■2000年行政書士試験・民法

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■他人物売買、無権代理(2000−27)【理論問題】

Aは、BにA所有の絵画を預けた。判例によれば、次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) Bが、この絵画を自己のものだと偽ってCに売却した場合、この売買契約は無効である。

2) Bが、この絵画を自己のものだと偽ってCに売却した場合、AがBの行為を追認したときは、絵画の所有権はBからCへ移転する。

3) Bが、この絵画を自己のものだと偽ってCに売却した場合、Bにこの絵画の所有権がないことにつき善意・無過失のCが、占有改定によってBから引渡しを受けたときは、Cは、この絵画の所有権を取得することができる。

4) Bが、何の代理権もないのにAの代理人だと偽ってこの絵画をCに売却した場合、CがBに代理権ありと信じるにつき正当な理由があるときは、表見代理が成立する。  

5) Bが、何の代理権もないのにAの代理人だと偽ってこの絵画をCに売却し、その後にAがBを相続したときは、AはBの行為につき追認を拒絶することができる。

■解説

【難易度】普通。民法改正(2020年4月1日施行)に伴う補筆あり。

1) 誤り。他人物の売買契約も有効である(民法560条)。

2) 誤り。この場合、BからCに所有権が移転するのではなく、追認により「AからCに」所有権が移転する(116条類推適用。最判昭和37年8月10日)。山田−河内−安永−松永『民法T』第3版補訂(2007年、有斐閣)162頁。

3) 誤り。判例は、占有改定(183条)による即時取得の成立を否定している(最判昭和35年2月11日)。淡路−鎌田−原田−生熊『民法U』第2版(1994年、有斐閣)93頁以下。

4) 誤り。無権代理(110条)の事案である。この場合、CがBに代理権があると信じる正当な理由があっても、Aに帰責事由がなければ表見代理は問題にはならない(表見代理制度は権利外観法理を具体化したものであることに注意)。この点に付き前掲山田他191頁参照。

5) 正しい。本人による無権代理人の相続の事案である(最判昭和37年4月20日)。但しAはBを相続した結果、Bが負っていた無権代理人の責任(117条1項)も相続しているので、この責任についてはAが負わなければならない(最判昭和48年7月3日)。前掲山田他188頁。

■物権変動(2000−28)【理論問題】

物権変動に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア) A所有の甲地につきBの取得時効が完成した後に、Aが甲地をCに譲渡した場合、Bは登記なくしてCに対抗できる。

イ) A所有の甲地がBに譲渡され、さらにAB間の譲渡の事実を知っているCに譲渡されてCに所有権移転登記がされた場合、Bは登記なくしてCに対抗することができる。

ウ) A所有の甲地がBに売却され、さらに善意のCに売却された後、AB間の売買契約が詐欺を理由に取り消された場合、Aは登記なくしてCに取消しを対抗することができる。

エ) A所有の甲地がBに譲渡されたが甲地には賃借人Cがいた場谷、Bは登記なくしてCに対抗することができる。

オ) A所有の甲地がBに譲渡されたが甲地には不法占拠者Cがいた場合、Bは登記なくしてCに対抗することができる。

1) 1つ
2) 2つ
3) 3つ
4) 4つ
5) 5つ

■解説

【難易度】やや難。民法改正(2020年4月1日施行)に伴う補筆あり。

ア) 誤り。時効完成「」に法律関係に入ったCに対しBが対抗するには、登記を要する(大連判大正14年7月8日)。この場合、A−BとA−Cという二重譲渡類似の関係が見出されるからである。前掲淡路他63頁。

イ) 誤り。単純な二重譲渡の事例である。CはABの売買に付き単純悪意者にすぎないので、BがCに対抗するには登記を要する(177条)。

ウ) 誤り。Aは詐欺取消を「善意の第三者」に対抗できない(96条3項)。前掲淡路他51頁以下参照。

エ) 誤り。この場合、Cが賃貸借の対抗要件(借地借家法10条1項、31条1項等)を具備していれば、BはCに対抗し得ない。またCが前記対抗要件を具備していない場合であっても、BがCの賃貸借を破り甲地の明渡を請求するには、登記を必要とする(大判昭和6年3月31日)。前掲淡路他68頁。

オ) 正しい。不法占拠者は民法177条にいう「第三者」に該当しない。よってAがCに対抗するのに登記は不要である(最判昭和25年12月19日)。前掲淡路他75頁。

■債権者取消権(2000−29)【理論問題】

債権者取消権(詐害行為取消権)に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア) 債権者は、債務者の財産から満足を得られない場合には、債権取得前に債務者が行った贈与契約を詐害行為として取り消して財産を取り戻すことができる。

イ) 不動産が二重に譲渡されたため、第一の買主が不動産の引渡しを受けることができなくなった場合には、第一の買主は、債務者と第二の買主との間で行われた売買契約を詐害行為として取り消すことができる。

ウ) 債務者の財産状態が離婚に伴う相当な財産分与により悪化し、債権者の満足が得られなくなった場合には、債権者は財産分与を詐害行為として取り消すことができる。

エ) 債務者が第三者に金銭を贈与したことにより、自己の債権の満足が得られなくなっただけではなく、他の債権者の債権も害されるようになった場合には、取消債権者は自己の債権額を超えていても贈与された金銭の全部につき詐害行為として取り消すことができる。

オ) 債権者は自己の債権について、詐害行為として取り消し、受益者から取り戻した財産から他の債権者に優先して弁済を受けることができる。

1) 1つ
2) 2つ
3) 3つ
4) 4つ
5) 5つ

■解説

【難易度】やや難。

ア) 誤り。債権取得以後になされた債務者の法律行為は債権者取消権の対象となるが、取得前に債務者が行った行為は債権者取消権の対象とならない。野村−栗田−池田−永田『民法V』第2版補訂(1999年、有斐閣)106頁。

イ) 誤り。最大判昭和36年7月19日参照。当該判例は、不動産の売主(債務者)が当該不動産を処分することによって無資力になった場合、第一の買主が債務者に有する特定物引渡請求権は究極には損害賠償債権(金銭債権)に変ずるので、第一の買主はこの金銭債権保全のため、債務者と第二の買主との間の契約を取り消すことができるとしている。本肢には無資力要件に関する記述がないので、誤りといえる。内田貴『民法V』初版(1996年、初版)276頁。

ウ) 誤り。離婚に伴う財産分与は、原則として債権者取消権の対象にならない(最判昭和58年12月19日)。前掲野村他104頁。

エ) 誤り。債権者取消権の目的物が金銭のような可分な物であるような場合は、自己の債権額でしか債権者取消権の行使は認められない。前掲野村他112頁以下内田292−293頁。

オ) 誤り。債権者は優先弁済を受ける権利を有していない(425条)。但し事実上の優先弁済が生じる例として、前掲野村他114頁以下参照。

よって正解は5)の5つとなろう。

■委任(2000−30)【条文知識問題】

出張先の大阪で交通事故に遭い負傷したAは、東京在住の友人の弁護士Bに加害者Cと示談契約を締結してくれるよう依頼した。次の記述のうち、正しいものはどれか。

1) AがBに通常の報酬を約束した場合には、Bは、善良なる管理者の注意をもって示談契約交渉にあたる義務を負うが、Bが無報酬または通常より低廉な報酬で仕事を引き受けた場合には、自己の財産におけると同一の注意義務を負うことになる。

2)  AがBに報酬を支払うことを約束した場合には、AB間の委任契約成立後AB間の信頼関係が失われるような事態になったとしても、Bに義務違反がないかぎり、AはBとの委任契約を解除することはできない。

3) Bは、Aの承諾を得なければ、自己の信頼する他の弁護士に自己に代わってCとの示談契約の締結を委任することができない。

4) AB間で報酬を支払う旨の約束があった場合でも、加害者Cが自己の責任を認めず示談交渉が決裂したときは、BはAに報酬を請求することはできない。

5) Bは、Cとの示談契約を成立させるまでは、Cとの示談交渉にのぞむために東京から大阪に出張するための交通費等の諸経費をAに請求することができない。

■解説

【難易度】易しい。民法改正(2020年4月1日施行)に伴う補筆あり。

1) 誤り。無償委任であっても受任者は善管注意義務を負う(644条、同条が有償、無償について何も言っていないことに注意)。

2) 誤り。当事者は委任契約をいつでも解除することができる(651条1項)。

3) 正しい。当事者間の信頼関係を基礎とする委任契約の性質上、受任者は委任事務を自己で処理しなければならない。ただしやむを得ない事由がある場合については、104、105条が類推適用されると解される。藤岡他『民法W』第3版補訂(2009年、有斐閣)185頁。

4) 誤り。この場合は、648条3項により報酬を請求できると考えることになろう。

5) 誤り。委任事務処理の経費前払請求は認められている。649条。