定める「身分保障」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1) 最高裁判所裁判官の報酬は、在任中、これを減額することができない。

2) 下級裁判所裁判官の報酬は、在任中、これを減額することができない。

3) 内閣総理大臣の報酬は、在任中、これを減額することができない。

4) 裁判官は、原則として、公の弾劾によらなければ罷免されない。

5) 国会議員は、議院で行った演説、討論、表決につき、院外で責任を問われない。

■解説

【難易度】易しい。

1) 正しい。憲法79条6項。

2) 正しい。80条2項。

3) 誤り。このような条文はない。

4) 正しい。78条。なお1)、2)、4)は、裁判官の独立を支える担保にもなっている点には注意されたい。又裁判官が罷免される場合(公の弾劾〔弾劾裁判〕、分限裁判、最高裁判官国民審査〔79条2項〕)もおさえておきたい。

5) 正しい。51条。国会議員の免責特権である。

■憲法改正(2001−7)【条文知識問題】

日本国憲法が定める憲法改正手続についての次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) 憲法の改正は国会が発議するが、そのためには、各議院の総議員の3分の2以上の賛成が必要とされる。

2) 憲法の改正は国会が発議するが、両議院の意見が一致しない場合には、衆議院の議決が国会の発議となる。

3) 各議院の総議員の3分の2以上の賛成により、特別の憲法制定議会が召集され、そこにおける議決をもって憲法改正草案を策定する。

4) 憲法の改正について国民の承認を得るには、特別の国民投票においてその3分の2以上の賛成を得ることが必要である。

5) 憲法の改正について国民の承認が得られた場合、内閣総理大臣は、直ちにこれを公布しなくてはならない。

■解説

【難易度】易しい。

1) 正しい。96条1項。

2) 誤り。憲法改正については、衆議院の優越は認められていない。公務員試験でたまに見られるひっかけの肢である。

3) 誤り。日本国憲法の改正について、本肢のような特別の憲法制定議会を召集することは必要ではない。

4) 誤り。国民の承認で必要なのは、過半数の賛成である。96条1項。

5) 誤り。公布をするのは内閣総理大臣ではなく、天皇である(96条2項)。